1章 2部
きりがいいところまで書いちゃいました
長いかもしれませんがよろしくお願いします
12:30
待合教室室。
静まり返った教室。誰もが浮つき隠せない中、扉を開く音が教室内に響き渡った。
一番後ろの席が与えられている翠月からは、より一層緊張が高まったことが一目で見て取れた。礼服で身を固めた男が教台の前で止まり強く、澄んだ声が静寂を破った。
「初めまして、藤堂です。中等部から無事進学おめでとう。そして、ようこそ高等部へ。メンバーが誰一人として入れ替わらなかったことは賞賛に値することだ。しかし、新鮮では無いかもしれないが今日の式、しっかり気を締めていけ」
その一言で数人の背中が曲がったように見えた。藤堂と名乗った男性は小さく頷き、口元が小さく動いたように見えた。
「だからと言って緊張することはない。これも各々が主人公の1つの晴れ舞台だ、思い切り輝いてこい」
教壇から再び頷き入ってきた扉から出て行った。扉が閉じた瞬間、教室内からどっと張り詰めた空気が霧散した。まだみんな中学生気分かと呆れながら本を取り出し、読み始めた。
「ねえねえ、翠月君。あの先生のことどう思う」
「能登さん、なぜそんなことを訊くのですか」
まだ中学生気分かと思ったことは表には出さずに表情を変えずに聞き返した。
「だって……気になるじゃん」
なぜか疑問型だった。あえてそこには触れないことにした。
「他人の印象は他人に訊ねても意味がないないですよ」
「翠月、わたしも気になるなぁ」
「だ、だよね。やっぱり、冴婾ちゃんも気になるよね」
僕は僅かな時間冴婾を睨み、諦めて溜め息を吐いた。
「僕は好きじゃない」
変に印象付けたくなかったので小さめに言った。
「えー、わたしはいいと思ったんだけどなぁ」
「やっぱり、七海も」
今日はみんなテンションが高いな。好奇心に溢れた眼を注がれ、耐えきれなくなって
「期待してもらっているところ悪いんですけど、直感としか言えないです」
と少しばかり大袈裟に落胆を体現し、はぐらかそうとした。
「そ、そう」
先ほどと違いうまくいったようだった。同時に僅かにこちらに向いていた教室内の意識が散っていった。完璧だと思われないように、ときどき論理的ではないところを見せることを中等部3年の頃から心がけているが、ここまでうまくいったのは初めてだ。
僕もなんでもそつなくこなせるわけじゃあない。少し自虐的になってしまったことを省みて、精神面もまだ弱いな。と、自分に追い打ちをかけてしまった。天は二物を与えず、まさにその通りだ。そんな諺が有ろうと無かろうと求められる物は変わらないというのに。
4月12日未明。翠月はベッドに入ってから、しばらく寝つけずにいた。
環境の変化のせいで思った以上に感傷的になってしまっていたため、その日行われたはずの入学式のことは全く覚えていない。誰も入学式について触れなかったので、きっと何事もなく乗り切ったのだろう。両親も何も言わなかったくらいだから。
眠りにつくため目を閉じて寝返りを何度かうった。丁度睡魔に襲われた頃、通知音が鳴った気がしたが、今起き上がってメールを確認したらしばらく寝つけない気がしたので、そのままにした。
翌朝。
携帯電話の鳴る音で目が覚めた。基本的に電話番号は家族しか知らないので在宅中に電話が鳴ったこと自体が不思議だった。頭をひねりながら充電中の携帯電話に向かって歩いているとドアがノックされた。
朝っぱらから何だよと毒づきインターフォンを押した。
「ちょっと相談があるんだけど」
「なんでインターフォンを押さなかった」
「誰にも知られたくなかったから」
今まで使われたことのない手で呼ばれたので、ある程度の緊急性と隠密性を感じ、仕方なく眠気を噛み殺しドアを開けた。パッと目の前に閃光が走った。冴婾が画面を目の前に突き出したのだった。
「寝起きにその明るさはきつい」
「ごめん、――はい」
そう言って画面を暗くして、今度は目の前に突き出すという愚行はせずしっかりと手渡してきた。
メールにはこう書いてあった。
要約すると、このメールは将来の日本を動かしていくと思われる者を選抜しこのメールを送った。このメールに添付されているURLからあるゲームにログインし、その中で同様にこのメールを受け取っている人を見つけ報告しゲームから追放する。残った一人に君たちが、国を背負う上で必ず有意義な情報を提供するというものだった。最後に部外者に他言した時点で参加資格剥奪とも。
読み終わったら自然と溜め息が漏れた。
「これ、他言無用って書いてあるじゃないか」
呆れを全面に出しそう言った。
「だって、これどう考えても第一条件にわたしは当てはまらないから…」
「わかないよ。可能性はある、なぜなら冴婾は今現在この家に住んでいるんだからね」
本気にされすぎないよう、大袈裟に言った。
「もう、からかわないでよ。それで、これ、どう思う」
「情報が足りないな。まず朝食を済ませてからだ」
冴婾に階段を降りるように言い、自分は部屋で着替え始めた。その途中、深夜にメールが届いていたことを、思い出した。メールアプリを起動した。
「――えっ……」
――ホントに。これ、さっき見たまんまじゃないか。
――1章終――
この後、メールの内容を2章をあげる前に書きます
誤字脱字等を教えてくれたら幸いです