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最終話

「……うっとうしい」


 クラウスはセシリアに対して不満声を上げる。セシリアが床に座り込んで本を読むクラウスの背中にもたれかかっているのだ。


 クラウスがAクラスに復帰することが決まり、迎えた週末の休み。セシリアはクラウスの部屋を訪れていた。せっかくの休みなのだからしっかり休養を取ろうと考えていたクラウスとは対照的に、セシリアは部屋に閉じこもるのを嫌がり、クラウスを街へ連れ出そうとしていた。クラウスもちょっとした諍いの謝罪と思いそれに任せようと思っていた。だが、試験での疲労が十全に回復していないこともあり、外出するのは難しかった。そこで、急遽セシリアはクラウスを自室に迎えようとしたが、女子生徒用の寮は男子禁制であるためそれもかなわず。結局なし崩し的にクラウスの部屋を訪れることとなった。


「私は、構わない」


「俺が、構うって言ってんだよ。本が読みにくいだろ」


「私は、構わない」


「……はぁ」


 一向に折れる気配のない幼馴染を前に、クラウスは諦めるしかなかった。


「ったく」


 クラウスは不満を吐きながらも、後ろからの重みに耐え読書に集中しようとする。だが、そうは問屋が卸さなかった。


「グェフッ!」


 強烈な痛みを背中に感じ、振り向くとセシリアが不満げな表情で拳を固めている。


「何すんだよ!?」


 急にくわえられた暴力に、クラウスは憤りを隠せない。


「私を構わない」


「は? またそれかよ。っていうかそれとこれとどういう関係があんだよ」


 クラウスは自分を殴打したであろうセシリアの手をにらみつける。


「だから、クラウスが私を構わない」


「確かに構ってはないけど、暴力を振るわれる覚えはないし、それにいつもこんな感じだろ。なんで急に怒りだしたんだよ」


「……」


 クラウスの問いには答えず、セシリアはそっぽを向く。


 クラウスに対する興味を失ったかのようなしぐさをしているが、時折動く視線はそれが演技だということを語っている。


 要は、本を読むのをやめセシリアと何かをすれば彼女は満足するのだろうと思い、クラウスは本を閉じる。


「わかったよ。それで、お前は何がしたいんだよ」


「!!!」


 クラウスの見せた譲歩に、セシリアがすぐさま飛びつく。先ほどまでの様子は見る影もなく、目を輝かせている。


「ボードゲーム、腕相撲、しりとり……」


 やりたい遊びを列挙していく幼馴染にクラウスはつい微笑んでしまう。


「お前、まだそんな幼稚な遊びが好きなのかよ」


「うん」


「楽しいか」


「うん」


「それじゃ、ボードゲームからやるか?」


「私は構わない」


「そんじゃあ、せっかくだし、他にも呼ぶか。二人でボドげは盛り上がらんだろ」


「私は構うのん」


「は?」

 

 意味不明な言葉を発するセシリア。だが、その表情はさっきと同じく不満げだ。


「っていうのは嘘で、二人でやるか?」


「!!!」


 こちらの食いつき具合も、見覚えのある光景だった。

まだまだ続けていこうかと思っていた作品でしたが、資料紛失や長期休載のために設定を忘れる等、諸問題が発生し、このまま続けると今以上に駄作になる恐れがありましたので、今回で最終話とさせていただきます。身勝手なことで誠に申し訳ありません。拙著をここまで読んでくださり誠にありがとうございました。次回作にご期待ください(社交辞令)。

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