ほんの少しの後悔
切っ掛けは些細な事だったと思う。
もう覚えていない。
どちらが先に言い出したのかもわからない。
ただひとつ言えるのは、間違っていた。と。
間違っていたのだ。私も、あの子も。
切っ掛けなんて関係ない。
ただ、悪意をぶつけた時点で間違っている。
解決するのはきっと簡単。一言「ごめんなさい」と言えばいい筈だ。
でも、どうしてもその一言が出ない。勇気が出ない。
あの子とまた話したい、遊びたい。あの子が居なきゃやだ。
だけど、怖くて、弱くて逃げちゃうんだ。
ねえ、神様お願い。私に一度だけの勇気を。
今一度だけ勇気をください。一歩踏み出す勇気を!
翌日の放課後に何故か教室であの子と二人きりに。
早く、早く言わないと行っちゃう。
そう思うけど、やっぱり怖くて、あの子は扉を開け、外に出る。
「空っ! 」
あの子は私の名前を呼ぶ。
「今までゴメンね。バイバイ」
……………………
そして、それが名前も今では思い出せないあの子との最後の会話だった……。
あの子は亡くなった。交通事故だったらしい。
あの日から20年。たまにはあの子のお墓参りに行こう。そして、やっとだけど、ちゃんと謝るんだ。
「私こそゴメンね」