休みの日こそ休めない
「おはようございます」
「やかましい」
朝っぱらから真冬ちゃん登場。
ちなみに現在朝の……5時。おい、早いなんてもんじゃねえぞ。健全な男子高校生なめんなよ。あと3時間は寝たい。
「……おやすみ」
「失礼しまーす」
ゆっくり布団を被ると、真冬ちゃんが布団の中へと入ってきた。
「……って、何してんの!?」
慌てて布団をはねのけると、真冬ちゃんはクスクス笑っていた。
「あらあら、この程度で動揺するなんて。お兄さん、やはり童貞なんですね」
「わかりきった事実を改めて口にすんな!ていうか、よく入ってきたな」
「ちーちゃんに昨晩のうちに連絡しておきましたから」
「せめて俺にも確認して欲しいんだけど……」
「それだとサプライズにならないじゃないですか。お兄さんは相変わらずズレてますね」
朝5時から人ん家に突撃してくる奴にズレてるとか言われたくないんだが……。
とはいえ、そこにケチをつけても話が進まないので、俺は身体を起こし、真冬ちゃんにベッドから下りるよう促した。よく頑張った、俺の理性。今晩しっかり解放してやるからな。
「それで……今日は一体何の用かな?」
「今日は一日、私と過ごしてください!」
「……はあ?」
なんかふわふわした内容だが、果たしてそれが用事なのか?
真冬ちゃんの目をじっと見つめてみたが、特に変化はなかった。
うん。この子、俺よりも遥かにポーカーフェイスが上手そうだ。
じゃあ、俺のやる事は一つ……
「じゃあ、おやすみ」
「ちょっ、な、なんでいきなり寝るんですか!」
「いや、だってまだ早いじゃん?てか、よくこんな時間に出るの許したな」
「いえ、もちろん黙って出てきましたよ。このくらいお手のものです」
「マジか……」
「マジです。じゃあ、お兄さんはもう少し寝てていいですよ。私は端っこで読書してますんで」
「……本当に?寝てる間に変なことしたりしない?」
「それは可愛い女子である私の台詞だと思うのですが……まあ、安心せてください。今日はお邪魔虫もいないので、私はゆっくり自分のターンを満喫します」
お邪魔虫とは夏希さんの事だろうか。まあ、そうなんだろうな。まったく本人がかいたら……いや、この子は本人がいたら直接はっきりと伝えるか。真冬ちゃん……恐ろしい子!
まあ、それはさておき、こう言ってる事だし、今は寝かせてもらおう。
真冬ちゃんの視線を後頭部に感じながら、ひとまず目を閉じると、俺はすぐに眠りについた。
*******
「…………んん?」
目が覚めると、外がうっすらと明るくなっているのがわかった。どうやら2、3時間は寝ていたらしい。
おかげでそこそこいい目覚めだ……だが、違和感がある。そう、とんでもない違和感が。
別に身体の具合が悪いとかではないのだ。
なんかこう……無駄に布団の中が温かいというか、温かい何かがまとわりついているというか……。
「すぅ……すぅ……」
うん。こうなることは薄々感づいてた。
俺の胸元には、真冬ちゃんの頭があり、どうやら抱きついて寝息をたてているようだ。
……うん、こうなることは薄々感づいてた。
でも信じて!別に期待してそうしたわけじゃないの!あの時は眠気が勝っただけなの!
とりあえずこの状況を何とかしないと、こんな場面を誰かに見られたら、ただひたすらやばい!この前も似たようなことあったし!あ、今日は夏希さんいないか!それでも、やっぱりまずい!
「お、お~い、真冬ちゃん?悪ふざけはやめてそろそろ……」
「ん~……悪ふざけなんかじゃありませんよ~」
「起きてんじゃねえか!」
「寝てますよ~」
「嘘が下手すぎる!てか嘘つく気ゼロで最早清々しい!!」
とりあえず真冬ちゃんを起こそうと肩を揺さぶると、彼女は俺の腕を掴み、ぐいっと自分の元へ引いた。
いきなりの出来事に、身体が傾き、彼女の顔に思いきり近づいてしまう。
至近距離に真冬ちゃんの顔が……ぶっちゃけかなり美少女の顔があるという事実に、身体が固まる。お、おい、落ち着け、俺。相手は妹の親友だぞ。
すると、ドアが勢いよく開いた。
「お~い、兄貴~!!ふゆっちからのサプライズは…………おふ」
遠慮なく入ってきた千秋は、ピタリと固まり、変な声を出す。あれ?これ、やばくね?よくわからんけど、やばくね?
ぶわっと汗が吹き出る感覚と共に、自然と言葉が出てきた。
「おい、待て。お前は今とんでもない誤解をしている」
「しっつれいしました~!」
「待てぇい!!!」
どうやら騒がしい休日になりそうだ……って、もうなってるか。




