マジックホルダー同盟
一日開けてすいません。
それと、結構胸糞悪い展開が出てくるかと・・・
苦手な方はお気をつけて・・・
「もういいっすか?」
感情を押し殺した声でシルベアが言う。
だが、目の前の五人何が起こっているのかよく分かっていないようで、「へ?」
などと言っている。
先に仕掛けたのは一人の男だった。
「あっ,ちょっと!」
という、女性の声も聴かず、恐怖に目を濁らせアルに向かって短刀で切りかかってきた。
だが、アルも何もしないわけではない。
「ほぉら、これだから人間は。
呼び出すだけ呼び出して、自分の身に危険がせまったら攻撃っすか。
まったく、呆れちゃうっすね。」
そう言いながらも、男の手を捻り上げて短刀を落とした後、頭を持って地面に投げ
「ほら、ほら、自分たちで蒔いた種だ!
まだ死なないでっすよ!何してるんすか?立たなきゃダメでしょっす!
はは、ははははは、あはははははははっ」
そう言って笑いながら頭を踏みつけている。
ぐちょっ、ぐちょっ。
いつの間にか、頭を踏みつけられていた男からは脳漿が飛び出て、見るも無残な姿になっていた。
「あーあ、もう死んじゃったっすか。
もうちょっと楽しみたかったんすけどねぇ。」
さらにアルはシルベアに人間を回復させる魔法があるかまで聞いてくる。
シルベアが首を横に振ると残念そうな顔をして、脳漿をまた踏みつけ始めた。
それを見ていた女性は
「く、狂ってる・・・
な、なにをしているのですかっ。
我々はディセイム王家の者よ!
私たちに手を出せば、あなた達は一生世界に追われながら暮らすことになるのよ!
あははっ、今更謝っても遅いわよ。
なんたって兄さまを足蹴にしたんですからね。
あははっ」
気でも狂ったのか、笑いながらシルベアを見下してくる。
だが、シルベアは何も言わず、いや、一切動くことなく女性(姫様)を見返していた。
先に動きがあったのは女性だった。
「何黙ってん―――がはぁっ―――ぶふぅ――な、なにを――ぶふぅっ
や、やめなさいっ」
「はぁ、あんた話長すぎ。さすがに飽きてきたから『アストラル』使ったけどいいわよね?
だって長話するあんたが悪いんだから」
シルベアが使ったアストラルとは幻を見せるだけの魔法だ。
だが、いま女性が見ているような、自分が足蹴にされながらじわじわといたぶられるものから、大金が目の前に落ちてるように見せかけるだけのものなど、広範囲にわたって使うことができる万能魔法だ。
結構難しい魔法なので使える人は限られるだろうが・・・。
しかし、シルベアはこの魔法を極めていた。
女性が見ているものは想像を絶するほど辛い物だろう。自業自得だが・・・
―――三分後―――
ディセイム王家の方々は狂っていた。
姫は笑い続け、第一王子はもう動かず、第二、第三、第四、第五王子は恐怖のあまり糞尿を垂れ流しながら許して、とごめんなさいを繰り返していた。
「何こいつら、人の事呼ぶだけ呼んどいてこの体たらくとか。
ディセイムも先が知れてるわね」
思えばこんなことになった原因は、この六人が混乱を避けようと、部屋の外に兵士も置かず、部外秘で事を進めたことであろう。
その為、異変が起こっても察知できず、シルベアたちの転移も見逃すことになったのだった。
*****
ディセイムにテクリプスを流し、国を出てから五分後、シルベアたちはようやくシルウフに到着した。
因みにディセイムはテクリプスでもれなく混乱中である。
しかも、そんなときにもかかわらず、王族が国王以外出てこない為、ディセイムも崩壊するまでの秒読みスタートだ。
モゴールドの対テクリプス特効薬は各国に馬車で届けているため、届くまで後数日はかかるであろう。
だが、もうほぼすべての国に対テクリプス特効薬は届いているため、勇者召喚の儀を数日後にすればディセイムも助かっていただろう。まぁ、あの時ああすれば良かったなどと言うのは馬鹿がすることなのだが・・
シルウフに着いた二人は、まずギルドに行くことにした。
ギルドは町の中央通りに面しており、新規の人から常連さんまで誰でも入れるようなアットホームまギルドだ。
もともと、ここシルウフは地区の住民の警邏以外にも、ちゃんとした統治機構があるので、治安がとても良く、ギルドや酒場にも荒くれ者はいない。
時々、外部から治安を乱す輩もやってくるが(というか正にシルベアたちがそれなのだが)すぐに警邏中の住民か、それでだめな時は統治機構が出張ってくる。
そんな街なため住民は善良なものが多く、残るであろう千人に選ばれる確率が最も高い。
シルベアたちがこの町に来たのも、残すに値するか下見に来たためである。
ギルドについた二人はまず話を聞くことにした。
さすがに何も知らずに各国を飛び回ることはできない。
ということでやってきました、受付のおじさん。
ギルドの受け付けは地理に詳しいため、世界情勢にも詳しいのだ。
そこで分かったことは三つ。
まず一つ目は、テクリプスという疫病の特効薬を、モゴールドが開発したこと。
次に二つ目は、テクリプスでほろんだ国や町でアンデッドと呼ばれる、魔法を使う不死者が出現しているということ。
最後に三つ目、クラウン公国が各国と同盟を組んで、そのアンデッド集団を倒そうとしていること。
以上三つだ。
どれもシルベアたちに関係していたが、一つ目以外は知ったこっちゃない。
テクリプスが使えなくなるのは痛いが、それだって今まで通りに戻るだけだ。
二人は特に痛痒を感じていなかった。
しかし、アンデッドは正直気になる。
「 ねえ、そのアンデッドって具体的にどこから出たかとかわかるかしら?」
「どこってそりゃあテクリプスでほろんだ街だから、ジョネル王国にザイフの町、それに小さな村なんかでも出てるみたいだな。
魔法使いの不死者の集団なんて、人間からすれば最悪以外の何物でもないな。」
やはりおじさんはいろいろ知っていた。
しかもさっきの話からシルベアはある仮説を組み立ててしまった。
それは、アンデッド発生には深い憎しみや怨念がかかわっているのではないかということだ。
なぜなら、さっき言ったジョセフ王国もザイフの町も二人が滅ぼしているし、おそらくだが小さな村というのも、行きがけの駄賃で滅ぼしてきた村々だろう。
だけど私たちがやったなんて誰も知らないはずだけど・・・
この仮説の一番の課題がこれだ。
滅ぼしてきた人間はシルベアたちがやったということを知らず、ただ、疫病が町を蝕んだということしかわからないはずである。怨念などが出る幕もない。
うーん、これは何か裏がありそうね・・・
まぁでも、放っておいたら勝手に人間を駆除してくれるんだしいっか。
なんかいろいろと納得したようである。
*****
そのころ、各国に同盟を呼びかけていたクラウン公国の城には五人の客が来ていた。
もちろんどこかの国の代表などではない。
どこの国もアンデッドより落ちぶれ公爵家に巻き込まれて自分まで転落するのが嫌なのだろう。
ここにいるのは一国より価値は低いが一国ぐらいなら滅ぼせてしまう集団だ。
簡単に言うとマジックホルダー五人。
この五人は人間寄りで人間にちやほやされていた過去がある。
反対にここにきていないシルベアを除いた五人は、昔人間に化け物と呼ばれ迫害された悲しい経歴がある。
後者の五人は今のところは中立だが、人間が不利と見ればすぐに復讐を始めるだろう。
ここにいる、人間寄りの五人は人間を助けたい一心でここに来たが、一人を除きシルベア一人にでも瞬殺されるだろう。
結局のところはマジックホルダーでも才なのだ。
その点、桁違いに強い残りの一人、サイティアはずば抜けていた。
おそらくだが肉弾戦も入れたシルベアとも互角の戦いをするのではなかろうか。
まぁ、ほんとに信託で決められるため、シルベアというマジックホルダーの存在も知らないのだが。
「さて、それでは今から人間の前に突如として立ちふさがった不死者の怪物、アンデッドの処遇について決めようか」
部屋に入ってきた宰相っぽい人が開口一番そう言う。
よほど切羽詰まっているのだろう。
早口にまくしたてるとマジックホルダー五人に会議を丸投げして座ってしまった。
しかもその足は小刻みに揺れている。
どれだけ切羽詰まっているというのか・・・
そんなこんなで、サイティアを筆頭とした、神に選ばれた五人(自称)によるアンデッド対策会議が始まったのであった。
明日もできたら投稿したいです・・・