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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第1章 リベリオン
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8. 戦闘員の日常


 リベリオン日本支部におけるセブンの個人研究室、その部屋の中に風情の無い機械音が響き渡っていた。

 機械音に反応するように研究室の床で眠っていた戦闘員9711号が、もぞもぞと体を動かし始める。

 やがて体に掛けていた毛布を退けて起き上がった9711号は、機械音を流し続ける研究室の端末を操作して止めた。


「イィィィッ」


 戦闘員用の倉庫に帰るのを嫌がった9711号は現在、セブンから許可を貰って特別に研究居室内での生活を許されていた。

 研究室に寝具などは無いため床の上で寝なければならないが、あの監獄のような場所に比べたら全然ましであると考えたのだろう。

 9711号は固い床で寝ていたことで強張った体をストレッチで解し、近くに置いてある新しい戦闘員服に着替える。

 朝の支度を終え、これから戦闘員9711号の悪の組織での仕事が始まる。






「お早う、9711号」

「キィッ!!」


 戦闘員9711号の朝の最初の仕事は、研究室でセブンを迎えることであった。

 セブンは個人研究室とは別に生活空間となる私室を持っており、普段彼女はそこで寝泊りをしている。

 時間に厳しいらしいセブンは毎日きっかり同じ時間に研究室に現れるので、9711号は彼女が来る前に部屋の掃除などして準備するのが彼の日課になっていた。


「今日はこの資料の整理をお願い」

「キキィィッ」


 前にも触れたことがあったが9711号の主な仕事は、セブンの業務をサポートする雑用係であった。

 9711号にセブンの研究を直接手伝える高度な頭脳は持ち合わせていないため、彼女の仕事を直接手伝うことはまず無いのだ。

 時にはお使いとして他の研究者に資料を届けたら、時には食堂に行って食事のデリバリーをしたり、時には資料の整理としてデータ打ちを手伝ったりした。

 今日も何時も通り9711号は、セブンに指示された雑用を言いをこなすのだった。











 昼の12時を回った時間、9711号は研究室を出て組織の通路を歩いていた。

 丁度今も昼食の時間ということで、食堂へセブンの食事とついで自分の分の食事を取りに来たのだ。


「キィィッ」

「キィィィッ」


 食堂では調理用の特別プログラムがインストールされた戦闘員たちが、黒ずくめの覆面姿の上にエプロンというシュールな姿で料理をしていた。

 ちなみに食堂の味は可も無く不可も無くと言った所だ、戦闘員が機械的に作る料理なためか何処か味気無い感じはするが別にまずい訳では無い。

 注文は基地内のローカルネット上で既に済んでおり、9711号のやることは受け取り口から調理済みの料理を受け取るだけである。

 食堂には食事を取るスペースも勿論有るのだが、この場所で食事を取るものは少ないらしく食事スペースは閑古鳥が鳴いていた。


「くそっ、まだ半分しか終わって無いのか…」


 食事スペースでは未だに掃除班に在籍している例の蜥蜴怪人が、ぶつぶつと不満を零しながらテーブルを布巾で拭いていた。

 確かあの怪人は己に食事は不要だと話していたので、自分には縁の無い場所を掃除する今の心境は複雑なものだろう。

 根が真面目なのか手抜きをせずにテーブルを一台ずつ丁寧に綺麗にしてく姿は蜥蜴怪人の姿は、何処か面白みを感じさせた。


「キィィッ!!」

「キィ!」


 蜥蜴怪人の清掃風景を眺めていたら食事の用意ができたらしく、食堂付き戦闘員が9711号に知らせてくれた。

 食堂付きの戦闘員から食事を受け取った9711号は、食堂にあるカートを使ってセブンの元に食事を運ぶのだった。












「久しぶりー、元気してたー!!」

「この部屋に入る時にはノックをして欲しい」


 セブンの研究室に突然、蜂型の女怪人クィンビーが豪快に扉を開けて顔を出した。

 仕事中に現れた邪魔者を快く思っていないセブンが白い目で迎えるが、乱入者はその視線に意を介さずそのまま部屋の中に入ってくる。


「あら、戦闘員じゃ無い、あんたも元気してたーー」

「キィィッ!?」


 データ入力を手伝っていた9711号に気さくに話しかけたクィンビーは、主の断り無しに勝手に研究室の机の上に腰を下ろす。

 先の戦闘以来、どういう訳かセブンと9711号を気にったらしい怪人クィンビーはたまにセブンの研究室に訪れるようになっていた。


「…でさー、今日もあの蟹野郎に嫌味を言われたのよ。 本当、腹立つわねー!

 あの蟹め、なんであんな旧式が組織で幅を利かせているのかしら…」

「あの怪人はリベリオン首領が自ら生みだした怪人、旧式とは言えその性能は現行の並の怪人を上回る」

「えっ、あいつって首領様に改造された怪人なの!?

 うわっ、どうりで偉そうだと思った…」


 クィンビーは研究室に来ると何時も、仕事中のセブンに絡んで雑談を興じていた。

 最もセブンの方は碌に相手をしないので、一方的にクィンビーが喋り続ける形なのだが彼女はマイペースに話を続けていた。

 話のテーマは大抵、クィンビーの抹殺したい人物のリストの最上位に居る礼の蟹型の怪人の愚痴であることが多い。

 他にはガーディアンに対しての文句や組織への不満などを好きなだけ語ったあと、クィンビーはすっきりした顔で研究室を後にするのだ。


「ちょっと、戦闘員、お茶となんか甘い物でも持ってきてよー!!」

「キィィッ!?」


 そして研究室に訪れたクィンビーは決まって、9711号に何らかの雑用を命じるのがパターンになっている。

 クィンビーが来ると仕事が増えると内心で考えなら、9711号は急いで食堂にお茶とお茶菓子を取りに行くのだった。











「おう、聞いたぜ、今日は大量だったんだろう?」

「ああ、活きのいいのが手に入ったよ」


 食堂への行く道、偶然二体の怪人の話が耳に入ったことで9711号の気分は一気に急降下した

 話だけ聞いていれば釣果について語っているようにも聞こえるが、怪人が釣りなどする訳が無い。

 あの怪人は魚では無く、怪人や戦闘員の材料を大量に手に入れたと話しているのだ。

 そう、怪人や戦闘員の元となる人間を大量に攫ってきたと…。






「キィ…」


 リベリオンは悪の組織である、組織を強化するために攫った人間を怪人や戦闘員に仕立てることなどは日常茶飯事だ。

 恐らく9711号も過去にリベリオンに攫われて、戦闘員に改造されることで声や記憶を奪われたのだろう。

 セブンの下で働いている間は己が悪の組織の一員であると自覚することは無く、9711号は気楽に今の生活を続けられた。

 しかし今のように己の立ち位置を突きつけらた時、9711号の胸に微かな痛みが走るのだった。

 


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