8. 共闘
ガーディアン東日本基地で繰り広げられている、正義と悪の両組織の戦いは熾烈を極めた。
少し前に拠点をガーディアンに滅ぼされたリベリオンは、その意趣返しとばかりに派手にに暴れまわっている。
不意を突かれたことと、ステレオンの事前工作によって基地機能の大半を麻痺させられた事によって戦況はガーディアンの劣勢だった。
基地に所属しているほぼ全てのガーディアンの戦士が防衛に出たが、勢いに乗ったリベリオンに対抗しきれていないのが現状である。
そして戦場の一角では蜥蜴型の怪人と、ニ振りの剣を持つバトルスーツを装着した戦士が矛先を交えていた。
「ふははははっ、話にならんわ!!」
「つ、強い…」
蜥蜴型怪人リザドは、地面に倒れ臥すガーディアンの戦士の白木の無様な姿を見て勝ち誇った。
白木は先の模擬戦での疲労があったとは言え、簡単に自分を一蹴したリザドの実力に驚いていた。
威風堂々とするリザドの周りには、白木の同僚の戦士たちが転がっていた。
白木たちがこの場に現れるまでに、既に何人ものガーディアンの戦士たちがこの怪人に倒されているのだ。
「何ちんたらやっているんだ、白木!」
「土留!?」
「ふんっ、新手か…、面白い!!」
白木の危機を察知した土留は、次は自分が相手とばかりにリザドへと迫っていった。
リザドは新たな戦士の登場に対して、不敵な笑みを浮かべながら自身の持つ特殊能力を発動する。
次の瞬間、リザドの全身の周囲の景色と同化してしまい、蜥蜴型怪人の異形の姿は消えてしまう。
「な、なんだ!?」
「気をつけろ、土留! 奴は姿を消したまま、こちらを襲ってくるぞ!!」
つい先ほど今の土留と同じ状況に陥り、姿を消したリザドに何も出来ずにやられてしまった白木は警告を促す。
土留は白木の忠告に素直に耳を傾けたのか、辺りを警戒しながら自身の防御を固める体制を取った。
「ぐっ、後ろか!!」
「遅い遅い!! ガーディアンの戦士はノロマだな」
土留の行為を嘲笑うかのようにリザドは死角となる背後から攻撃を仕掛け、土留はまともにその一撃を受けてしまう。
しかし重鎧型の厚い装甲が功を奏した土留は、怪人のパワーを存分に発揮したリザドの拳を受けきることに成功した。
そのまま土留は先ほど自分が攻撃を受けた方向へと突進するが、既にリザドは他の場所に移動してしまっていた。
何も無い空間に飛び掛った土留の行動に、リザドは姿を消したまま相手を揶揄する言葉を投げかける。
何時も欠番戦闘員に瞬殺されているリザドであるが、その実力は侮れるものでは無い。
この蜥蜴型怪人が持つ特殊能力の数々は全て、趣味では無いとは言え仕事は抜かり無く行うセブンの手によって作られた物なのだ。
その能力はどれも強力であり、今のように経験の浅いガーディンの戦士を一蹴することだって十分に可能なのである。
「ふんっ、所詮人間などはこの程度か…。
やはり、このリザド様と渡り合える敵は、我がライバル位しか居ないな!!」
闘争の場で自分の力を示すことを至上の喜びとするリザドは、ガーディアンの戦士二人を手玉に取っている今の戦果にそれなりに満足をしていた。
しかしあくまでそれなりである、リザドに取っては人間相手に勝つことは怪人として当然なのだ。
リザドの全性能を発揮するためにはそれ相応の相手が居る、擬態能力だけで劣勢となる白木たちが相手では物足り無いのである。
やはり自分が最大の力を出せる相手は、リザドが勝手にライバルと呼んでいるあの欠番戦闘員が相手で無ければ…。
「…ナラ俺ガ相手ヲシテヤルヨ」
「!? お前は…、ぐはぁぁぁぁっ!!」
リザドの願いが天に届いたのか、何時の間にか怪人の背後に彼が求めていたライバルが姿を見せる。
所々に炎の文様をあしらった黒いスーツ型のバトルスーツを纏い、顔をフルフェイスのマスクで隠した謎の人物、巷で欠番戦闘員と呼ばれている者のがそこに居たのだ。
欠番戦闘員は白木たちと戦うある意味で因縁深い相手であるリザドを発見し、怪人が勝ち誇っている隙にさりげなく背後から接近することに成功していた。
手を伸ばせば届く近接戦闘の距離、この場所に近接特化型の欠番戦闘員に近づかれた時点でリザドの敗北は決定的だった。
この蜥蜴型怪人のしぶとさを知っている欠番戦闘員は躊躇い無く、こちらに振り向いた時に見せた顔面に右ストレートをぶちこむ。
スーツの特殊能力である炎を纏った欠番戦闘員の拳は、リザドの顔の造形を変形させるほどの凄まじい破壊力を見せた。
こうしてリザドはまたしても、自称ライバルである欠番戦闘員に黒星を付けられるのだった。
「か、怪人を一撃で…」
「炎の能力…?
いや、それよりお前は欠番戦闘員!? 何故此処に…」
これまで幾度も無く怪人と戦ってきた土留は、人間を超えた性能を持つ怪人の頑丈さを身を持って知っていた。
その怪人をたった一発のパンチで倒した謎の戦士の異常さに、土留は戦慄を覚えていた。
一方、白木はかつて自分が保持していたバトルスーツを同じ炎の能力を持つ、欠番戦闘員のバトルスーツに既知の感覚を覚えていた。
しかし、すぐに遠距離型であるかつての自分のスーツと、今の欠番戦闘員が使う近接型のスーツでは全く性質が異なると断じて興味を欠番戦闘員そのものに向ける。
そして欠番戦闘員との面識があった白木は、自分たちが苦戦していた怪人を一蹴した謎の存在に対して警戒心を露にした。
欠番戦闘員、最近になって基地周辺の地域に現れた謎の人物の通称である。
それはガーディアンしか保持していない筈のバトルスーツをどういう訳か保持しており、常にリベリオンの戦闘員服を着用して行動をしていた。
欠番戦闘員の素性は独所の情報網を持つガーディアンでさえも掴めておらず、解っているのはリベリオンと敵対しているという事だけである。
これまでにリベリオンの怪人との戦闘報告が何度も上がっており、先の△△の事件では四体もの怪人を倒したという脅威の戦闘能力を見せている。
余りに人間離れした戦果にガーディアン内部でもその存在を疑問視されていたが、リザドを一撃で葬った所を見る限り、その実力は本物だろう。
「俺ハコノ馬鹿騒ギヲ止メニキタダケダ」
「…僕たちを助けてくれるのか?」
「ガーディアンノ味方ニナルツモリハナイ、コチラニモ事情ガアッテナ…」
恐らく機械か何かで声を変えているらしく、欠番戦闘員の声は高音で聞き辛いものだった。
それは白木や土留が戦場でよく耳にするリベリオン戦闘員の奇声とよく似ており、戦闘員が言葉を発するならばこのような喋り方になるに違いない。
欠番戦闘員の名前の由来ともなっている、あの戦闘員番号を消した戦闘員服と言い、この謎の人物はリベリオンの戦闘員と何か関わりがあるのだろうか。
兎も角、欠番戦闘員の目的は白木たちと同じ、この基地に侵入したリベリオンの排除であるようだ。
この話が本当ならば、少なくともこの男は白木たちの敵と言うことにはならないだろう。
「まぁ、いいじゃねぇかよ、白木。 今は猫の手も借りたいくらいなんだぜ。
旦那、どうせ敵が同じなんだし、今日の所は共闘と行かないか?」
「ナニ?」
「土留、しかしガーディアンの戦士としてこんな素性の解らない奴の手を借りるのは…」
「まぁ俺の話を聞け…」
土留は欠番戦闘員との共闘に乗り気のようで、難色を示す白木に対して説得に掛かった。
白木を無理やり連れて欠番戦闘員から少し離れた場所に移動した土留は、小声で共闘の裏に隠された意図を伝える。
「いいか、こいつとの共闘はあくまでリベリオンの野郎を倒すまでだ。
そしてこの騒ぎが収まったら、次はこいつを袋にすれば解決だろう?」
「お前…!?」
「どういう思惑か知らないが、こいつは俺たちのテリトリーに無断で入ったんだ。
ホストとしては盛大に歓迎してやらないとな…」
ガーディアンとしては欠番戦闘員などと言う不確定要素を野放しにするのは沽券に関わるため、出来るだけ早めに対処をしなければならない。
そして目の上のタンコブである存在は、愚かなことにガーディアンの巣に自分から飛び込んでくれた。
幾ら欠番戦闘員の実力が凄くても、基地内のガーディアンの戦士たちを全て相手にするのは不可能である。
噂のステルス機能を持ったマシンについても、基地内を全て封鎖して袋の鼠にすれば対処できる筈だ。
このチャンスを逃す手は無いと、土留は地の利を活かした捕獲作戦を視野に入れた仮の共闘を持ちかけようと言うのだ。
「……解った」
「よしっ、旦那、話した付いた。 俺たちと一緒に行こうぜ!!」
「…イイダロウ」
白木としては自分たちに協力しようとしてくれる欠番戦闘員を嵌める行為は、心情的にやりたくはなかっただろう。
しかしガーディアンの人間としては、欠番戦闘員を捕獲してその素性を確かめる必要があるのは十分に理解している。
組織に属する人間としての行動を優先した白木は、土留の作戦に乗ることを決意した。
こうして裏の事情が有るにしろ、ガーディアンの戦士たちと謎の欠番戦闘員との共闘が実現することになった。




