表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界クイズ王 ~妖精世界と七王の宴~  作者: MUMU
第三章  虎闘 一問多答クイズ編
47/82

47 + コラムその6

もう一つの連載の方もよろしくお願いします


スイカの星の進化論

https://ncode.syosetu.com/n7952fr/







睡蝶スイジエですネ、よろしくお願いしますネ」


睡蝶はにこやかに笑う。


「妻……」


ユーヤはぽつりと呟き、しばらく考えたあと。

脇のパルパシアの双王に問いかける。


「妻ってあれだよな、配偶者、婚姻関係にある女性、あるいは長年連れ添って内縁状態にある女性……」

「……別に変な意味ではないと思うぞ」


ユギのほうもひそひそと言葉を投げる。


「というかユーヤよ、見て分からんかったのか。紅柄ファンガンの中でも、あのように深い紅色は王族か、それに準ずる地位の人間が着るもの。あの女が高貴な人間の妻であることは明白じゃ」

「……君ら、そんな女性を誘い込んであのゲームさせたのか?」


双王はふんと鼻を鳴らし、鷹揚な空気を出して言う。


「ゼンオウどの。ご結婚なされていたとは知らなんだのう。水臭いことじゃ。言ってくれれば祝いの品を送ったものを」

「なにぶん日が浅いものでな、クイズ大会の後に正式に発表するつもりであったよ」


この世界の王たちは、なんだか行動が大物芸能人みたいだな、と思わなくもなかったが、そんな事に頓着している場合でもない。ユーヤはとっとと本題に入る。


「その包みが例の問題なのか?」

「相違ない」


ゼンオウが言い、睡蝶がこころもち包みを前に出す。


「8512問、すべて揃っておる。今はこのように列記した状態で紙にまとめてあるが、司会者の使う読み上げ用のカードなどはここから作られる」

「どうやって手に入れたのか聞きたい」


ゼンオウはユーヤの側を見もせず、指輪で飾られた手を卓上で組んでいる。誰かに答えるという雰囲気でもないままに語りだす。


「「塔の百人」において、全ての問題を見る機会があるのはほんの数人。大陸でも有数の実力者のみが幹部を務める。我々はその最高幹部の一人を懐柔することに成功した。その人物はラウ=カンの国民としか言えぬが、そやつに全ての問題を持ち帰らせたのよ。その人物の特定から秘密裏の接触、しかも問題を持ち出しておける時間はわずかだった。その短い時間で全ての問題を書き写せる体制も整えねばならぬ。計画には三年が必要だったのだよ」

「……」

「然して、フォゾスのコゥナどの、約束のものはお持ちか」

「うむ、それについては……」


ごとり、と、鏡が卓上に置かれる。

それは七角形の真珠色の板。差し出すのはセレノウの姫、エイルマイルである。


「その取引はセレノウが引き継ぎます。鏡はセレノウが提供しますので、問題はこちらに頂きたく存じます」

「ほう」


と、声音は変わらぬながらも、驚いているという意思を見せつつゼンオウが言う。


「これはこれは、第二王女のエイルマイル殿か。姉上が足を負傷されて帰郷なされたと聞いたが、どのような風の吹き回しか」

「特段の理由はありません。大陸中の耳目が集まるこの大会で、優勝を望まない国がありましょうか」


そう語るエイルマイルを、ゼンオウの皺の奥にある瞳が見つめる。

その瞳が一瞬、どこか厳しい影を宿すが、それはすぐに人工的な笑みの影に引っ込む。


「ほう、ひそやかな壁の花かと思っていたが、しばらく会わぬうちに見違えたものだ。姉上は大変に凛々しく聡明で、大陸でも最高のクイズ戦士と謳われた方であったが、華やかな物腰の奥には鋼のような強さも持っておった。なるほど、血は争えぬ」


それは本当に感心していたようで、くっくっと体を揺すって笑ってみせる。


「では、セレノウにこの問題を」

「ちょっと待ってくれ」


ユーヤは、この公称年齢104歳の老王にもまったく平易に話しかけるのは、それは異邦人であるユーヤなりの何かの意地か、あるいは己の立ち位置を確保するための策略のようなものであったが、ともかく、つと手を上げて老王の言葉を遮る。


「何かな? セレノウの御仁」

「ハイアードが鏡を集めていることは知っていると思う。だから確約を頂きたい。このセレノウの鏡と引き換えに、ハイアードが優勝した際に、その要求に反対票を投じてほしい」

「ふむ? これは異なことを言う。もともと鏡の一枚と問題は引き換えのはず、そのような要求に、なぜラウ=カンが応じる必要がある?」

「だから上乗せレイズを行う。ユギ、ユゼ」

「うむ」


がらん、と無造作に放られるのは、六角形の鏡。


「なに……」

「ズシオウ」


ユーヤに声を投げられ、ズシオウはうなずく。つと白い手で差し出されるのは、九角形の小さな飾り。


銀散花ぎんちりはな紬紋袖飾つむぎもんそでかざり。ヤオガミに伝わっているものです。おそらく大陸にある妖精の鏡ティターニアガーフと同系統の存在だと思われます」

「……ヤオガミにも存在したというのか」


ゼンオウは、その骸骨のように落ち窪んだ眼窩の奥で、視線を素早く動かす。フォゾスを含め、四カ国が連携を組んでいることも注意すべきだが、この三枚の鏡を差し出してまでラウ=カンと取引をするというのか。


「……。反対票と言われたが、分かっておるのか? 問題はすでに手に入れている。今年度はハイアードの優勝などありえぬ」

「クイズに絶対はない」


ユーヤの答えは断定的であり、何かしら多くのものを見てきた人間だけが持つ重みがあった。


「だいいち時間が足りない。一週間あればすべて暗記してみせるが、クイズ大会まではあと一日だ。ジウ王子の得意とする超難問だけを暗記するとしても、やっと対等になったに過ぎない」

「圧倒的に天秤が傾いたことには変わりなかろう」

「それ以外にも、直前で問題が差し替えられる可能性、そもそも問題が偽物である可能性、そこにある問題が全てではない可能性、懸念は山ほどある」

「だから三枚の鏡を差し出してまで反対票を買うというのか? いくら何でも割に合わぬ、他のお歴々は、なぜこのような真似に協力を」

「違う」


ユーヤは指先でテーブルを叩き、きっぱりと言う。


「この三枚の鏡はどこにも帰属させず、海に捨てようと思っている」

「なんだと……?」

「つまりは」




こちらの持つ・・・・・・全ての鏡を・・・・・海に捨てる・・・・・ことと引き換えに・・・・・・・・問題と反対票を・・・・・・・受け取って・・・・・やってもいい・・・・・・、と言っているんだ」


――


ふいに、沈黙が降りる。

ラウ=カンの老王、ゼンオウは微動だにしない。

ユーヤの突飛な提案に、一切の感情を表に出さぬままに思考するかに見える。

ごく短い時間ではあるが、考えぬ訳にはいかない。

しかし、そうして何かを考え、即答できぬということ自体が、この場においては何らかの回答になりうる、そういう頭脳戦の場であると認識する。


この張り詰めた沈黙の中で、剣呑を封じ込めた八角形の卵の中で、何かしら目に見えぬ怪物が息づくかに思えた。クイズにまつわる魔物が、殻を破って生まれようとする気配が――。








コラムその7 金融・物価について



パルパシア第一王女、ユギのコメント

「我々の大陸でおもに流通しておる通貨はディスケットじゃ。ここではこの時代での金融体制、様々な物品の相場などについて解説しようぞ」


パルパシア第二王女、ユゼのコメント

「まあ我らは金など持ち歩かぬがな、そのへんの側仕えに命令すれば大抵のものは手に入るのじゃ」



ユギ「買えぬのは人の心ぐらいよ」


ユゼ「なんで急にそんなこと言った?」




・最初に


ユギ「まずディスケットとは金を基準とする金本位制の通貨であり、大陸六カ国は王家の管轄下にある王立銀行が通貨の発行権を握っておる。かつては地金の大きさや形状を取り決めて扱う秤量貨幣が用いられ、またフォゾスでは土地や樹木単位で所有権を表すセル財標という紐貨幣、ラウ=カンでは路子ロツと呼ばれる土地と道の占有権に対して政府から交付される紙幣などが存在したが、現在ではハイアードを基準とする通貨体制に移行しつつある。各国の通貨発行量は銀行間会議によって厳しく制限されており、前年の3%を超えて増加してはならぬこと、二カ国以上による金準備量の査察を毎年受けることなど様々な取り決めがある。また四元基準法と言って工業生産、農業生産、狩猟生産、工芸品生産の四点を指標化して各国同士で数値化することで通貨発行量をコントロールし、これにより大陸は単一通貨の流通を可能に」


ユゼ「ユギ、ちょっと待つのじゃ」


ユギ「どうした?」


ユゼ「皆が死人のような顔をしておる」


ユギ「……仕方ないのう、では興味を引きそうな話からしようぞ」




・通貨について


ユギ「大陸でおもに流通しておる通貨はディスケット、これ以外に国によってはマイナーな通貨もあるが、銀行で両替が可能じゃ」


ユゼ「紙幣のデザインや額面の種類は国によって違うが、ハイアードでは5000、2000、1000、500の四種類じゃな。硬貨は銀、真鍮、青銅などで作られ、これも地域や時代によってデザインや額面が違う、またシュネスでのみ全ての通貨は貨幣で流通しておる」


ユギ「金貨だけは王立銀行の管轄下によって発行され、おもに貴族や王族が使う。金貨は紙幣に比べて圧倒的に信頼性があるのじゃ。これは大乱期の名残らしいの」


ユゼ「巷の若い娘では「500まみれの男」などという表現がある。財布に500ディスケット札が何枚も入ってるような男じゃ、ロクでもない男の形容らしいの、我も同感じゃ」


ユギ「ユゼよ、いま財布に小銭が山盛りの男たちを敵に回したぞ」


ユゼ「全然怖くない」





・交通料について


ユギ「ハイアードキールではよく馬車を見かける、この時代、馬車は都市に住む庶民にとって最速の乗り物じゃ。馬車は通行できる道が道幅により決められており、幅5.3メーキより狭い道には入ってはならぬという決まりがある。市民が使う辻馬車はおおよその場合、特定の大通りだけを走行し、家の前まで、など細かな指定はできぬ」


ユゼ「料金はハイアードキール内であれば、距離にかかわらず1500から2000ディスケットが相場じゃ。また都市間を行き交う乗合馬車はおおよそ4000ディスケット、国家間をまたぐとなれば数日の旅程で、街道筋の宿泊料込みで十万ディスケットを超えるものもある。祭りの時期には宿場町がパンパンになるらしいの」


ユギ「船舶で言うと。パルパシアの港からハイアードキールまでを結ぶ定期船、これは特等船室で15万ディスケットほど、一等船室で6万ディスケットほどじゃ。船旅は贅沢な旅行じゃからな。ちなみに4等船室だと800ディスケットらしい」


ユゼ「そんだけ安いと逆に興味あるのう」




・宝飾品について


ユギ「ハイアードは造船の国であり、鉱山の国でもある、なのでハイアードでは比較的宝石の物価が安い。宝石は希少な妖精を呼び出すのに必要なため、砂粒のように小さな宝石もきちんと一つづつ鑑定して取引される。目安として、銀写精シルベジアを呼び出すのに必要な銀塊は5万ディスケット、石霊精アスガリアを呼び出すための黒一色のブラックオニキスは200万ディスケットほどじゃ」


ユゼ「宝石により呼び出される妖精は、その大きさや透明度、純度などに強く影響を受ける。あまり宝石の質が悪いと呼び出せないこともあるのじゃ。例として、気象を操る灰気精アッシズメテオはアクアマリンと蜂蜜で呼び出すが、軟玉のような透明度のない石ではなく、透き通った宝石としてのアクアマリンが求められる。値段は200万から500万ディスケットほどじゃ」


ユギ「ちなみにラジオの元である七彩謡精プリズミティアを呼び出すための「籠いっぱいの宝石」は50億ディスケットは下らぬそうじゃ」


ユゼ「でもラジオ局を持てるんじゃろ?」


ユギ「タダみたいに安いのう」




・その他いろいろ


ユギ「地域や季節によっても違うが、その他の物価としては下のようなものじゃ」


標準的なワインひと瓶

3000~20000ディスケット


書籍

800~2500ディスケット


タバコ(紙巻き、12本入り)

1200ディスケット


女性用の服ひと揃い

20000~150000ディスケット


長屋の家賃

25000~40000ディスケット


ハイアード市内の庭付き一戸建て

1500万~5000万ディスケット


100人規模でのクイズイベントの優勝賞金

50000~200000ディスケット




・最後に


ユギ「近年になって、ハイアードを中心として銀行の重要性が増しておる、資金調達や信用取引、通貨流通量のコントロールなどもそうじゃが、庶民までが口座を持ち、小切手で報酬を支払ったり買い物をする時代になっておる」


ユゼ「株式会社も増えておるし、先物取引も盛んになってきておるな、一部の豪商は数百億の資産を保有し、貴族との養子縁組を「買う」者まで存在するそうじゃ」


ユギ「各国王家はこれらの動きを注視しておるが、今後、大陸がどのように変化していくかは目を離せぬところじゃな」





ユゼ「言うほど我らは興味ないんじゃが」


ユギ「さっきからカンペ丸読みじゃからな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ