花の景色
「あの花赤いね」と言ったら
Aさんは「本当に綺麗だね」と答えた。
同じ場所で
「あの花赤いね」と言ったら
Bさんは「血の色だね」と答えた。
同じ場所で「あの花赤いね」と言ったら
Cさんは「そうだね」と答えた。
Dさんは「お昼何食べる?」と答えた。
Eさんは何も言わず
隣の人に「あの花赤いね」と、繰り返した。
隣に白い花が咲いていた。
誰にも何も言わず
その花を見ていた。
同じようにその花を見つめる人がいた。
不意に目が合って、微笑んだ。
何となく温かい気持ちになった。
何も言わない方が良い気がして
温かい気持ちだけ抱えて、その場所を去った。
「人は皆違う」
でも理解しあうことは出来る。
でもそれは
お互いにその気持ちがないと難しい。
どこかでまた出会うことがあれば、白い花の人に話しかけてみようかと、思いながら。