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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第3章 三代ラボ
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11. 侵入者


 時間の針を欠番戦闘員…、大和がステレオンの元に辿り着く前まで戻す。

 ガーディアン東日本基地の至る所に怪人が入り込んでいる中で、重要施設ということで警戒が厳重になっている三代ラボは未だに平穏を保っている。

 そんな状況において三代ラボ内で待機している白衣を着た二人の女性は、基地内に設置された監視カメラを無断で盗み見をしていた。

 監視カメラを通して欠番戦闘員に扮する大和の戦いぶりを見ている二人の三代は、まるで主婦が昼下がりにテレビを見ているかのようだ。

 外では大和やガーディアンの戦士たちが必死に戦っているのに、暢気な研究者たちである。


「"次のブロックを右に…、その先に怪人が居るので注意"」

「"まだ指揮官の所に着かないんですか!? 結構キツイですよ、これ…"」

「"自業自得、ファントムを連れていれば手間を掛けずに指揮官の下に辿り着けた"」


 基地内の防衛機能やシステムの大半は、ステレオンの細工によって本来なら沈黙していた筈だった。

 情報網もずたぼろにされてしまい、ガーディアン東日本基地では情報伝達一つにも苦労する状況に陥っているのだ。

 しかし此処、三代ラボ内においては例外だった。

 何故ならステレオンが防衛機能のシステムを破壊するために使用したウイルスソフトが、よりによってセブンがリベリオン時代に開発した物をベースにした代物だったのだ。

 そのためセブンはすぐに監視カメラの復旧に成功して、いち早く監視カメラの映像を通して基地内の状況をいち早く把握することに成功する。

 指揮官の場所もこれによって把握できたセブンは、観戦の合い間に通信を通して大和に指揮官の居場所をナビしていた。






「やっぱりあの大和って子、いいわねー。 私もあれくらいの素材があれば色々出来るのに…」

「ガーディアンの技術力なら戦闘員程度の改造ならばどうにか出来る筈。

 そうなれば今の大和並みの戦力を量産すれば、リベリオンにも確実に勝つことが出来る筈だが…」

「駄目駄目、私の何回かそれとなく強請ってみたけど、そんな非人道的なことは上が許さないのよ。

 正義の味方って言うのも不便よねー」

「人道的な判断と言うものか。 しかしそのお題目を守るために、貴重な戦力を失っては意味が無いと思うが…」


 セブンは視線を監視カメラの映像を移すスクリーンから外し、背後の椅子に座る少女の姿を視界に入れる。

 そこにはつい先ほどまで大和と行動を共にしていた黒羽が、寝息を立てているでは無いか。

 大和によって黒羽の避難を任されたファントムは、安全な場所としてこの三代ラボまで邪魔な荷物を運んでいた。

 黒羽を三代ラボに預けたファントムは既に居ない、今頃は大和の居る場所に向かっている所だろう。

 技術的にコアに耐えうる体にすることが出来ながら、この黒羽という少女は人道的な理由のためにひ弱な生身の体のまま戦った。

 結果、彼女はリミッター解除の後遺症によって、再起不能となるほどのダメージを体に受けてしまったのだ。

 仮に黒羽に対してガーディアンが何らかの改造を施し、肉体的に強化をしていれば同じ結果にはならなかっただろう。


「ガーディアンとリベリオンの戦いは長年に渡って続けられており、未だに終わる気配は無い。

 しかし両組織の戦力が未だに拮抗している原因は、技術的なものでなく心情的なものに由来している。

 リベリオンは下等な人間が使用するバトルスーツ、コアの力を使うことを拒み…」

「一方のガーディアンは、リベリオンと同じように人間に改造を施す行為を行うことが出来ないか…

 研究者としては、研究方法に縛りを入れられているのは不満よねー」

「やはり今の状況はおかしい…、偶然にしては余りに出来すぎている…」


 仮に両組織が心情的な拘りを捨てて、新たな力を手にすれば10年以上も続いているこの長い戦いに終止符が打たれることは間違いない。

 しかし未だにどちらの組織もパンドラの箱を開けようとせずに、拮抗状態が続いているのが現状だ。

 セブンが良く知るリベリオンでは、人間を見下す怪人の驕りという下らない理由によってコアの使用を禁じられていた。

 三代の話を聞く限り、ガーディアンの方でも人間の体をコアに適する体に改造を行わない要因は単なる人道的な理由でしか無いようである。

 セブンは両組織が目の前の勝利を捨ててまで、頑なに相手組織の技術の利用を拒んでいる現状に不気味なものを感じていた。











「っ!? この警告音は…」

「あちゃー、ついに此処にも怪人が現れた見たいね…」


 突如、セブンたちが居る三代ラボの中に甲高い警告音が鳴り響く。

 それと同時に三代ラボが激しく揺れ、何かが破壊される音が聞こえてきたでは無いか。

 セブンは端末を操作して、三代ラボが存在するこの施設内の現在の情報を取得した。

 そしてセブンたちは、何十にも張られた防壁を破壊して施設内への浸入を試みる怪人の存在を知る。


「侵入者が防壁を次々に破壊している。 この施設が丸裸になるのは時間の問題」

「うわっ、派手にやってるわね…。

 一応此処は重要施設ってことになっているから、頑丈に作られている筈なのに…」


 三代ラボがあるこの施設には、ガーディアンの宝であるバトルスーツやコアの貴重な情報が存在していた。

 そのため施設には頑丈な防壁が設置されており、緊急時にはその防壁が張られて外部からの浸入を拒むのだ。

 対怪人用に作られた防壁は非常に頑丈であり、基本的にこれらの防壁は緊急事態が収まるまで決して開かれることは無い。

 もっとも先ほどセブンが黒羽を中に入れるために、周りに気付かれないように一時的に防壁を開放した瞬間もあったが…。






「相手は何体?」

「報告は一体のみ、今警備の者たちが向かった」

「怪人一体程度なら残った連中で何とかするでしょう。 それなら安心ね…」


 殆どのガーディアンの戦士たちが基地防衛のために最前線へと向かったが、全ての戦士たちがそうした訳では無い。

 一部の戦士たちは基地内の重要施設を警護するために残っており、この施設にも数人の戦士たちが待機していた。

 相手は怪人が一体、流石にガーディアンの戦士たちが総出で掛かれば問題なく排除できるだろう。

 報告を聞いた三代は、安堵の息を漏らした。


「…残念ながらガーディアンの戦士は全滅した。 侵入者はもうすぐ、全ての防壁を破壊してこの施設に侵入してくる」

「嘘っ!? 一体どんな奴が…」

「今、監視カメラの映像を写す。 こ、これは…」


 しかし三代の予想に反して、防衛に残っていたガーディアン戦士たちは瞬く間に敗北してしまう。

 障害が無くなった侵入者は再び防壁の破壊を再開し、この施設が丸裸にされるのは時間の問題だろう。

 セブンは端末を操作して施設に設置された監視カメラを操作し、この想定外の侵入者の姿を捉えることに成功する。

 そしてセブンは侵入者の姿…、怪人とは明らかに異なる侵入者の姿を目撃することになった。

 そこには全身を覆うスーツ型バトルスーツを纏い、マスクで顔を隠した謎の人物が居たのだ。

 大和が使用しているバトルスーツと似た形状であるが、謎の人物のスーツは白系統の配色が施されている。

 監視カメラの動きに気付いたのか、端末画面の中に写るバトルスーツを纏った謎の人物がこちらに顔を向けた。

 何故、明らかにリベリオンの怪人とは異なる、バトルスーツを使う者がガーディアンの施設を襲っているのか。

 その真意はカメラを通して映し出された、目元以外に凹凸の無い奇妙なマスクで顔を覆った謎の侵入者から読み取ることは出来なかった。


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