前談
この小説のジャンルを一言では言い表すとこができないのですが私の好きなジャンルを全て入れてみました
皆さんも楽しんでくれるとうれしいです
初夏。
古びたアパートの1室。
「冴婾ちょっといい」
「なあにお母さん」
「この中学校受けてみない」
母はしゃがんでファイルから出したパンフレットを指し優しく言った。
「――うちにはそんなお金…」
「そんなこと、子どもは気にしないでいいんだよ。子どもに幸せになる機会を与えるのはいつの時代も親の義務だから」
「で、でも」
「そんなこと考えなくていいから、行きたいのか行きたくないのかだけ応えなさい」
少女は少しの沈黙の後小さく応えた。
「もう一回はっきり応えなさい」
「わたし、うけたい!」
母は小さく微笑みながら頷いて、
「じゃあ、決まりね」
そう言って足下にあった段ボールを開けて中から新品の筆記用具からテキストなどを取り出した。
「それはなに」
段ボールの底にあるたくさんの難しい字の書いてある紙を指し言った。
「これね。これは願書って言って受験の申し込み用紙みたいなものよ」
「じゃあ、その封筒はなにが入っているの」
「それはまだ知らなくていいことよ」
内緒にされると知りたくなるのが人間の性だが少女はそれ以上訊ねることはしなかった。
「受けるからには受かりなさいよ」
その言葉に力強く頷き早速勉強を始めた。
それから約半年飛行機で東京まで行き受験をした。泊まったホテルはいままでに見たことがないくらい豪華な部屋だったがあえて母親に尋ねることはしなかった。
「お母さんとどいたよ」
「開けて見せて」
「うん」
元気よく頷き、封筒を指でちぎって中の紙を取り出して見せた。
「大事な話をするからしっかり聴いてよく考えなさい」
「――うん」
突然神妙な面持ちに戸惑いを覚えながらもなんとか返事をした。
「冴婾、これからあなたは東京に住むの」
「家は」
「心配いらないわ。親切な大学の先輩があなたの学費も出してくれるし、衣食住すべて面倒をみてくれるから」
「お母さんは来ないの」
「お母さんはね、お父さんと一緒にやらなきゃいけないことがあるから」
「お母さんと一緒がいい!なんで!」
「ごめんね」
その、後何を聴いても母は謝ることしかしなかった。
何週間か後に母に連れられて空港まで行った。母が切符を窓口から受け取りそれを私に渡し、
「あの搭乗口だよ。向こうに着いたら迎えがいると思うから」
と言って指を差した。その時、母のずっと後ろに父がいた気がする。
その後は初めての飛行機で席を間違えることもなく無事に東京に着いた。
「君が加我冴婾ちゃんだね。冴婾って呼んでもいい」
「う、うん」
その相手の勢いに負けてとっさに出た言葉が彼女の初めて翠月と交わした会話だった。
これは序章です 少しハードルあげすぎたかな
こういう序章的なものを読んでいたら興奮する気持ちわかりますか?
もしわかるなら私と気が合うかもですね