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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第3章 三代ラボ
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15. 一難去って


 大和の切り札であるコアの80%開放には時間制限が有る、戦闘員の体と言えども余り長時間はコアの出力に耐え切れないのだ。

 普通の怪人相手ならコアの出力開放によって飛躍的に上昇した肉体能力を用いて、短時間の内に勝負を決することは出来るだろう。

 しかし相手は三代たちが見立てたところによると、常時80%の出力を使用するバトルスーツを纏った化け物という話である。

 大和は切り札を切ることでようやく、相手と同じ土俵に立つことが出来るのだ。


「"ぐぉぉぉぉっ、痛くは無いけど、結構衝撃がぁぁぁぁっ!!"」

「"我慢してください、マスター、もう少しお母様の所から離れられれば…"」

「離せ!? 何故戦うんだ、お前は今のままで…」


 時間制限の有る切り札の使い方を考えていた大和は、それを相手を倒すために使うことを諦めた。

 侵入者はまだバトルスーツの固有能力を使っておらず、手の内が解らない状態で切り札を使うことが出来なかったのだ。

 そのため大和は切り札を、セブンたちから侵入者を引き離すために使うことを決意することになる。

 こうして80%の出力でパワーアップした能力を使って侵入者の動きを封じた大和は、ファントムに引き攣られながらガーディアン東日本基地内を移動していた。

 勿論、謎の侵入者は大和の拘束を解こうと足掻くが、コアの出力を解放した今の大和とは肉体能力の差が殆ど無いため、簡単には脱出することは出来ない。

 大和は出来るだけセブンたちから侵入者を引き離すため、引き続きファントムにチェーンで繋がった自分たちを引き摺らせるのだった。











 リベリオンによるガーディアン東日本基地への侵攻作戦は、佳境を迎えつつあった。

 当初はリベリオンが非常に有利に作戦を進め、既に基地内の四割以上の機能は怪人たちの手によって破壊された。

 迎撃に現れたガーディアンの戦士たちの中には既に多数の犠牲者が出ており、ガーディアンが少なくないダメージを受けたことは間違いない。

 しかし当初よりガーディアンの抵抗が激しく、怪人たちは最終目的であるガーディアン基地の完全制圧にはまだ時間が掛かりそうだった


「悪い子は私が許さないんだから! マジカルパワー、ぜんかーーーい!!」

「くぅっ!!」


 リベリオンの怪人たちの侵攻スピードが遅れた原因の一つとして、彼らを統率する指揮官からの命令が滞るようになったことにあるだろう。

 怪人たちは基本的に自分勝手であり、余り細かな指示には従おうとしないが、それでも全く上からの指示が無いとなると話が違う。

 今もこの戦場でも統率を失った怪人の内の一体が孤立してしまい、ガーディアンの戦士に袋叩きにあっていた。

 怪人と言えども多数のガーディアンの戦士たちが相手では、苦戦は必死である。

 魔法少女型バトルスーツというきわものを使う若い少女たちに追い詰められた怪人は、己の苦境を歯噛みしていた。

 一体リベリオンの指揮官たちは今、何をしているのだろうか。






「クィンビーぃぃぃぃっ!!」

「いい加減に死なさいよ! ガーディアン!!」


 今回の作戦で指揮官として派遣された怪人は二体、作戦の肝となる潜入作戦も担当した怪人ステレオンと、多数の大蜂を操る怪人クィンビーだ。

 指揮官たちは不運にも欠番戦闘員と呼ばれる謎の敵対者と、若いガーディアンの戦士コンビに襲撃にあっていた。

 既にステレオンは欠番戦闘員の拳に倒れており、残ったクィンビーは白木と土留に執拗に狙われており指揮をする所では無い。

 クィンビーと白木たちの足元には所々に大蜂の死骸や尖った氷柱が有り、彼らのの激戦の様子を窺うことが出来た。


「おい、白木、何がこっちに来るぞ!?」

「えっ、何あれ…」

「あ、あれは…」


 クィンビーと白木がにらみ合う中、白木の横に居た土留が何かがこちらに近づいて来る事に気付いた。

 確かに土留が指差す方向の道からは、徐々に近づいてくる影が見える。

 やがてその影が何かを引き摺っている無人のバイクであることが解り、彼らは自分の目を疑うことになった。

 その奇妙な乱入者の姿に白木とクィンビーは戦闘中であることを忘れて、仲良く何処かで見覚えのあるバイクが近付いて来る様子を見ていた。





「"こ、此処まで来れば…。 ファントム、コアの出力開放を解除しろ!!"」

「"アイアイサー"」


 偶然にも白木とクィンビーたちの戦場まで近付いてきた大和は、そろそろ限界時間となるコアの80%出力の開放を解除した。

 すぐさま大和は腕の力をゆるめ、白い仮面に白いバトルスーツを纏った侵入者の体を開放する。

 現状は未だにファントムが走行中であり、その状態でチェーンで接続された大和から侵入者の体が離れたのだ。

 侵入者はファントムから離れた衝撃でその場で何回もバウンドしながら転がり、大和の視界から消えていった。


「"し、死ぬかと思った…"」

「"無茶しましたからねー、それじゃあ、さっさと逃げましょうか"」


 ファントムはすぐに自走を止めて自身と主を繋ぐ鎖を解き、大和はようやく己の足で再び大地を踏みしめることが出来た。

 バトルスーツの恩恵と戦闘員としての頑丈さのお陰で、結構なスピードで地面に引き摺られていたにも関わらず大和の体にダメージは無い。

 ただしコア80%開放による反動は出ており、以前の△△の時のように大和の体に痺れのような症状が出始めていた。

 特に活動に影響が無いことを確認した大和は、数メートル先で止まっているファントムを使ってこの場から離れようとする。

 あの侵入者があの程度でリタイアする筈もなく、急がなければすぐに大和を狙ってくるかもしれないのだ。

 この場に残るメリットは、今の大和には存在しなかった。


「…旦那、旦那なのか!? 何やっているんだよ、あんたは…」

「!? 此処ハ…」


 しかしファントムに近付こうとした大和に土留が声を掛けたことで、その逃走予定は頓挫してしまう。

 咄嗟にファントムが大和の声を変えたことで声バレを回避しながら、大和は土留の存在に気付いたことでこの場の状況を理解することになる。

 今まで周囲に気を使う余裕が無かった大和は、この時になってようやく自分が白木たちとクィンビーが戦っていた戦場に戻ったことを理解したのだ。

 戦場ではリベリオン怪人のクィンビーがガーディアンの白木と土留を相手に激戦を繰り広げており、近くには先ほど大和が倒したステレオンが倒れている。

 そう…、欠番戦闘員に対して目的があるクィンビーが居る戦場に、大和は自分から戻ってきてしまった。









「よく解らないけど、チャーンス!! もう逃がさないわよ、そこの戦闘員!!」

「チィッ!!」


 千載一遇のチャンスを逃すまいと、クィンビーはファントムの周囲を塞ぐように大蜂を大量に放った。

 先ほどファントムを使って逃走した大和の行動を覚えていたクィンビーは、まずは足を潰す作戦を試みたようだ。

 幾らステルスで姿を消すことが出来ると言っても実際に居なくなる訳では無い、大蜂に囲まれて物理的に逃げ道を失ったファントムが自力で大和の元に辿り着くのは難しいだろう。

 基本的に殴る蹴るという戦闘方法しか無い大和にとって、多数の大蜂を一度に倒す手段は無い。

 全ての大蜂を排除してファントムを取り戻すには、少なくない時間が掛かってしまうだろう。

 仕方なく大和は80%開放の影響が出始めている体に鞭打って、両拳を上げてファイティングポーズを取りながらクィンビーに相対した


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