思い出の8mmビデオ
処女短編作なので至らない部分が沢山だと思いますが。
宜しくおねがいします。
僕には、幼馴染が居た。
もちろん言葉が間違ってなんていない、文字通り「居た」のだ。
――彼女は、去年の冬に息を引き取った。
何とも言えない最期だった。
一日前にお見舞いに来た時には、元気に微笑んでくれた君。
励ましに行ったはずが、逆に励まされて帰った僕。
昔から根暗な僕にちょっかいを出しては、笑っていた君が。
友達の居ない僕にずっと付き合ってくれた君が…
次の日の朝。
僕が病室に行くと、ニッコリと微笑みながら。
もう彼女が目を覚ます事はなかった。
検査の結果、僕が病室に着くと同時に亡くなったらしい。
――それから一年の月日が流れた。
僕の心は、少し落ち着きを取り戻しつつある。
しかし、あの日の事を思うと…「後悔」という言葉が脳裏に浮かんでくる。
――僕の時間は、その時から錆びついてしまって動かない。
ふと僕は、彼女と昔二人で誰にも内緒で行った二人だけの秘密の場所の事を思い出す。
あまりにも幼少期の記憶だったので、思い出すのに時間を必要としたが。
実はあの日…彼女が突然タイムカプセルを埋めたいと言い出したのである。
今となっては、あれは突然では無かったのだろうと思う。
僕は、その思い出の地へ足を向けた。
本当の山奥だったので、山が崩されてもおらず。家も建っていない。
昔のままの姿形で残っていた事に嬉しみが込み上げてくる。
そこで僕は、微かな記憶を頼りにカプセルを埋めた場所を探す。
――そして無事にタイムカプセルを発見することが出来た僕は、早速家に持ち帰って開ける。
僕がカプセルに入れたものは、その時流行っていたヒーローの人形と何故か好きだったイチゴ味のガムが一つ入っていた。
彼女が入れたものは知らなかった。なぜなら、入れる時に僕に見てはダメ!!と、強く言われたので彼女が何を入れたのかは…僕が知り得ないことだった。
なので、掘り返してからというもの非常に中身が気になっていたのは事実である。
――彼女の入れたものは、予想の斜め上を行くものだった。
彼女が入れたもの…それは、「8mmのビデオテープ」だった…
驚きを隠せない僕が居た。今きっと、彼女が居たら僕の顔を見て思惑通りと爆笑していただろう。
発売前の新作ゲームの如くワクワクしていた僕は、すかさずビデオデッキに差し込む。
再生すると、そこには大きくなっていた彼女の姿があった。
これは驚いた。
きっと彼女は、最初に入れたモノ?をかなり後になってから一人の時を見計らってすり替えたのだろう。
幼少期にタイムカプセルをやろうと言い出したのは、もしかして未来を見据えたうえでの行動だったのだとしたら、やはり彼女は、頭の切れる魔神である。
テープを再生し続けていると、最初は僕の好きな所。嫌いな所をランキング形式にしたもので、次に自分の好きなこと嫌いなことなどが録画してあった。
その次に将来について語り始めると、徐々に彼女の表情が沈んでいくのが分かる。
――次第に彼女は、泣き出してしまった。
そして僕に、ある事を告げる。
「私には余命があると、それはもって数年なのだと…」
涙を流しながら彼女は、「この映像を観ている君は、きっともう素敵で、私よりも身長が高くて、
カッコいい人になっているんだろうね」と、
「私は、そんな君とデートして、一緒の家に住んで、結婚して…………みたぃ」
彼女はテレながら言う。
思わずドキッとしてしまう。
――ビデオは続く。
「でも、私には出来ない事だと思う。 でも君は、出来るから。 私の代わりにいろんな事を体験してもらいたいな~?って思う」
「どんなことがあっても私は、君の側で見守っているから。 安心して一歩進んでみると良いんだぞ~♪」
なんだよ「だぞ~」って、
思わず微笑んでしまう。
「はい! きっと今ので笑ってくれていると思うから一安心だよ」
見透かされている。本当に見られているのかも知れない。
やはり彼女は魔神だ。
「じゃあね~!」
という言葉を最後にテープが終わった。
ふっ…
またも笑ってしまう。何というか彼女らしいと言うか、なんだかよく分からないが今まで、
クヨクヨしていた自分が彼女のビデオを見ていると馬鹿らしくなってしまった。
でもこれだけはちゃんと伝わった。
これから何があっても君が側で見守っていてくれる。
それが、その言葉がどれほど嬉しくて…暖かい言葉だっただろう。
『ありがとう』
僕はまた一歩、前に踏み出すことにするよ……
最後まで、読んでいただけて光栄です。
ありがとうございました!