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ギブミーカフェイン!  作者: バケツロリータ
2箱目 目覚めよ、クソ兄貴。
18/18

10本目 向きと不向き

「あちゃー。またド派手に…。」


 小柄な狐面が喋ると同時に、覆面パトカー“だった”運転席側のドアが、狐面の子供の前に落ちてきた。


 アイツら、何をした?

 目の前で気味悪く再生して、化け物みたいな男の猛烈な一撃を受け止めて?

 更には片手でアイツを打ち上げて、「借りるよ〜」と覆面パトカーのカローラを片手で持ち上げて、「ここらへんだな!」とパトカーをスローイングして、桃○白みたいにパトカーに飛び乗って、大男を空中で撃墜した!?


「意味が…、分からない…。」


 率直な意見を述べてしまった。出血が止まらない故に幻でも見たのだろうか。

 それよりも何だか、眠たい。警察署の仮眠室の煎餅布団ではなくて、ましてや自宅の埃まみれの布団ではなくて、五ツ星ホテルの様なフカフカなベッドで寝たい。ついでにタバコも吸いたいが、身体がとてつもなく重く感じる。

 藻掻くように満身創痍の身体を捩らせ、近くの建物の壁に身体を預ける。懐にあるタバコの箱を取り出そうとしたところで、右腕を大男に折られていた事を再認識した。思い出したかのように、意識が飛ぶ程の痛みが走る右腕を見て、私は思わず呆れて笑ってしまった。

 そもそも、どうしてこれ程までに“ろくでもない”事で瀕死になっているのだろう。余計な事に首を突っ込まなければ、夜明けの陽に染まる東の空を、一服しながら眺めていられただろうに。


 思えば私の人生も、ろくでもなかった。小学生の頃に両親は離婚して、ホストと不倫していた母親は蒸発。私に暴力を振るう父親は、安酒を買いに行った矢先に飲酒運転の車に撥ねられて亡くなった。

 その後は、叔父の家に預けられ大切に育てられてもらえたが、中学時代に同級生にいじめられた。最初は些細な意見の違いだったが、最終的には熱湯を掛けられ、左頬から尻の辺りまで現在でも火傷痕が残る程の重症を負い、加害者が逮捕されて“暴力問題”は幕を閉じた。

 今でも、風呂に入ったり酒を飲んだりすると古傷が赤くなるし、更衣室で着替える時には周囲の目が今でも少し気になる。

 警察に入って地域安全課から、組織犯罪対策部に配属されてからは、不幸が続いて怪我が多かった。

 逆上した構成員に刺されるわ、駆けつけた身内のパトカーに轢かれるわ、巻き込まれて撃たれるわ殴られるわの騒ぎで、体中の古傷と共に合コン話のネタに事欠かなくなった。機動捜査隊に移ってからは平凡だったが、最近は些細な対応に追われて疲弊してたな。

 そういえば今日も全然仮眠が取れなかった。おかげで、この醜態か。

 本当に、ろくでもねえ人生だな。

 でも、こんな人生も楽しかった気もする。色々とエキサイティングな出来事ばかりだった。まともな恋愛こそ出来なかったが。でも穂刈からのアプローチは嬉しかったな。返事は返せなさそうだが。あーあ、これで私も終わりかな。


 それと穂刈。お前も元気でやれよ。お前なら、私と正反対の人生を送れるだろうし、私なんかよりも素晴らしい女性との出会いもあるだろうさ。


 そう願った私の意識は、深い暗闇へと沈んでいった。


「はぅぁあ!?」


 落ちていく感覚に驚き、私は思わず飛び起きた。

 視界には真っ白な天井が広がり、どことなく薬品の香りがしている。どうやら病院のようだ。「寝ている場合か」と潜在意識から来る強迫概念に駆られて上体を起こすが、折れた肋骨と首から吊られた右腕の鋭い痛みに襲われ、思わず寝床の上で悶える。


「…っしゃ先輩に勝った…んぁ。あっ!起きた!」


 痛みに悶絶していると、右側から聞き覚えのある声が聞こえてきた。私よりも先に一撃で動かなくなった、頼りない上司であり後輩の穂刈だ。


「なんで居るんだよおめェー。」

「付き添いッスよ!先輩が一人じゃ寂しいと思って!」

「ありがとね穂刈くぅ〜ん!じゃあまたな!お出口はアチラでーす!」

「えー。せっかくプリン買ってきたのに…。ほらっ、先輩が大好きなデカいヤツですよ〜!先輩の為に奮発したんスよ?」


 私のイジりに臆することなく、プリンを両手で見せびらかしながら、穂刈が満面の笑みで笑った。昔から、優しい気遣いが出来るやつではある。この前は職質した酔っぱらいを介抱していたっけ。どちらかと言うと警察官よりも介護職の方が向いているのではなかろうか。


「おいっ、ビールは?ビールねえのかよ?」

「そんなモノ無いですよ。あとしばらく飲んじゃだめですよ。飲んだら絶対に死にますから!本当に冗談抜きで死にますよ!そもそも、応急処置されてなきゃ先輩死んでたんですからね!」


 応急処置という言葉に引っかかりを覚えた私は、穂刈を少し問い詰めた。


「はぁっ?応急処置?お前がやったのか?」

「えーと、僕じゃなくて、狐面の子供らしいですよ。後から救急隊員に聞いたので詳しくは分かりませんが…。でも現場の周りはズタボロだし、乗ってきたパトカーは隣町の駅前に落ちてたって言うし、何が起きたのかさっぱりですよ。」


 狐面、あの子か。変な格闘術を使ってた。

 そもそも、あの化け物じみた犯人や現れたカカシも何者なんだ。化物同士の闘いだった。以前から、カラスというイカれ野郎がいるのは知っていた。公務執行妨害、強盗傷害に器物損壊と器物破損、更に恐喝罪にわいせつ罪と裁判がややこしくなりそうな罪状の数々。


「そんな事より、2日もスヤスヤ寝てたらお腹すいたでしょう。もうすぐ昼食ですよ。」

「え、2日も気を失ってたの?」

「うーん厳密に言うと、手術して麻酔が切れてから一度は目を開けましたよ。そっからまた寝てましたけど。覚えてないんですか?僕の手ギュッと握って、『ありがとう♡』って!」

「はぁぁぁ!?気持ち悪っ!」

「本当ですって!嬉しかったなぁ〜。先輩が僕の事を認めてくれるなんて夢にも思わなかったのでとてもとても嬉しくてもう」


 穂刈の言葉に気持ち悪さを覚えた私は、気分転換に外に出る口実を即興で口走った。


「うるせぇタバコ吸ってくる。」

「ちょちょちょっ!ダメですよ先輩!まだ立てな」

「やかましッ痛ぁ!」


 身体の痛みに耐えたつもりだったが、バランスを崩して倒れかけた。いつもなら立て直せるのに、思うように力が入らず、想像以上に左脚が痛んだ。

 不味いと思った瞬間、穂刈の腕が私の身体を受け止めた。


「…車椅子、今すぐに用意しますから。」

「…あ、あんがと。」


 ちなみに退院までに3ヶ月かかったが、ほぼ毎日穂刈が面倒を見てくれた。やはり、アイツには介護職が向いている気がする。

存在を忘れていたGmailのアカウントに、書きかけのプロットあったどー!

ってことで、サッと載せときます。

今後の連載はみていで、ひとまず完結設定にしますが、思い出しながら書けたらなと思います。

よろしくお願いします。

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