表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

第十八話

 セシリアはどこか不満げに座っている。


 他の生徒らは試合が終了すると、すぐに会場を出ていったため観客席にはクラウスとセシリアしかいなかった。


 クラウスはセシリアの隣に腰かけ、言った。


「……セシリア、俺やったよ。お前も見てただろ今の試合。まだ、完ぺきとは言えないけど、リカルド先輩とアンナが協力してくれたおかげで何とか召喚士としてやってく目途がついたよ」


「……」


 セシリアはいまだに不満そうな表情を浮かべている。


 やはりこの前の喧嘩のことをまだ引きずっているのだろうか、とクラウスは考えた。


「この前はごめん。お前の言ってることが正しかった」


 クラウスは膝に手を突き頭を下げる。


 だが、セシリアはそれを一瞥したきり何も言わない。


 むしろ先ほどよりも怒りをあらわにしている。


「……なあ、この前は俺が悪かったって。だからさ、機嫌なおせよ」


「……」


「何が不満なんだよ? 俺は無事試験で結果残せたし、お前に謝罪だってしてる。何一つ不満が残るところはないじゃないかよ」


「……ある」


 セシリアの発した声は、とても女性のものとは思えないほど低かった。


 その声にクラウスは思わず顔を引きつらせる。


「……なんだよ?」


「……」


 セシリアは言葉を発さず、わき目に見ながら、クラウスの胸元を指さした。


「はあ? 俺に何か文句あんのか? でも、さっき謝っただろ?」


 セシリアは頭を振ると、指先を下に向けた。


「……喧嘩のことはもういい。というか、最初から気にしてない。そうじゃなくて私はそれが気に入らない。どうして、私に頼まなかった」


 そこでやっとクラウスは、セシリアの不機嫌の原因を察した。


 セシリアが指さしていたのはクラウスではなく、クラウスの身に着けていた魔道具――コートとリストバンドだったのだ。


「……いや、お前に頼もうかと思ったけど喧嘩中だったし、セシリアがやってくれるていったからさ」


「私は喧嘩のことなんて気にしてなかった。なんで頼ってくれなかったの!?」


 本心を語るのは気恥ずかしいが、クラウスはそうする覚悟を決めた。それはひとえに目の前で嘆く幼馴染のためだった。


「……お前を喜ばせたかったんだよ。情けない真似して失望させちまったから、その分喜ばせたかった。だから、お前の手を借りずに成し遂げたかったんだ」


「……わかった。けど、次からは私が作るから」


「……ああ。そん時は頼むよ」


「……」


 返事はなかった。


 セシリアは急にしおらしくなり、クラウスから顔を背けたのだった。珍しく赤くなってしまった自分の顔をクラウスに見せないよう隠すために、セシリアは必死に首に力を入れていた。

今日はあともう一話投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ