各国の思惑
遅くなって申し訳ありません。
これからまた、出来るだけ毎日投稿していきたいです。
「なんだと。
ジョセフ王国で死した者たちが蘇った?
誰が流した流言だ。死した者を冒涜するなど」
「い、いえ。
それが、本当のことらしいのです、閣下。
それも、情報源が我が国の暗部ですので流言ではないかと・・・」
「なんと・・・
本当のことなのか・・・
だが、蘇生魔法など歴代のマジックホルダ―の誰一人として使えはせんかったぞ」
「そうなのですが・・・そ奴らは全員が魔法を使っていたとの情報も入ってきております」
ここは少し暗い広間のような場所だ。
よく見ると天井には、一面に意向を凝らした絵が描いてあり、ここが普通の場所ではないのが分かる。
話している二人は、椅子に座っているしわくちゃの好々爺がこの国『ぺルモスト』の王、ジルドであり
報告している方が宰相のジールだ。
今二人は、突如としてジョセフ王国に発生したアンデッドの軍勢について話し合っているらしい。
「向かっているのはどこだ?」
ジルドが、宰相であるジークに問う。
だがジークは落ち着き払った様子で
「ペール連合王国です」
と答える。
ベルモストは、山の幸が豊富であり、いつも山で狩りをしている筋骨隆々な男たちは神獣ですら倒すと言われている。
だが、そんな国の王でさえ魔法を使うアンデッドの襲来には歯が立たないらしい。
前方の暗がりを見ながら、うーんとうなっている。
「ではこの機に乗じてペールとことを構える!」
「よろしいのですか?
下手すれば死した者たちがこちらに向かってくる可能性もありますが?」
「うーむ、やはりそこか」
この世界、モンスターなどがいない為に人間同士の戦争がよく勃発するのである。
だが、この国のように、どの国も自分たちの所にアンデッドの軍勢を呼びたくはないのだろう。
アンデッドが発生した経緯なども分からない為、各国は誰からともなく一時休戦になっていたのであった。
*****
「今日はこれからどこ行くの?」
所変わって今度はシルベア一行である。
二人はザイフの町の宿に泊まり一泊した後、どこに行くか悩んでいた。
これで昨日は町を出よう、などと言っていたのだからあきれるを通り越して心配されるレベルだ。
「うーん、こっから一番近い町だとシルウフっすかね~」
「じゃあそこに向かいましょ」
軽い調子でシルベアが答える。
なんという見切り発車。
まぁこの二人ならどこに行っても安全なのだが。
それにしたって即答っしたね~。まぁ、それだけ信頼してくれるっていうのはうれしいっすけどね~。
アルはそんなことを考え、次の町に向かうのを楽しみにしている自分に気付く。
昔は人間を殺すことだけに執着してたっていうのに、変わるもんっすね~。
感慨深げにうなずいているアルを見てシルベアはちょっと引いているが・・・
という事で二人はシルウフに向かうことにした。
勿論町を出る前に疫病を流すのも忘れない。
ザイフの町も、もうしばらくすれば阿鼻叫喚の地獄絵図となるだろう。
今度は転移での出発だ。
「さぁ、行くっすよ~」
二人はシルウフでとある大騒動に巻き込まれることになるのだが、それはもうちょっと先のお話・・・
*****
「なんと、ザイフの町が疫病でほろんだ!?
なぜじゃ!!」
「報告によりますと、ザイフの町でも死した者の復活があったようです」
「なんと!どうにかならんのか!」
「わが国だけではどうも・・・」
さらにところ変わり、ここはペール共和国の隣国、『モゴールド』だ
大国に挟まれた小国ながらも、名前の通り良くとれるゴールドを使い生き残ってきた国だ。
だが、この国は今、ジョセフ王国のアンデッドとペールのアンデッドという、ゴールドが役に立たない相手に挟まれている。
国王などは禿げかけてきているほどだ。
しかし、この国にはゴールド以外にももう一つの武器があった。
知恵である。
この国の頭の良さは大陸随一であり、金と知恵の国モゴールドと言われている。
この国の貴族で金が元になって身を崩した貴族がいないことや、この国に世界最高峰の学園があることからもそれはうかがえる。
そのモゴールドは、ジョセフ王国が疫病でほろんだという知らせを受けた頃から「テクリプス」の特効薬を開発し始めており、つい最近できたところにアンデッドが出たという。
はげるのも無理のない話だ。
だが、現実逃避していても始まらない。
過去の実体験からそれを把握している国王はまず、全世界にテクリプスの特効薬を配布することにした。
*****
さらにさらにところ変わってジョセフ王国の隣国であり、モゴールドの反対の国、クラウン公国。
ここでもテクリプスとアンデッド対策に追われていた。
クラウン公国は昔の公爵家が建国した国で、昔はこの大陸の盟主的存在の国であった。
しかし、現在では侯爵家も腐敗し十年前にジョセフ王国に侵攻され小国になっている。
そこには十年前の威光はなく、過去の栄光にしがみついている侯爵家しかいない。
しかし、そんな国でも一応は昔の大陸盟主。
クラウン公国の侯爵はすぐに各国に同盟を呼びかけることにした。
まぁ、すたれた侯爵家と繋がろうなどと言う物好きな国があるかは不明だが・・・。
*****
一方シルベアたちは困ったことになっていた。
「ちょ、ちょっと、これどういう事っすか?」
「知らないわよ。っていうか、あんたの転移最強じゃなかったの?」
「そ、そんなこと誰も言ってないっすよ!!」
何故か二人は幾何学模様をした絵の上にいた。
目の前にはひざまずき、涙を流している五人の男性と一人の女性がいる。
何事かと二人が見ていても何も言わないので、さっきの話しをしていたのである。
すると、目の前の女性が急接近して早口にまくしたてる。
「さすが勇者様です!この世界に来たばかりだというのに、こちらの言語を使えるなんて!
しかし、勇者が女とは聞いていなかったですが・・・。
ま、そんなことはどうでもいいのです!!
今この国は大変な苦境にあります!
そう、隣国のモゴールドに攻められそうになっているのです!
モゴールドは近隣の領地に侵略しては、領地を奪い、自国のものにするという最低の国なのです。
そんな国に狙われたわが国は、自国だけでは兵が足りず、防衛もできそうにないのです。
そこで、昔の文献に載っていた勇者召喚の儀をしたところ、あなた方が現れたのです!
あぁ、勇者様、どうかこの国をお救い下さい!」
一気にいろいろ言われ、シルベアはちょっとフリーズしてしまっている。
アルはというと、目の前の女性の心を読み、モゴールドのゴールドが欲しいがために、勇者などを召喚して攻め込ませようとしたことが分かっているため、今にもとびかかりそうだ。
しかし、間一髪でフリーズから復帰したシルベアのおかげで、なんとか踏みとどまっているが・・・
「ねぇ、あなたはさっきから何を言っているの?
私たちはこの世界の住人よ?
モゴールドが悪?
あの賢王の所が?
ばかばかしい。有り得ないわね。
嘘をつくんならもうちょっとましな嘘を吐きなさい。」
フリーズしているように見えて、実はちゃんと考えていたらしい。
因みにアンデッドのことはまだ知らせが届いていないので知ってはいない。
と言うよりも、知っていたらこんな風に攻めようなどと思わないだろう。
だが、女性が口を開くよりも早くシルベアが言いたいことだけ言って行動を起こした。
アルを離したのだ・・・