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彼の好み

「ああ……えらい目にあったな……」


 ようやく解放された安心感から、ベッドの上に乱暴に体を投げ出してしまう。

 あの後、水瀬さんからの追及がすごかった。「お、お前、あ、ああいうのが好みなのか!?」とか「もしかして……いや、今はそんなつもりはねえ!」とか、姉さんが止めなければ今も続いていたかもしれない。

 至近距離で見つめた水瀬さんの顔や、小悪魔めいた真冬ちゃんの顔を思い出すと、自然と溜め息が溢れる。

 あんな綺麗な子、二人に囲まれて、普段なら大喜びするところだが、如何せん変な方向にキャラやら何やらが振りきれている。まあ、どちらも根はいい人なんだけど。

 ぼんやりと見つめた天井は、いつも通りの白さで、不思議と眠気を誘われてしまう。

 そのまま目を閉じ、しばらくすると「お兄さん、また今度」と「じゃあな、直登」という声が、うっすらと耳に入ってきた。


 *******


 姉さんに起こされ、夕食のテーブルに着くと、さっそくあの二人の話題になった。


「はあ、まさかふゆっちがあんなに兄貴を気に入るとはね~。学校では男子から告白されてもオーケーしたことないのに」

「うんうん、直君もいつの間にか罪作りな男の子になっちゃったんだね」

「……いや、罪作りとかそういうんじゃないだろ。たまたまからかわれているというか……」

「あれはからかわれてるとは違うかな」

「兄貴がそういう漫画好きなのは知ってるけど現実見なよー」

「…………」


 やかましいわ!と言いたいところだが、まあ事実なので黙っておく。あれがからかってるのとは違うことくらい自分でもよくわかっている。

 とはいえ、あれを何と言い表せばいいのかわからないのも事実なわけで……。


「お姉ちゃん、そっちの方はどうなの?夏希さん、だっけ?」

「なっちゃんはねえ……ふふっ、こっちはこっちでかなり面白そうだよ。本当にさりげなく直君のこと聞いてくるの。持ってるエッチな本の数とか、次はどんな写真集買おうとしてるのか、とか」

「あははっ、何それ~」


 本当に何だよ、それ。普通は好きな食べ物とか誕生日じゃなかろうか。あの人はその情報から何を導きだそうとしているのか、大した解は出ない事は明らかである。


「それで、直君はどうなの?」

「は?」


 いきなり質問されてポカンとしてしまうが、すぐに何の事だかわかってしまった。

 だが、誤魔化す!


「どうって……まあ元気だし、学校生活は楽しいけど」

「そんなレベルの低い誤魔化し方があるか。どっちが好みかって聞いてんの」


 千秋から容赦なく追い詰められ、「うぐぅ……」と口篭ってしまうが、何とか次の言葉を絞り出した。


「ほら、俺はそういうのあまり興味ないから。学生の本分は勉強にあるのであって……」

「清々しいくらいに思ってもないことを言ってるよね。もしかしたらクラスに好きな人でもいるとか?」

「そういうんじゃないけど……」


 ……ちなみに、あの一件以来、西宮とはあまり話していない。どうやらガチで二股野郎だと思われたみたいだ。最早フラグがたつことはないだろう。

 千秋はそんな事は知らないので、こちらをじっと見てから、一人で頷いて口を開いた。


「う~ん、持ってる写真集的には夏希さんなんだけどな~。案外ふゆっちとは性格が合いそう……いやいや、やっぱどちらももったいない!」

「いや、何だったんだよ……」


 こいつは俺を傷つけるために口を開いたのだろうか。まあ、よくあることだけど……。

 てか、いつまでもこの話をするのはきつい。食事中くらいはリラックスしたい!


「とりあえずこの話はもうやめ!さあ、さっさと食べようぜ!」

「弟君~」

「兄さん~」

「いきなりギャルゲー風の呼び方してもダメ!」


 *******


「ふぅ~ん、これがお兄さんの好みか~。なるほどな~。また一つお兄さんの事がわかったな~」


「私は……将来性に期待かな」


「はぁ、来週の日曜日は何をしようかなぁ~」


 *******


「真帆、どうしたんだ?さっきからこっち見て」

「姉さん、楽しそう」

「そ、そう、かな?え、そう見える?」

「うん。私も嬉しい」

「……お前、可愛いこと言うじゃねえか!ハグしてやる、ハグ!」

「それはいい」

「いいから、いいから!」


 *******


 日曜日。

 朝からスーパーの特売に付き合わされた俺は、水瀬さんの家で荷物を置いて、くつろいでいた。


「お疲れさん。ほらよ、これ」

「ありがとうございます」


 水瀬さんからパスされたオレンジジュースの缶を開けると、景気のいい音が労をねぎらってくれている気がした。

 親しみのある味を楽しんでいると、水瀬さんも隣に腰を下ろしてきた。


「今日はちびっこ達はいないんですか?」

「ああ。今真帆の奴が公園に連れていってる」

「そうですか。ええと、それで……今からどうしましょうか?」

「う~ん、とりあえず……お前の事教えてくれよ。暇だし」


 最後の暇だしはいらない気がするけど……そこで、ふとある事を思いついた。


「じゃあ、お互いに質問しあえばいいんじゃないですか?好きな食べ物とか音楽とか」

「いいな、それ……じゃあ、まずアタシからいいか?」

「どうぞ」


 俺と彼女は頼りない壁によりかかり、思いつくままに質問をぶつけあった。


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