エピローグ
その翌日。
クイズ大会の中止が、正式に発表された。
表向きにはジウ王子の急病のため。
本来であれば出場者の一人が欠けても、その程度のことで止められるイベントではない。しかし世界に名だたるクイズ大会の覇者、大陸の智の象徴であるジウ王子が欠けたとなれば中止もやむなし、それは多くの人々が納得しうる理由だった。
もちろん、世間には奇妙な噂が流れることとなる。
まず流布したのは、ジウ王子が妖精の世界に連れ去られたという噂。言うまでもなく、それは現実に起きたことである。
それを直接的に目撃した人間は数千人、どれほどに箝口令を敷いても、あるいは誤情報を流しても、およそ止められるものではないだろう。しかし不可思議なことに、そのような奇っ怪な話こそが噂であり、例えばクイズの実力を妬まれて暗殺された。何か重大な不正が発覚して、グラゾ現王より謹慎を申し渡された。そんな根も葉もない噂のほうが、むしろ真実ではないかと囁かれていた。
しかし、あの異変を目撃した人間がいたことは事実。
それは今後の長きに渡って、人間と妖精との付き合い方に影響を与え、あるいは遠い未来、人間が妖精の支配を拒むことの一因となるやも知れぬ。
しかしそれは、もはや誰にも見通すことのできぬ、未来という深淵の領域での話。
今はただ、祭りの終わりを告げる八日目の曙光。
夜明けの光が、ハイアードキールの街に満ちていく。
道のはしばしでは後片付けを始める人々が忙しく働いている。屋台は解体され、飾り物は取り払われ、二日酔いに苦しむ男が嫁に怒鳴られてしぶしぶ働きだす。遠く外国から来た人々が馬車に揺られて帰ってゆく。
「残念じゃのう、今年こそは我らパルパシアの優勝を見せられたものを」
ここはハイアードキールの料理店。
その内装も、給仕たちの躾も一流の雰囲気を漂わせており、貸し切りになっている店内はやたらにだだっ広く思える。
十人がけの大きなソファー席に座るのは、パルパシアの双王、ラウ=カンの睡蝶、そしてセレノウのユーヤである。
「ユーヤ、やっぱり私と一緒にラウ=カンに帰るネ」
「だから帰らないって言ってるだろ……それよりいいのか、ゼンオウ氏についてなくて」
「そもそも虞人株は見翁様だって勧めてくれてるネ。ラウ=カンに戻ったらいろいろ忙しくなるから、虞人株を探す時間が取れなくなるネ」
「もう無理だぞ、僕はエイルマイルと結婚したんだから」
「私もしてるけど」
「なるほどそれならセーフ……なわけあるか」
「ふむ、そのことも残念じゃのう。素直に受けておれば良いものを、贅沢なやつじゃマッタク」
双王がそのように呟くのを聞いて、ユーヤはくるりと首を巡らす。
「君ら……何かおかしくないか? 面白がるのは分かるけど、なぜ僕が受けないのが残念という発想になる?」
「……」
「……」
二人同時に目をそらす。
すばやく睡蝶を振り返ると、睡蝶も目をそらす、というより完全に後ろを向く。
「……どうも変だな。虞人株とやらについて、全部説明してないんじゃないのか?」
「え、ええと、これは古代のラウ=カンで、虞という女性が提唱した制度ネ。年齢が極端に離れていたり、生殖能力がないと認められた男性の妻が、子孫を残すために別の男性と契約できるという制度で……。そ、そう、離宮にこもって連日交わえるネ、素晴らしいと思わないネ?」
「その後は?」
「えっ」
「その手の話は僕の世界にもあるぞ。配偶者以外の人間と契約して子供を設けた場合、その子の親権や、遺産の扱いなどでトラブルが起きるケースがしばしばある。それに第一に、本来の夫と、契約を結んだ男との間で感情が穏やかになるはずがない。最悪には愛憎のもつれから事件に至ったケースもある。契約に性交渉を含めるならなおさらだ。
ならばどうするか。契約した男、つまり虞人株の男に相応のリスクを与えればいい、つまり……」
「あ、あはは……何の話ネ、わかんないネ」
「物理的に切り離す、とかだな?」
「ち、違うネ、ただちょっと、その、なんと言うか、終わったあとに、男の人が、役に立たなくなるお薬を……」
ごり、
と、背後を向く睡蝶の両コメカミに拳が当てられ。
それを全力でごりごりとえぐりつける。
「いたたたたたたた!!」
「そんな事だろうと思ったわ! というか説明しろそういう事は!!」
「ご、ごめんネ、ごめん、いたいいたい! で、でも待って、よく考えるネ、いたたたたたた」
「何をだ!」
「ほ、ほら私、人妻ネ、男はみんな人妻に目が」
「それがどおおおおおおおおした」
「あいだだだだだだ!!!」
「ユーヤさん、お待たせしました」
言いつつ、現れるのは白装束と木彫りの仮面、ズシオウである。
「朝から騒がしい連中だ、最後ぐらい別れを惜しむ風情が出せぬのか」
横にはコゥナもいる。今日は会食のためか弓はどこかに預けてきたようで、頭を飾る羽飾りなどもだいぶ少な目になっている。
「ふむ、同意だな、シュネスでは食事は静かに摂るものだ」
そう言うのはシュネスのアテム王である。三人の王族はめいめいの位置に着座する。
ユーヤがようやくウメボシを解除して、ふうと一息ついてから尋ねる。横では睡蝶がしくしく泣いていたが、それは全員が無視する。
「ベニクギは呼ばないのか? 彼女にもずいぶん世話になったし、お礼を言いたいんだが」
「ベニクギはガナシア様と一緒に警護の任に就いています。この場は我々だけが宜しかろうと」
「そうか……まあ後で挨拶だけはさせてくれ」
「はい」
「ユーヤよ、今回の働きはフォゾスを代表して感謝するぞ、我々の鏡を無事に……」
「ああ、うん、とりあえずそういうのはまた後日に」
「うむ、いずれ改めて返礼の席を設けよう。それにしてもレストランか、こんな大きな店はフォゾスには数店しかないぞ。まったく何もかもでかい街だ」
妖精王祭儀が終わり、八日目の朝。
すべての王族は帰郷の途につくこととなった。それぞれ国に戻れば政務だの、勉学だのに忙しい身分である。あのパルパシアの双王ですら例外ではない。
祭りは終わり、退屈なれど愛おしい日常に回帰するのだろう。その前に、一度だけ王族のみで集まって食事の席を設けたい、との提案がなされた。
言い出したのは誰であったのか判然としない。しかし誰もが二つ返事で応じ、ハイアードキールの市街地にあるレストランに集まることとなった。
「この店は最近評判になっておるパン料理の専門店なのじゃ。世界中の高級なパンを何でも出すらしいの。聞けばヤオガミの料理にまで通じておるらしいぞ。ユーヤがパンが食べたいと言っておったからのう」
「ああ、ここ数日でいろいろ食べたが、どれも美味だったな」
「どんなの食べたネ?」
と、ようやく立ち直った睡蝶が尋ねる。
「ええと、君の持ってきた饅魚だろ、他にはブッケンファーヴィス、烤香包、ゾルドゥラック、あとパルパシアの夜会で一口だけ食べたオルトシキム」
「なんだ、家庭料理とか駄菓子みたいなのばかりネ」
「……そうなのか?」
くっくっ、となぜか双王が勝ち誇ったような笑いを漏らす。双王はだいたいいつも勝ち誇っているが。
「どうやら本当のパン料理を味わったことがないようじゃのう。これは食べさせ甲斐があると言うものじゃ。蜂蜜も極上のものを味わうがよいぞ」
「いやほんと素直に期待するぞ」
そこで、思い出したようにアテム王が言う。
「そういえばフォゾスの姫よ、マルタート大臣はどうしている。彼とは個人的に親交があるのだ、いくつか交わしておきたい話があったのたが」
「マルタートなら一足先にフォゾスに帰ったぞ。あれでも忙しい身だからな、朝早くから転がって帰っていった」
「なるほど、かなり太鼓腹の御仁だったからな、さぞよく転がっただろう」
「そうでもなかった、歩くより遅かった」
「ふぐっ……」
息の漏れる音がする。
数人の王族がユーヤを見つめ、コゥナがあからさまなジト目になって言う。
「ユーヤよ、こんなので笑うな、森の戦士は簡単に笑うものではないぞ」
「も、森の戦士じゃないけど」
「というか、どーもユーヤの笑いのツボは親父趣味じゃの。実はけっこうトシ行っとるじゃろ、何歳なんじゃ?」
「うるさいな、テレビマンは年を取るのが遅いんだよ。後はまあ、こっちに呼ばれた時にどうも少し若返ってるみたいで……」
「みなさん、もうお揃いですね」
最後に現れるのはエイルマイルである。本日は淡い色のドレスを腰で縛り、裾丈は膝下ぐらい、編み上げのサンダル履きという活動的な姿になっている。
「エイルマイル、お姉さんは」
「はい、先ほど馬車を見送ってきました。私もいくつかの公務を済ませましたら国元に戻ります」
クイズ大会が中止になり、ジウ王子が姿を消しても、すべてが元に戻るわけではない。
特にセレノウ第一王女、アイルフィルは心に傷を負っていた。回復には長い時間が必要だろう。そのためセレノウでは当面の間、エイルマイルが王女としてのすべての政務、および外交を代行することとなった。アイルフィルは足を痛めたという形で療養に入る、それは当初の発表と変わらないため、さしたる混乱はなかった。
では自分はどうなるのだろう、とユーヤはぼんやりと考える。
エイルマイルとともにセレノウに戻り、結婚式を上げたり、政治について学ぶ、その想像は何だかうまく見通せない。そもそもこの世界、この時代での王の権力というものをよく分かっていない。絶対王政なのか、立憲君主制なのかも知らない。いずれにしても安穏と玉座に収まっているだけにはなるまい、という予感はある。
エイルマイルは他の王族の膝の前を通り、パルパシアの王女を押しのけてユーヤの隣に座る。
「クイズ大会は中止となりましたが、問題はまだ多く残されてます、これからが大変ですね」
「そうだな」
そう、まだ何も解決していない。とユーヤは思う。
まず、最も影響が大きいのはハイアードであろう。
ジウ王子は姿を消し、グラゾ現王は一線から遠ざかっている。当面は執政官たちが政治を執り行うらしい。果たしてハイアード王家はどうなるのか。あるいは王室の解体という事態すら起こりうる、というのはまだ一部の噂でしかないが、やがてじわじわと大陸に広がっていくだろう。
アイルフィル第一王女が負った心の傷。海の向こうにあるという妖精のいない大陸。それらにどのように取り組んでいくのかは今後の大いなる課題である。
また、今回の事件で多くの人間が妖精の鏡の存在を知っただろう、それが将来に禍根を残さぬとも限らない。
そして――鏡に吸い込まれたジウ王子はどうなったのか。
あの時にともに消えたと感じた六人の王子、そして過去において鏡に捧げられたという王子たちは、果たしていつか世界に戻ってくるのか。あるいは永遠に消え失せたままなのか。仮に戻ってきたならハイアードは、ユーヤたちはそれにどう向き合えばよいのか、まだとても想像の及ばぬ話である。
そして、この大陸はどうなっていくのか。
ユーヤは薄っすらと感じている。妖精と人間の関わりが、永遠にこのままではないだろう、という事を。
あるいはいつか、この大陸から妖精が去る時が来るとして、その瞬間に立ち会っているのは自分かもしれない。
あるいはユーヤこそが、世界から妖精を排除する人間かも知れない、という予感まである。
ジウ王子とユーヤは光と影であった。どちらが世界にとって敵であり味方であるか、それすらも曖昧であったのだ。あるいは、次に世界の敵となるのは――。
ユーヤがそのような想念に陥りかける時、エイルマイルがついと袖を引く。
「ですが、ユーヤさま、少しだけ時間を頂きたいのです」
「――時間?」
「はい、まずは国元にて、父上に事のすべてを報告せねばなりません。それに加えて結婚のことも。しかし私とユーヤ様が結婚するにあたって、また姉の政務を引き継ぐにあたって、国内に根回しが必要なのです。私どもの国にも派閥というものがありまして、姉上に付き従う人々……もちろんこちらが圧倒的に多数派だったのですが、それはこの事態を簡単には受け入れないでしょう。そして一応ではありますが、私の第二王女派というものも存在したのです。そして姉上が政務に復帰できるかは未知数……この微妙な状態での均衡を保ち、派閥の軋轢を解消するために、様々な有力者と会って話をせねばなりません。そのため一ヶ月ほどお時間を頂きたいのです。ユーヤ様が国に入られるのは、その後が宜しかろうと思います」
「一応言うけど、結婚なんて解消してもいいんだよ、あれはジウ王子と交渉するために書類上だけ……」
「あら、ユーヤ様、私がその程度の覚悟であの作戦を申し出たと思っているのですか? 私はあらゆる点で貴方が国王に、少なくともその候補に相応しいと思ったから結婚したのです。それを一日で反故にするだなんて、悲しくなってしまいます」
と、タキシードの布地越しに二の腕をつねる。
「二、度、と、そんな意地悪なことを言わないでくださいね?」
「わ、わかったよ」
「ふふ、分かっていただければいいのです」
肉がちぎれるかと思った。
ふふと言いつつ目が笑っていない。
「……え、ええと、じゃあ、僕は一ヶ月、あの大使館にいればいいのか」
「ふむ、ではユーヤよ、そなたをシュネスに招こう」
そう切り出すのはアテム王である。
ユーヤが「え?」と意外そうに聞き返す。
「クイズ大会が中止になったからな。大陸の民衆が抱く、もやもやとした不満を解消せねばならぬ。シュネス赤蛇国では過去の偉大なるパズル王、ノイメテス一世を称えるパズルの祭典、枢密王典儀が数年に一度開かれている。クイズ大会が中止になった埋め合わせに、急遽執り行おうと思っているのだ。異世界人であってもパズルならできるだろう、参加してみるがいい」
「……うーん、興味はあるけど、でもセレノウはまだ大変な時期だし、あまり浮ついた行動を取るのは」
「いえ、構いません」
と、エイルマイル。
「ユーヤ様には今後、セレノウの政務に関わって頂かなくてはなりません。今のうちに各国を回り、見識を広めておくのがよろしいでしょう」
「そういう考え方もあるか、じゃあ」
「ちょっと待つのじゃ!」
と、割って入ってくるのはやはりと言うべきか、パルパシアの双王である。
「ならばユーヤはパルパシア双兎国に連れていく! そんなパズル大会など来年で良いじゃろ! おお、そうじゃ、我らの双子都市にてイントロクイズの大会を開くぞ!! 今度こそユーヤを打ち負かしてくれよう!」
「ユーヤよ、お前はイントロクイズのいろいろな形式を知っておるそうじゃな! パルパシアでそれを広めるのじゃ!」
「待てい!」
さらに割って入るのはコゥナである。すでに場の半分ぐらいは腰を浮かせている。
「ユーヤの身柄が空いているならフォゾスに連れていく。森の民はクイズに縁が薄かったが、あの百人クイズというのは実に面白かった。誰でも参加できるというのが良い。ユーヤよ、お前はランジンバフの森に来てあれを族長たちに伝授するのだ」
「待ってください、ならばユーヤさんはぜひヤオガミに」
「ラウ=カンに連れてくネ! 虞人株がダメならもう浮気でいいから!」
「だー! もう! ちょっと待ってくれ!!」
声を高め、バンとテーブルを打ち付けるユーヤ。
ユーヤは焦っていた。
この流れだとパンを食べそびれるのではないか、と。
「……」
高速で思考を巡らせ、そして思いつく。
「よし、勘定クイズだ」
「勘定クイズ?」と数人の王が声を揃える。
「このお店の支配人を呼んでくれ」
それはすぐに来た。太めの腹をウェストコートで押さえつけ、仕立てのいい燕尾服を着た男である。揉み手をしながら顔全体で笑っている。
「えー、このたびは各国の王家の方々にご来店いただき、まことに」
「挨拶はいいから」
ユーヤはひらひらと手を振って、おもむろに問いかける。
「まず料理はすべて一品料理で注文したい。その場合、一人の人間が腹いっぱい食事をしたときはいくらぐらいになる?」
「はい、料理はお安いもので2500、平均で6000から7000、メインディッシュなどは2万というものもございます。コースを一品料理で組み立てますと、平均して3万から4万というところでしょうか」
「メニューに値段は書いてある?」
「はい、書いてありますが、ないものもあります。男女同伴の際など、お値段がわかると無粋ということもありますので」
「では、値段の書いてないメニューを人数分持ってきてくれ。従業員も料理の値段は絶対に言わないように」
「かしこまりました」
支配人が小走りで去っていき、睡蝶が小首をかしげて問いかける。
「ユーヤ、いったいどんなクイズをやる気ネ?」
「ルールは簡単だ。全員でめいめい一品料理を注文し、最後に料金を合計する。合計金額が3万ディスケットに近い一名が勝利、一番遠い者が、全員分の勘定を自腹で払うというゲームだな。僕は優勝した国のところに行く。パルパシアの双王は二人だから、ユギ王女が代表して参加してくれ」
「ほほう」
と、乗ってくるのは双王。
「なかなか面白い。ではエイルマイルどのは除外するとして、我ら各国の王だけで競えというわけじゃな」
「僕も参加する。もし僕が一番差額が小さければ、一ヶ月の間の身の振り方は僕が自由に決める」
「ふむ、よかろう」
と、重々しく宣言するのはアテム王。
「セレノウのユーヤ、お前が各国の王たち、あるいはかの高名なクイズ戦士であるガナシアやベニクギを打ち負かしてきたのは聞いている。このアテムも一度ぜひ戦ってみたいと思っていた。しかし、異世界の人間であるというお前には、この世界の料理の値段など分かるまい。勝負にならぬことは目に見えているのが残念だな」
「そうでもない、このクイズは僕の世界で20年以上続いている。庶民には縁遠い料理が出てくるのはいつものことだ。勝つための戦略も山ほどある、不利なのはそちらだ」
「――ほう、よかろう、そうまで言うならこのアテムの力を見せねばなるまい」
「ふふ、頑張ってくださいね、ユーヤ様」
エイルマイルは何か可愛らしいものについて語るように、ユーヤの肩にそっと体重を預けて言う。
そして王たちは、めいめいに心中で笑う。
(ふふふ、勝ったネ、パン料理の中でも超高級なものはラウ=カンに多くあるネ、その相場は他国の王には分からないはずネ)
と睡蝶が。
(うふふ、実はこのお店、お忍びで何度か来たことがあるんです。いくつかの料理の値段は覚えてます、この勝負、もらいました)
とズシオウが。
(くっくっく、パン料理といえば蜂蜜。世界中の蜂蜜を味わい尽くした我らに負けはない)
と双王が。
(よく分からんからユーヤのマネして注文するか)
とコゥナが。
王たちはそれぞれに策略を巡らせ、それぞれに勝利を確信する。
共通する思惑があるとするなら、一つ。それがユーヤにもはっきりと聞こえる気がする。
――連れて帰ってしまえば、こっちのもの。
ユーヤが場を眺め渡せば、いずれの王たちも目を輝かせ、背中から湯気を上げるほど気合が入っている。
王たちはいつも傲慢で、強欲で、強引である。
それもまた、国を率いていく王の力強さ、民衆を引きつける王の魅力というものだろうか、とユーヤは思う。
「さて、では始めるか」
そして今日も、クイズは続く。
「王の宴を」
(完)
最後までお読みいただきありがとうございました。
オリジナルでこんなに長い話を書いたのは初めてでしたが、なんとか書き終えることが出来ました。これも応援いただいた皆さんのおかげです。
さて次回作はちょっとSFっぽい話を考えてます。おそらく5月上旬にスタートできると思いますので、またお付き合いいただければ幸いです。過去に書いてどこにも発表してない話のサルベージなども行いたいので、そっちが先になるかも。
この話は一旦これで手仕舞いとなりますが、機会があれば外伝や解説などを書くかも知れません。
ではでは、また次の機会をよろしくお願いします。
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