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遅咲きのアネモネ

作者: 笹崎 匠悟

♦1.電車の向かいに座る二人組の女子高生が、彼氏がどうだこうだとまるで乗客全員に聴かせるようなボリュームで話している。

そのBGMが仕事終わりの疲労感を増長させる。

自分にも彼女たちのように恋人との些細な出来事が自分の人生にとって最重要事項だった時があったのは確かだ。

あの頃の自分が遠い昔のように感じる。遠い記憶を思い起こすように。

歴史の教科書の昔の人の様子を描いた絵を見て「あっ!こんな時代もあったんだ。」と思うようなまるで何十年、何百年、何千年前の事に思いをはせるように。

電車の窓に映る自分の顔を見てまるで開けるなという忠告を聞かず玉手箱を開けてしまったが故におじいさんになってしまった

浦島太郎のように窓に映る自分の姿が急に老け込んでしまったように感じる。


思えばここ数年、1年があっという間に過ぎ去っていく。

短大を卒業し、気が付くとあっという間に30歳を超えて今年で33歳の誕生日を迎える。

私の部署の7人いる女性の中で結婚していないのは、私と去年新卒で入った23歳の子、そして私の上司で私より2歳年上の岡本さんだけだ。

毎年嫌というほど届いた友達からの結婚式の招待状も、もう四月だというのに昨年から一枚も届いていない。

私はというと彼氏すら29歳のときに4年付き合った彼と別れてなんの爪痕すら残していない。

「俺じゃ、理香の事を幸せにできる気がしない・・・。」そう言って彼は私の元を去った。

あれが私の結婚におけるラストチャンスだったのだろうか?


❤2.春は出会いの季節というがそれは本当だろうか?

私が気づいていないだけなのか。春だろうと秋だろうと出会いらしい出会いがない。

数年前まで母との電話でそれこそ耳にタコができるほど聞かされた「結婚」というワードを最近全く聞かない。

これは、母なりの気遣いなのだろうか?

そもそも母の時代には25歳ぐらいであった女性の平均結婚年齢は30年余りで5歳も上がった。

30歳を超えての結婚や初産なんて当たり前の時代だ。

そもそも、女性の年齢による出産のリスクだけが槍玉に挙げられるが、実際は男性も年齢が上がることで精子が劣化することがあまりにも知られていない。

まるで、女性だけが賞味期限があるように言う男にろくな男はいない。


♦3.あれはたしかちょうど、私が今の会社に入って3年目の頃だった。

私の同期であった友加里が隣の課の3つ上の先輩と付き合い始めた。

社会人というのは学生時代と比べて、出会いが少なく、さらには、ライフスタイル、生活スタイルの違いなどによるすれ違いの問題もある。

それ故、社内という毎日顔を合わせる相手に必然的に魅かれそのまま交際→結婚というのは少なくない。

いわゆるオフィスラブというやつだ。

結婚というゴールまで無事にたどり着けば問題はないのだが、途中もしも別れてしまった場合お互い会社を辞めなければ気まずい思いをすることになる。

まして、社内恋愛はなぜだか周りの人間に驚くほどの速さで広まる。

周りの同僚はもちろん、あいさつ程度しかしたことのない社内の人間にもすぐに知れ渡ってしまう。


友加里のケースは最悪の結末を迎えた例である。

友加里の彼は経理の女の子と浮気をし、それが発覚、修羅場の末に友加里とも経理の子とも別れ、さらにはその噂を聞いた周りの空気に耐えれれず、退職した。

その周りの空気に耐えられなかったのは、不貞をした彼だけでなく、その被害者である友加里、そして経理の女の子もだった。

1か月で3人の社員が一度に退職した。

人事部からしたらオフィスラブほど恐ろしいものはないのかもしれない。


その苦い記憶から社内恋愛は決してしないと思っていた私であったが時間の経過というものは、目の前で起きた他者の不幸より得た教訓や戒めすら薄れさせてしまうのかもしれない。

私は恋をしてしまった。

社内の人間に。それも同じ部署の今年入社したての自分よりも10歳も年下の新入社員に。


❤4.新入社員の歓迎会。

それがすべての始まりだった。

まさか、自分が一回りも下の男の子、いや異性に好意を持たれ、それに引きずられる形で自分も相手に好意を持つなんて。

彼の慣れないながらの一生懸命なアプローチと年の差なんて気にかけない態度にしばらく恋愛から遠ざかっていた私の心はいともたやすく開かれた。

もちろん、私たちの関係は社内では秘密だ。

バレてしまっては、この幸福な関係に何らかの波風が立つことは容易に想像できた。


そもそものきっかけは、彼の自己紹介で、私と出身地が同じことを知ったのがきっかけとなった。

そこから話を広げていった結果、私が気づいていないだけで彼と私が初対面でないことがわかった。

私が学生時代にアルバイトしていた地元のコンビニにまだ少年だった彼は頻繁に訪れていたという。

彼は、私を一目見た時からもしかしたらと思っていたと言う。

言われてようやく私はぼんやりと思い出し始めた。

そして、「それが僕の初恋でした。」と彼は、私たちが付き合って少ししてからいつも恥ずかしそうにレジに来ていた少年と同じ顔をして打ち明けてくれた。


♦5.まさか自分が年下のそれも自分よりも10歳も下の異性に魅かれるなんて最初はまったく考えてもいなかった。

あの飲み会の日、彼の言葉と行動で私は恋に落ちた。

ここ数年、まったくと言っていいほど色恋に関わることのなかった私は彼のすべてにときめき、10代のまだ恋が何なのかもわからない少女のように彼の事を考え、思いをはせた。

これから彼とたくさんの愛を交わし、思い出を刻み、そして最終的には友加里の成しえなかった結婚というゴールにたどり着く未来まで考えた。

彼を見れば見るほど、言葉を交わせばかわすほど彼の事をもっと知りたい。

もっと私の事を知ってほしいと思った。

私たちのこれから築く幸せな未来を誰にも邪魔はさせない・・・特に会社の人間には・・・心の中でそう誓った。


❤6.彼と付き合い始めて3か月が過ぎた。

彼はようやく仕事に慣れてきたようだ。

公私ともに彼を支えられる位置にいる自分の立ち位置に幸せを感じる。

人目を気にして中々社外では会うことができないが、毎日メールと電話のやり取りをしている。

彼とのそんなやり取りは仕事終わりの疲労感を消し去ってくれる。

本当に若い彼の相手が私でいいのかと思い悩むときもあるがそんな私に彼はいつも優しい言葉を投げかけてくれる。

そして、自分が本当に愛されていることを再確認する。

本当は、たくさん会って話したい。一緒に居たい。

でも、この関係が誰かに特に社内の人間にバレれたときの事を考えると恐ろしい。

だからこそ、携帯越しのこの繋がりは私たちにとってかけがえないものだ。


だから、一か月前会社で携帯をなくしたときは本当に不安な気持ちになった。

翌日には見つかったのだけれども、心配性な彼は数日経ってから念のため携帯を変えたほうがいいと言って、その週の週末に二人で隣町の携帯ショップへと付き添ってくれた。

これを機にスマートフォンに変え、彼の進めるコミニュケーションアプリを入れた。

メールより手軽に使えて、彼とのやり取りもより近くに感じられる気がした。


そして、そのまま土日を使って少し離れた観光地へと小旅行をした。

これが私たちの初めてのちゃんとしたデートとなった。

旅行の帰り、彼の車の助手席で二人でたくさん撮った写真を眺めながら楽しい時間が過ぎ去ってしまう悲しさを少しでも薄めるように運転する彼の横顔を覗いた。

運転する彼の横顔はいつもよりも大人っぽく見えた。つい視線を奪われる。

再びスマートフォンに映る写真を見ながら思う。

彼との幸せな時間はまるで夢のようだと。

助手席の安心感と久々にはしゃぎ楽しんだ疲れのせいか、ふと眠気に襲われる。

このまま、眠りについてしまうと彼との幸せな時間がまるですべて夢であったように消えてしまいそうな恐怖に襲われる。

怖くなってまた彼のほうに視線を向けた。

目の前の信号が赤に変わる。

停車と同時にふと彼がこちらを向く。

視線が合う・・・。

「りっちゃん・・・・。どうしたの?」彼が私の名前を呼び、優しく微笑む。

彼と目が合う度・・・彼と言葉を交わす度・・・彼と触れ合う度・・・私は彼の事をどんどん好きになっていく・・・。

この幸せが永遠に続いて欲しい・・。そう願った・・・。


♦7.ありえない・・・。ありえない・・・。ありえない・・・。

彼に限ってまさか・・・。

あの二人の関係には薄々気づいていた・・・。

ダメなことだとは知っていたけれど彼とあの女のメールのやり取りを見てしまった・・・。

悍ましいあの女とのやり取りを・・・。

メールを見るまではあの女が彼に無理やり付き纏っているのだと思っていた・・・。

彼のすべてを知りたいと思ったあの時の私自身を恨んだ・・・。

知らなければ良かった・・・。

きっと純粋無垢でまだ少年の心を持った彼はきっとあの女に騙されているんだ・・・。

そうよ。そうに違いない。

メールでのまるで純粋無垢な恋する乙女のようなあの女の態度には反吐が出る。

いつも私に向けてくれるあの優しい笑顔は私だけのものなのに・・・。

許せない・・・。

今までの私は年の差に躊躇し、勝手に自分を卑下していた・・・。

あの女でいいのなら私にだっていくらでもチャンスはあるはずだ。

ほかの女ならともかくあの女に取られるのだけは許せない・・・。

私たちの理想の未来を・・・彼との幸せな日々を取り戻さなくては・・・。

私が彼を救ってあげなくちゃ・・・あの女の手から・・・。

幸せは自分が待っているだけでは、平然とその前を通り過ぎてしまう・・・。

自ら引き寄せ、捕まえなくてはいけない・・・。

その為に彼に私の魅力を再確認させ、ほかの女を寄せ付けないようにしなくては・・・。


❤8.今年の夏は二人でたくさんの思い出を作った。

春から夏、そして秋へと彼と一緒に季節の移り変わりを過ごせることに幸せを感じる。

今日は、彼の誕生日。

二人で駅前のおしゃれなトラットリアで食事をし、二人で良く行くバーへと向かった。

食事中も二人で夏の思い出やこれから秋にはどこに行こうかなどと楽しい話題は尽きなかった。

プレゼントの腕時計を渡すと彼は子供の喜んですぐに付けてくれた。

顔見知りのバーのオーナーが予約する際に、彼の誕生日と聞いてケーキを用意してくれていた。

ほろ酔いでバーを出ると「これから・・・うちに来ませんか?」と彼は酔っているのか酔っていないのかわからない顔で言った。

「えっ・・・いいの・・・?大丈夫・・・?」

彼のアパートは会社から歩いて5分ほどの距離にある。

今までは、会社の人間に見られるかもしれないからと決して訪れることはなかった。

「りっちゃんとのこと会社のみんなにちゃんと話そうと思う。りっちゃんとの関係を隠したくないんだ。今までは、りっちゃんが悪く言われるのが嫌だと思っていたけど、僕が絶対守る。それにりっちゃんとの関係が大事だからこそなんにも隠す必要はないと思うんだ。」自分の初恋の話を打ち明けてくれた時と同じような照れくさい顔をして彼は言った。

「うん。わかった。でも、会社ではちゃんと岡本さんか、律子さんって呼ぶんだよ!」私は泣いているのか笑っているのかわからない顔で彼のその言葉に応じた。

それから二人でたわいもない話をしながら途中、コンビニで飲み物なんかを買って、彼のアパートへと向かった。

彼のアパートに着くと「ごめん。ちょっと部屋片づけてくるからちょっと待ってて。」と一人階段を上り、右の一番角の部屋へと進んで行った。

階段下に残された私は通りの向こうの自動販売機のほうに視線を向けた。

自動販売機の前を黒猫が歩いていく姿が見えた。

私の視線に気づいたのか。顔をこちらに向けた。

その首には、赤い首輪らしきものが付いていた。どうやら近所の飼い猫のようだ。

行く当てのない野良猫ではないことに安堵した。

階段の方から足音がした。

振り返ると彼が階段を下りる姿が見えた。

近づく彼に声を掛けようとするが、街灯に照らされた顔を見て、一瞬躊躇った。

その顔は先ほどまでの幸せそうな顔とは打って変わって青白く恐怖を携えた表情をしていた。

そして、彼は「一緒にさっきのコンビニまで戻ろう。」と震える声で言った。

状況が飲み込めない私は彼に言われるがまま彼の手に引かれ先ほど来た道を引き返す。

彼の部屋と思われる角の部屋に視線を向けるとほのかに中の明かりが付いたままなのか薄く光が漏れているように見えた。

彼の握る手は、いつもより力強く、珍しく手汗をかいていた。


♦9.今日は彼の誕生日。

私は仕事を早退し、食材とケーキを買い彼のアパートへと向かった。

アパートの場所は以前の飲み会で帰りに同じ方向だと嘘をつき同じ方向に帰る課長と三人でタクシーに乗った際に覚えた。

彼のアパートは、暗証番号式の鍵。

数日前に忍び込んだときに開くかどうかは確認済みである。

以前、あの女の携帯を盗んだ時にメールで話していた番号で間違いなかった。

まずは、部屋を掃除し、飾りつけ、買ってきた花を花瓶に入れ、食卓に飾った。

それから彼の好きなビーフシチュー、シーザーサラダ、ハンバーグ、シーフードグラタンを作った。

全て終わる頃には、時計の針が7時を指していた。

「今日は、残業かしら?」

全ての準備が終わり手持無沙汰になった私はソファーに腰を掛ける。

横の本棚にアルバムを見つけた。

そこには、彼の学生時代の姿が写っていた。

数人で楽しそうな笑顔をカメラに向けている。

やはり彼は昔からかっこいい。

一緒に写っている女の顔はすべて切り取り、細かく切り刻みごみ箱に捨てた。

アルバムの数が多く、帰りの遅い彼を待つ暇つぶしにはちょうど良かった。

「こいつもこいつもこいつも彼の隣にはふさわしくない♪」

「さあ~次はあの女に関するものを片付けなくちゃ♪」

もっとも彼にふさわしくないあの女の思い出を。

そもそもなんで私よりも年上のくせに彼に近づいてくるのか。それも彼女面して。

自分より若い女に取られるならまだ許せる。

同じ職場、同じような年齢。

どう考えても私のほうがあの女に勝っている。

彼の隣は私だけでいい。間違ってもあの女ではない。

あの女から貰ったであろう物、思い出に関するものすべてを片付けているうちに時計の針は11時を回っていた。

さすがにそろそろだろうと料理を温め直し綺麗に盛り付け、ケーキもセットした。

アパートの階段を昇る音がする。

ドアの前で暗証番号を押す電子音が聞こえた。

ドアを開けダイニングに入った彼は驚いた顔していた。

どうやらサプライズは成功のようだ。

彼が私のことを見つめる。

私は彼に笑顔を向ける。

「おかえり~♪誕生日おめでとう~♪」


☘10.結婚式の準備とは想像していたよりもやることが多くて骨が折れる。

りっちゃんと付き合って2年。

プロポーズ、両家にあいさつのイベントを終え、今は式場決めや招待客のリストを決めているところだ。

お互いの親族、友人、今の会社の同僚はもちろんだが、二人が出会った前の会社の人を招待しようかどうかは悩む。

あの会社の人間に会うと嫌でもあの忌まわしく恐ろしい事件の事を思い出される。

あのストーカー女のことを・・・。


部屋の鍵が開いていて、電気が付いていたのを最初は学生時代の友達が俺の誕生日にサプライズでも仕掛けているのかと思ったが、部屋の扉を開けた瞬間あの女がこちらを見て笑っていた姿には心の底から恐怖を感じた。

見慣れた自分の部屋とはまるで別の部屋のように飾り付けられた部屋。

並んだ料理、食卓の花瓶の鮮やかな色とりどりのアネモネの花・・・。

そして、あの女の笑った顔・・・。

今でも、脳裏に刻まれたその光景が夢に出てきてうなされるときがある。

とっさに下に学生時代の友達を待たせているからと嘘をつき、外に出てりっちゃんと一緒にコンビニまで逃げて、すぐさま警察に通報して事なきを得た。

その後、あの女は捕まり会社には解雇された。僕たちも会社に居づらく、それにあの女に知られている場所に居続けるのが恐怖で退職を考えていた。

そんなとき、課長が気を回して他県の関連会社を紹介してくれ、今では二人でその会社に転職し幸せに暮らせている。

「はい。コーヒー。招待客のリストで悩んでいるの?」りっちゃんが淹れたてのコーヒーを僕に渡しながら訪ねた。

「前の会社の人どうしようかと。」

「課長だけ呼んだら?他県だし、みんな呼ぶのも大変だと思うの。それに数人だけっていうのも何を基準に選ぶのか難しいもの。」りっちゃんがさらりと答えこちらに笑顔を向けた。

「そうだね。」

その笑顔を見て、彼女と結婚できるという幸せを再び噛み締めた。

世の中に何人初恋を成就させた人間がいるのだろうか?

きっとかなり少ないはずだ。

偶然彼女と再会できた僕は本当に幸せ者だ。

彼女との初めての出会いを思い出す。


☘11.小学生だった僕は、放課後、近所の上級生にコンビニで万引きをして来いと脅された。

僕は、やらないで痛い目を見る恐怖と万引きという犯罪を犯してしまう恐怖の狭間に悩まされ震えあがっていた。

きっと傍から見たらあまりにも怪しい挙動不審な小学生だったに違いない。

そんなとき、僕に救いの手を差し伸べてくれたのが彼女だった。

「どうしたの?」彼女はカードゲームのパックの前で震える僕に優しく話しかけてくれた。

その瞬間、緊張の糸が解けてしまった僕は泣き出した。

そんな僕を彼女は店の奥にあるスペースへ手を取り連れて行ってくれさらには温かいココアを与えてくれた。

その優しさにかつ丼を差し出された取調中の犯人のようにすべてを彼女に話した。

すると、何か考えるような顔をしてから彼女はどこかに電話はかけ始めた。

「これでもう大丈夫だよ。安心してうちに帰りな。」と言って僕の頭を優しく撫でてくれた。

僕は彼女に言われるままにコンビニの裏口から出て家に帰り、次の日学校に行った。

すると、僕に万引きするよう脅した上級生が謝罪してきた。

僕は訳が分からなかった。

そして、僕を助けてくれた大学生のお姉さんに恋した。

それからお小遣いをもらうと真っ先に彼女の働くコンビニに向かった。


付き合ってから彼女にあの時どんな魔法を使ったのか聞くと。

「魔法なんてたいそうなものじゃないわよ。小学生はきっとそのときの私みたいな女子大生や大人なんかに言われるよりも中学生に言われるほうが恐怖心を覚えると思って、中2だった弟を呼んでそのいじめっこに釘を刺してもらったの。だって、その子6年生だって言うから来年中学に入ってすぐ上級生に目を付けられるのはさすがに嫌じゃない。それならちゃんと言うこと聞くかなって。」そう言って泣きじゃくる僕の頭をなでてくれた時と同じ優しい笑顔を僕に向けた。

長年の謎はあっさり解決した。

そして僕は、今度は、彼女を僕が守ってあげなくてはと改めて思った。

そう思うと結婚式の準備なんて屁でもないと思えた。

ずっと彼女には僕の隣で笑っていてほしいと思う。

これからの二人の人生はきっと幸せなものに違いない。


~fin~ 


アネモネの花言葉と逸話についてお調べになっていただければ幸いです。

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