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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第3章 三代ラボ
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12. 侵入者(2)


「うわっ、漸く見えるようなったと思ったら、何でいきなりやられているのよ! この役立たず!!」

「クィンビー!!」


 ステレオンを倒してすぐに、どういう訳か先ほどまで戦闘に参加していなかった怪人クィンビーが欠番戦闘員の前に姿を見せた。

 この戦場には今回の奇襲作戦の指揮官として派遣されたリベリオン怪人、クィンビーとステレオンが存在していた。

 もし先ほどの戦いでステレオンがクィンビーと連携を取っていたら、欠番戦闘員たちの勝利は難しくなっていただろう。

 しかし実際にはクィンビーは戦いに加わることも無く、何故この女怪人は今頃になって現れたのだろうか。

 実は手柄を独り占めするためにステレオンは味方であるクィンビーをも巻き込んで、自身の能力である有色ガス状の物質を展開していたのだ。

 恐らくステレオンは自身の能力に絶対の自信を持っており、クィンビー抜きでも欠番戦闘員たちを排除できると確信していたのだろう。

 視界が効かない有色ガスの中ではクィンビーや眷属の大蜂たちは身動きを取れず、ステレオンの想定通りに女怪人は身動きを取れなくなっていた。

 そしてガスが晴れたことで視界を取り戻した女怪人は、自分を陥れた仲間の怪人の敗北を知ることになった。


「まぁ、邪魔者は居なくなったのは好都合ね。 そこの戦闘員、あんたに話が…」

「お前の相手は僕だぁぁぁっ!!」

「ちょっ、邪魔しないでよ!!」


 クィンビーは先ほどステレオンに邪魔にされた、欠番戦闘員へのインタビューを敢行しようとしていた。

 まさか今回の作戦中に欠番戦闘員が現れるとは思いも寄らなかったが、どちらにしろこの機会を逃す手は無い。

 クィンビーはこの欠番戦闘員とやらが、己の死を偽装して行方をくらました戦闘員9711号と何か関係しているのでは無いかと睨んでいた。

 この欠番戦闘員から情報を聞き出せば戦闘員9711号の、そして死亡したと思われているセブンの言う少女のことも解るかもしれない。

 クィンビーは真実を知るために欠番戦闘員へと近づこうとするが、しかし残念なことに邪魔者が存在した。

 黒羽の敵討ちを望んでいる白木が欠番戦闘員とクィンビーの間に割り込み、そのまま因縁の女怪人に向かって行ったのだ。






 白木とクィンビーの戦いが再び開始された直後、白木に加勢しようとしていた土留は横に居る欠番戦闘員が奇妙な行動を取っていることに気付く。

 白木たちの戦いを見る事無く、何故か明後日の方向に視線を向けていた欠番戦闘員はその場を微動だにしない。

 やがて欠番戦闘員は動き出す、しかしそれは目の前の戦場でなく、何故か先ほど土留たちを助けた彼のマシンの方に向かっていたのだ。

 

「…緊急事態ダ、悪イガ俺ハ此処デ失礼スル」

「なっ、ちょっと待てよ、旦那!! うわっ、本当に行っちまった…」

「えぇぇ、何で逃げるのよっ!!」


 ファントムに搭乗した欠番戦闘員はそのまま、捨て台詞を残して戦場を後にしてしまう。

 欠番戦闘員はマシンのステルス機能を使用してすぐに姿を消し去ってしまい、その姿は何処にも見えなくなってしまった。

 突然の逃走劇にこの戦場に居た敵味方に関わり無く、凍り付いたように先ほどまで欠番戦闘員が居た場所を見ていた。

 そして欠番戦闘員が離脱したことによって思惑が台無しになったクィンビーの、悲痛な叫びが辺りに響き渡った。













「…逃げる?」

「下手に動くのは下作、ここは篭城に徹した方がいい」

「やっぱりそうよねー。

 はぁ、何で面倒なことになったのかしら…」


 セブンと三代が居る施設に謎の侵入者が現れてから暫く経ったが、状況は悪化の一途を辿っていた。

 侵入者は行く手を阻む防壁を力任せに破り、異常を聞きつけて駆けつけたガーディアンの戦士たちを返り討ちにしながら徐々に施設内へ侵攻しているのだ。

 加えて端末の情報によれば謎の侵入者はどういう訳か、彼女たちが居る此処三代ラボまで真っ直ぐ進んできていた。

 この施設にはガーディアンの研究成果が溢れており、三代ラボ以外にも貴重な情報が沢山あるのだ。

 それにも関わらず侵入者は脇目を振らずに三代ラボへと向かっており、侵入者の目的が三代ラボにあることは明白だった。


「やっぱりあなたが目的じゃないの? あなた古巣からの追っ手とか…」

「相手が怪人なら身に覚えはあるが、見たところ相手はバトルスーツを着用している。

 それならば、そちらに関係した者と思うのが筋だが…」

「私だってあんなのは知らないわよ!?

 人に恨まれている覚えは一杯あるけど、流石にバトルスーツを着て殴りこみされる覚えは無いわ」


 施設の防壁やら何やらが破壊されていく物騒な音が段々と三代ラボに近づいており、たまに誰かの悲鳴らしき声までも聞こえる。

 セブンと三代はそんな危機が迫っている状況にも関わらず逃げる様子は無く、有ろうことか互いに侵入者の心当たりについて会話をしていた。

 自身の能力を首から上にに全振りしている彼女たちは、どちらも体力的に不安を抱えている。

 そのため下手にこの場から逃げ出しても追跡者にあっさりと追いつかれる危険性が高いので、彼女たちに逃走という選択肢は無いのだ。






「うわっ、来たわよ」

「解っている」


 三代ラボの入り口が力付くでこじあけられ、壊された扉を通って侵入者が室内に足を踏み入れた。

 白いマスクの白いバトルスーツを着た謎の侵入者は軽く室内を見回し、平然した表情で椅子に座っている二人の研究者を見付ける。

 侵入者はゆっくりと足を動かしながら、セブンと三代の前まで移動してきたた。


「リベリオンの元開発部主任であるセブン、ガーディアンのバトルスーツ研究の第一人者である三代光紅。 一緒に来て貰う」

「あら、両方に用があったんだ」

「私の素性を知っている? 一体何処から情報が…」


 侵入者は感情を感じさせない平坦な声で、三代とセブンを攫いに来たと宣言する。

 そのまま侵入者は先ほどの言葉通り、三代とセブンを連れて行くために彼女たちの方へ手を伸ばした。

 此処にはセブンたちを助ける者は何処にも居らず、彼女たちにはガーディアンの戦士たちを一掃した謎の侵入者に対抗する手段は無い。

 最早、侵入者に攫われる未来しか残されていない筈のセブンたちであるが、どういう訳か彼女たちの顔には恐怖の感情は無かった。

 確かに現時点ではこの場に侵入者に対抗する手段は無い、しかし未来の時点ならどうなるかは解らない。

 そして彼女たちは知っているのだ、彼女たちの窮地を救うためにこの場所に向かっている元戦闘員が居ることを…。

 







「…チョット待ッタァァァァ!!」

「何っ!?」


 侵入者の手がセブンに触れる寸前、背後からいきなりファントムに搭乗した大和が姿を現した。

 大和はマスクを着けているために表情は解らないが、声の感じからこちらの登場に驚いている様子の侵入者に向かって体当たりを敢行する。

 侵入者は咄嗟に右後方に飛退いて大和とファントムのチャージを回避するが、その代償として目的であるセブンたちから距離を開けてしまった。

 大和は先ほどまで侵入者が居た地点にファントムを停めて、セブンたちの盾になるように立ち塞がった。


「遅いわよ、戦闘員くん」」

「無茶言ワナイデ下サイ! コレデモ急イデ来タンデスカラネ!!」

「ご苦労様、助かった」


 セブンたちのピンチに颯爽と現れた大和だったが、彼がこの場に現れた理由は勿論ある。

 実は怪人ステレオンを倒した直後の大和の元に、セブンから三代ラボに現れた侵入者の情報が舞い込んできていたのだ。

 そしてセブンの危機を聞いた大和は、他の全てを無視して全力でこの場所に直行したのである。

 大和としては途中まで仲良く共闘していた白木たちを残して戦場を離れるのに抵抗があったが、色々と恩がある友人のセブンを見捨てる訳にもいかない。

 実際、後一歩でセブンが敵の手に掛かる所だったので、もしあの時に迷っていれば彼女がどうなっていたかは解らないだろう。











「サァ、俺ガ相手ダ!!」

「…邪魔をするな」


 大和は紙一重で間に合ったことに安堵しながら、セブンに手を掛けようとする不埒者を倒すために拳を上げて身構える。。

 一方、目的を邪魔された侵入者はマスクで感情が読めないものの、その右腕は内心を現すように苛立たしげに動かされていた。


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