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異世界剣士の流浪譚  作者: 邪悪丸卑劣之介
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異世界・草原の一団・草色のマント


 コーンと鳴いた二匹の鳥は降り立つと、車隊の内の一台に停まった。瞬間、前田は理解した。あの鳥は前田の位置を知らせていたのだ。

 車は牛にも馬にも似た珍妙な生き物が牽いている。その車は幌を張っており、前田が驚いている間に素早く輪状に取り囲んだ。そして全ての幌の隙間からは銃が一様に前田を狙い定めている。

 とにかく抵抗をしてはならない、それだけは分かった。


 一団はジッと前田を睨み付け、動きはない。

 前田はできるだけ視線を動かさずに一団の観察を始めた。銃を構えた者たちは、幌の中に完全に身を潜めて姿が見えないが、御者や数人の者が半身を見せているが、誰も体の傾きからして武器を構えているらしかった。

 四方を飛び道具で囲まれている中で前田は攻撃に移ることはできない。前田は逃げることを考えてみた。

 その時に前田は、車が輪状に取り囲んでいる理由が、簡易的な防衛柵として利用しているらしいと分かった。

 そうした構えを十全に取りながら、彼らは攻撃してこない。

 これは前田にとって好機と踏んだ。


 前田は手にしていた得物を放り、一団に問うた。

「私の名は前田寛正、女神マルキア殿の助力によりこちらの世界に転生した者である! 貴君らに問いたい! 悪魔イミリスという者を知っているか!」

 前田の声はよく通った。

 威圧をしないように心掛けた積りだった。しかし一団は一層警戒を厳にしたように見えた。

 幾十もの視線が注がれる中、先ほどの鳥が停まった馬車から一人の男が降り立った。

 壮年とでもいうべき年頃のその男は、腰に剣を佩いている。歩きながらも体の芯が全く揺らがない男の所作から、前田はこの男が長だと思った。それと同時に前田は角を放ってしまったことを後悔した。この男と死合うとしたら、手元に得物がないことは致命的だと悟ってのことである。

 男は前田の十数歩前で止まると、大猪を指差し、口を開いた。

「―-----------------!」

 しかし男の言葉は前田には理解できなかった。

「―---------―------!」

 男は再び同じ言葉を放ったが、それでも分からない。前田の知らない言葉のようであった。

 しかしそれは威嚇の言葉ではないらしかった。男は前田と向き合ったまま沈黙し、少しすると一団に手で合図した。

 ほんの一瞬、明らかな隙ができていたが、前田は別にどうもしなかった。


 だが互いに言葉が通じないことは変わらない。

 これではにっちもさっちもいかないと思っていると、一団から一人の若者が飛び出てきた。

 若者は草色の布きれを手に、頭に巻いた布の下からのぞく金色の細い髪をそよがせながら、前田に近付いてきた。

 壮年はなにがしか若者に低く告げたらしいが、若者は構わず近づいてきた。

 近付くほどに、この若者の顔の奇妙さに気がついた。

 髪、眉毛、睫毛に至るまでことごとく金色だった。対してその肌は浅黒く、それが体毛の鮮やかさを際立たせていた。

 若者は前田の目の前に立つと、手にした布きれを差し出した。

「---------」

 若者の声は美しく、女であったことに驚きながら、前田は差し出されたものが贈り物だと判断し、受け取った。

 広げてみるとマントである。恐らくは全裸の前田を気遣ってのことであろうと、前田はにっこりと微笑んで礼を言い、有り難く羽織った。

 その意味が伝わったかは相手の表情を見れば瞭然だった。

 本当のことをいうと、一団を目にした時から、前田は羞ずかしさが込み上げていた。

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