シルウフ編~序章~
遅くなってほんとにすいません!
出来れば二日に一回くらい投稿したいです。
「はぁっ?原因がわからないから今皆で探ってんだろうがっ!」
「だから何度も言っているだろう、あのアンデッドは何者かに殺された者たちの怨念が詰まってできた存在だと」
「あの疫病を誰かが持ってきたっていうのかよ。んなわけねぇだろうがっ」
「だが、それ以外に原因などないぞ」
「だからそれを今皆で探ってんだろって」
ただいまマジックホルダー会議は紛糾していた。
その原因はサイティアに次ぐ実力者のランドと、サイティアの不仲だ。
まぁ実際はこの二人は実力には大きな差があるので、それを快く思っていないランドがサイティアに突っかかっているだけなのだが。
サイティアもサイティアで、いちいち突っかかってくるランド相手に本気で反論し、口論に発展するのだ。
ほかの三人は何をしているのかというと、二人の圧力に負けて固まってしまっている。
公国の宰相が口を挟もうものなら、
「この落ちぶれ公爵家が!
俺に指図するんじゃねえ」
と言われる始末である。
しかも、いくら説明をしても堂々巡りで話が前に進まない。
まだもう少し、この会議の混乱は続きそうである。
*****
そのころ、シルベアたち一行はというと、いまだに街をぶらぶらしていた。
この街に来た理由が、この町の住民が本当に善良かどうか確かめるためなのでぶらぶらしていても問題無いのだが、何よりも久しぶりに黒い事をせずにゆっくりできるという事実が二人の心を楽にしていた。
二人は何をしようともまだ十代の半ば。少しくらいゆっくりするのも許されるであろう。
と、シルベアはこんな風に街に入った後の事を考えていたが、実はまだ二人は城門の前の列に埋もれていた。
「今日はお祭りでもあるんっすかねぇ?」
あまりの待ち時間の長さに嫌気がさしたのか、周りの人の気持ちを無差別に読みながらアルが呟く。
アルはそのまま情報収集を続けていたのか、今日が「生育祭」と呼ばれる、子どもの健康を願う祭りの前日であることを突き止める。
よく見れば、門番の兵士さん達も忙しそうである。普段来る人数の軽く3,4倍は来ているのだから当たり前だろうが。
シルベアも、主にアンデッドについて考え事をしながら順番を待っていると、後ろから、
「あ、あなた達も、せ、世界を、い、いや、人類を滅ぼすためにた、旅をしてるの?」
と声を掛けられた。
急な質問の意図が分からず後ろを振り返ると、そこにいたのは頬をかすかに上気させ、うるんだ目でこちらを見つめる小柄な少女だった。
そして、その後ろにある先ほどまで生きていたはずの人間たちの死体も目に映る。
シルベアが疑問に思う間もなく少女は
「あ、あなた達も、わ、私と目的は同じみたいね・・・そ、それじゃあさよなら」
そういってポンッとその場から消える。
シルベアは何も言えず先ほどまで考えていたアンデッドのことなど頭から抜け落ちていた。
「あれシルベアさんって、どうしたんすか、これ?私が見てない間にやっちゃったっすか?」
「さすがにそんなことしないわよ、あなたじゃないんだから」
「辛辣!!で、それならこれどうしたっすか?」
「私もわからないわよ」
そういいながらさっきの少女のことをアルに説明する。
「へー、そうだったんっすか。
それともうじき門番が気付くっすね」
「まぁ、やってないんだし疑われないでしょ」
シルベアはそう言っていたが、そのあと二人は普通に門番に事情聴取されて、
こんな小娘が大量殺人なんて犯せない、と力説し、やっと解放してもらえた頃にはもう夕暮れ時なのであった。
*****
「もう、何なのよあの騎士。
よっぽどぶっ殺してやろうかと思ったわ」
「私も同じっすけどほんとに殺しちゃダメっすよ」
「わかってるわよ」
やっととれた宿屋で、二人は今日の不幸を共有する。
開放してもらった後二人は冤罪で騎士に宿屋をとってもらおうと思ったのだが、特に必要のない金貨を一枚もらってすぐに追い出されてしまったのだ。
世の中不条理なことだらけである・・・
そうやって話し合っている二人に思わぬ訪問者が訪れる。
それはシルベアが昼間出会い、こんなことになった原因の少女であった。
「こ、こんばんわ。あ、あなたに、た、頼みたいことがあってきたんです」
「何なの急に。単刀直入すぎるわよ。意味が分からないわ。」
自分もそうなのだが、というアルの気持ちを知ってか知らずかシルベアは少女に詰問する。
しかし少女は無視して
「ひ、昼間はすみませんでした。あ、ああするしか、しゅ、手段がなくて」
とつっかえつっかえ言う。
確かに多大な迷惑を被ったので、お詫びは受け取るが、頼み事とは何であろうか?
アルが疑問に思っていると、
「そ、それで、た、頼み事というのは、あ、あるものを、は、運んでほしいのです。
そ、それが、こ、こちらです」
そんな風に返答してくれた。
渡されたものは紙包みで、この小動物然とした少女が持っていそうなものだった。
正直こんな仕事、とてつもなく嫌なのだが・・・
「やってもいいけど条件があるわ」
案の定シルベアが動いた。
「じょ、条件とは?」
「なに、簡単な事よ。
ただ私たちの目的を外部に言わない事。それだけ。
簡単でしょ?」
「そ、それでは・・・」
「えぇ、その頼み事引き受けたわ」
そう言えばなぜかこの少女はシルベアたちが世界を滅ぼそうとしていることを知っているのだった。
そのことに気が付いたシルベアは、そこぐらいは褒められてもいいのかもしれない。
いや、よく見ると頬が緩んでいる。
心が読めるアルから見れば好奇心が旺盛ですね。
としか言いようがない。最悪である・・・
そんなわけで、明日から二人は怪しげな事をさせられそうである・・・・