表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/72

ほっこりのちドタバタ

「ん~、やっぱり夏希が作った料理は美味しいわね♪ね、直登君」

「は、はい、そうですね。美味しいです」

「なんで母ちゃんが隣に……」


 夕食の準備が終わり、俺は夏希さんの作ったコロッケを頬張っているのだが、これがまた美味い。美味いのだが、斜向かいにいる夏希さんは何故かこちらにジトーっとした視線を向けていた。

 いや、理由はなんとなくわかるんだけど、つっこむとさらに場の空気をかき乱してしまいそうな気がして、とても口には出せない。


「あらあら、夏希ったら、もしかしてジェラシー?たまたまこの席の位置になっただけなのに。」

「別に。そんなんじゃねえし」


 まあ、今は食事に集中するか。よし、次はソースをかけてみよう。

 そう考えて、ソースの方に手を伸ばすと、先に手を伸ばしていた夏希さんの手に触れてしまった。


「「っ!」」


 ひんやりして、意外なくらい華奢な指の感触に、ドキリと胸が高鳴る。

 俺は慌てて手を引っ込めた。


「す、すいませんっ」

「……べ、別に謝らなくていいっての。たかがが、手が触りぇただけだろ」

「ふふっ、夏希。顔赤いわよ。あと結構噛んでる」

「母ちゃん!」

「あー、姉ちゃん顔あかーい!」

「あかーい!」

「あかーい」

「お、お前らも!てか、真帆まで……!」

「たまにはこういう流れに便乗しとかないと。ね?」

「今じゃなくてもいいだろうがぁ!」


 ウチとはまた違った賑やかさに、見ているだけで、ついつい頬が緩んでしまう。なんだか幸せをお裾分けしてもらってる気分だった。

 こうして賑やかでほんのり温かい夕食の時間は過ぎていった。


「お前も少しはこっちを加勢しろ!」

「えぇ……そんな理不尽な」


 *******


 夕食を食べ終え、片付けを済ませてから、俺は帰ることにした。

 チビ達に引き留められたり、水瀬家母から「泊まっていってもいいのよ~」とか言われ、つい流されそうになったが、夏希さんの「そんなスペースねえだろ」という現実的な言葉に我に返った。

 そんなわけで、夏希さんがわざわざ見送りに外まで出てきてくれていた。もう外はすっかり真っ暗で、空には星がチカチカと輝いている。優しく頬を撫でる風は、ちょうどいい涼しさで、このまま星を眺めていたい気分にもなった。


「あの、今日はごちそうさまでした。すごく美味しかったです」

「ありがと。まあ、気にすんなよ。たまにはこうして礼をしとかないとな。てか、悪いな。毎度毎度騒がしくて。しかも今日は母ちゃんもいたから、三割増しだったし」

「いえ、楽しいですよ。お母さんもすごくいい人ですし」

「そっか、ならよかった。あ、そういや、前田って奴の事なんだけど……」

「まだ時間かかりそうなんで……もう少し待ってもらえますか?」

「そっか。お前がそう言うなら別にいいけど。それじゃあ、気をつけて帰れよ」

「ええ。それじゃあ」


 そう言って歩き始めると、なんとなくだけど、まだ彼女はこちらを見ている気がした。

 一応振り返ってみると、やはりまだ同じ場所に立っていて、目が合うと、手をひらひら振ってきた。

 それに合わせ、こちらも同じように手を振り返し、また歩き始める。

 少し歩いても、まだ背中に視線を感じる。普段はこんな事ないんだけど、何故か確信があった。

 なので、もう一度振り返ると、彼女は意外だったのか、一回首を傾げてから、さっきより勢いよく手を振っていた。

 俺は、もう一回手を振り返し、今度こそしっかり前を向き、帰路についた。


 *******


 翌朝。

 何やら息苦しさを感じる。

 こう、ひどい重圧が体にかかっているというか……のっかってるというか……もしかして、これが金縛りというやつだろうか。


「おはようございま~す」

「…………」


 何やら声が聞こえた気もするが、今はそれどころではない。くっ、なんで俺が金縛りに……こういうのは普段から騒いでばかりの千秋がかかり、普段の言動を悔い改めるべきだろう。


「おはようございま~す」

「……んん?」


 もう一度声が聞こえてきて、意識が徐々に覚醒していく。……あっ、なんかこの先の展開予想できたわ。


「あっ、多分もうこれ起きてますね。お兄さ~ん、はやく起きてくださ~い」

「…………」


 どうしようか。このままだと重いし息苦しいし、かといって目を開けてもロクな展開にならない気がする。いや、確信している。

 だが、このままというわけにもいかない。

 おそるおそる目を開けると、目の前に真冬ちゃんの顔があった。

 さすがにこれは予想外。


「うおっ!」

「お兄さん、何て声をあげてるんですか。まるで幽霊でも見たかのように」


 ちなみに、予想外だったのは、彼女の顔が近かった事よりも、彼女が横から顔を覗き込んでいたことだ。てっきり、上に乗っかってると思ったんだが……。


「えっ?じゃあ、上に乗っかってるのは……」

「お母さんです」

「えっ?」


 確認してみると、真冬ちゃんのお母さんが、気まずい表情で俺の上に馬乗りになっていた。

 だから何でだよ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ