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お風呂

間空けてすいません

 「で?あなたを倒したら入れるのよね?」


 ギルド長の部屋に入ったシルベアが言う。

 それに対し、ギルド長は


「うん、そうだよ。

 でもまぁ、今はギルドも活気づいてるからね~。

 早く終わらせようか」


 余裕綽々である。

 これはもう、アルが心を読まなくても分かる。

 案の上と言うかなんというか、シルベアは


「ふふふっ、死にたいようね?」


 こちらも振り切れちゃってるようだ。

 アルは


「シルベアさ~ん、殺さない程度にですよ~」


 などと言っており、受付のお姉さんは二人が戦うと聞いて急にオロオロし始めた。

 ここにカオスの完成である!

 そして二人は外に出て構える。


「いい?死んでも知らないわよ。」


 最後にあるが忠告し魔法を唱えようとする。

 そこからのギルド長の反応は迅速だった。


「ちょっ待ったっ!こんなところでなんて魔法唱えようとしてんだか。

 ていうかマジックホルダ―なら最初に言ってくれると助かったねー」


「だって私最上位級の魔法しか使えないし、話聞かなかったのはそっちでしょ」


「まあまあ。

 ちょっと君、お風呂まで案内したげて」


 一瞬で二人の和平交渉は結ばれたらしい。

 受付のお姉さんは、なぜこんな小娘が王族用のお風呂に入れるか解せないようだ。

 が、ギルド長の命令は無視できないようで連れて行ってくれるようだ。

 隣でシルベアがふふん、とどや顔をして受付のお姉さんに睨まれているが、ろくなことにならないので放っておこう。


 着いたお風呂は、これまで見たどんなお風呂よりも意向が張り巡らされており、王の浴室と言われても納得できるものであった。


「ふぃいいいい」


 シルベアは女の子らしからぬ声を上げてくつろいでいるが、私も同じなので何も言わないでおこう。

 自分だって、この幸せを享受したい。


 二人がふやけて、のぼせ上がるまでお風呂にいたのは言うまでもないだろう。


 二人はくらくらしながらもお風呂を出て、この町を出ることにした。

 ここを消し去るのはもう少し後・・・少なくとも他の町を滅ぼし、お風呂を堪能した後であろう。


 お風呂に入ったからか、二人の体は絶好調である。

 転移を使わずに走り去る二人を見た行商人は、新手の霊獣と勘違いし、冒険者ギルドに報告したほどである。


 余談だが、この世界で言う霊獣とは、地球の麒麟などの伝説をもとに作られた想像上の生き物などではなく、実際に人が見て、現存するどんな動物とも違う、ただ一匹しか存在しない動物のことである。

 さらに余談で、ファンタジー世界に良くいるモンスターなどは存在しない。

 その為、行商人などは動物に気を付ければ安全に旅ができるのだ。


 そんな二人が向かった先は、先ほどまでいたペール連合国家の王都から南に五十キロほど行ったところにある、ザイフだ。

 ザイフはペール連合国家成立以前は、ペールの次に大きかった国なのだが、逆にその過去の栄光と言うやつに囚われ、頭でっかちが詰まった暴発寸前の国だ。

 ペールの王もこれを押さえるのに苦労しているという。

 だが、シルベアはお風呂の恩返しにこの町を消そうと思っているのではない。

 人間の悪い部分が、いくつかこの町から出ているので消そうと思っただけだ。

 これだけを聞くと、シルベアは町ごと人を殺しまわる狂気の殺人者に聞こえるが、これは夢が夢なので仕方がない。

 人類を千人にまで減らすのであって、いい人全員を救うわけでわないのだから致し方ないことであろう。



 *****


 その頃、崩壊した国、ジョネル王国では、ある異変が起きようとしていた。


 一番最初に気付いたのは、元ジョネル王国、王都跡地を根城にしていた盗賊たちだった。

 この盗賊団はそこそこ名も売れており、大所帯だった為、疫病がうつると言われ、誰もいなかった王都跡地をこれ幸いと根城にしたのだった。


 初めのうちはうつるんじゃないか、とびくびくしていた盗賊たちも、日が経つにつれて安心したらしく、その日も戦利品で宴を開いていたところだった。

 そんなめでたい日(被害者にとっては最悪の日)に斥候になった運のない下っ端二人組は、


「はぁああ、最悪だな~。よりによって、今日斥候とか」


「まったくだ。あぁ~、のみてぇええ」


 愚痴を言い合っていた。

 だが、そんな運のない二人は油断していたのだろう。

 現れたのは、ぼろい外套に身を包み、生気が抜け落ちた顔をしているアンデッド(死んだ者が蘇った不死者)だ。

 地球のゲームや物語では、比較的メジャーなモンスターだが、モンスターがいない世界では馴染みないのも仕方なかろう。

 二人は、新手の霊獣か?などと話している。

 しかし、その間にもアンデッドは準備を整えていく。

 先に準備ができたのはアンデッドだったようだ。

 アンデッドの定番、火球を投げる。

 初めて見る魔法に呆けていた二人は回避もできず、灰になるまで燃やされ続けた。



 だが、運が悪かったのは二人だけではない。

 酒盛り中の盗賊団にも等しく、アンデッドは襲い掛かった。

 ・・・それも百匹ほどで。

 いくら名のある盗賊団とは言っても、しょせん人間。

 圧倒的高火力の火に燃やされ、斥候二人と同じ末路をたどった。


 ここにジョネル王国の怨念の塊ともいえるアンデッド軍団が誕生した。

 本能に従ってか、アンデッドたちは目につく人間を文字どうり蹂躙しながら一路シルベアたちを目指すのだった。


 そんな中ただ一人、アンデッドに襲われながらも、全て撃退し、生き残った人物がいた。

 そいつは、アンデッドの軍勢を追い、暗がりへと姿を消すのだった。



 *****


 シルベア一行は現在、ザイフの町でショッピングをしていた。


「いや~、興味本位で入ってみたっすけど結構面白いっすね~、ザイフも。」


 武具を見ながらアルが言う。

 アルの武器もそろそろ買い替えねば、血油で切れ味が悪くなってきたのである。

 もちろん研いでもらう、という選択肢もあったが、こんな血だらけの武器を見せたら、モンスターもいない世界では胡乱な目で見られるのだ。

 アルが新しく買った武器は短刀。

 シルベアが強すぎるため、遠くから当てるだけで、十分な援護になるのだからいいであろう。


「終わった?」


 シルベアが聞く。


「うーん、もうちょっと待ってくれないっすか?」


「まだなの?もう暇~」


「そこらの武具見とけばいいじゃないっすか」


「私はどれでも手に馴染むからいいのよ」


 これだから天才は・・・

 しかも本心から言ってるのだから手に負えない。


「終わったすよー」


「あぁ、そう。なら早く行きましょ」


「せっかちっすね~」


 ザイフの町の用事も終わり、入って一時間ほどで街を出ることにした。

 のだが、


「このままだと野宿ね。

 今日はこの町に泊まりましょ」


 というシルベアの提案により一日この町で泊まることになった一行であった。

 死の軍勢が近づいてきているとも知らずに・・・

まだ不定期続きそうです

いやっ、今週の土曜からは戻るんで

見捨てるのだけはっ

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