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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第3章 三代ラボ
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6. リベリオンの逆襲


「ハァ、ハァ…」


 全ての力を出し尽くした白木は、訓練室の床の上に大の字になって倒れていた。

 最早、白木には指一本動かす力も無い様で、心臓が壊れそうなほどの鼓動が激しく耳を打っている。

 一方、最後の連戟を受けた土留は、白木と同じように地面に転がっていた。

 土留は意識を刈り取られてしまったらしく、こちらは身動き一つせずに倒れている。


「…………くそっ、ノックアウトなんて久しぶりだな」


 しかし重装甲のスーツの恩恵か、以外にダメージが少なかった土留はすぐに意識を取り戻すことになる。

 目覚めた土留はその場から立ち上がり、しっかりとした足取りで倒れた白木の傍まで近づく。

 未だに起き上がれない白木を見下ろす土留、今の状況だけ見れば勝者と敗者の立場が逆転しているように見えた。


「ふんっ、少しはマシな顔になったじゃ無いか…」

「土留…?」


 土留は足元でまだ息を荒くしている白木を暫く眺めた後、徐に白木の方に手を差し出した。

 一瞬、白木は土留の行動に怪訝な表情を見せたが、素直に伸ばされた手を掴む。

 そして白木は土留に引き起こされて起き上がり、土留に肩を借りながら訓練室の出口へと向かった。


「これで少しは気が晴れただろう? 全く、情けない同期を持つと苦労するぜ…」

「じゃあ、お前は僕のために…」

「当たり前だ! 俺が本気を出せば、お前なんて一瞬で片を付けてやるぜ…」


 土留の言うとおり最近の白木は何処か暗い雰囲気を持っていた、黒羽の件をまだ引き摺っているのだろう。

 外向きの広報活動などでは内心を上手く隠し、爽やかな営業スマイルと言う仮面を付けて誤魔化すことは出来ていた。

 しかし短くない付き合いである土留には、一目で白木の様子がおかしい事に気付くことが出来たのだ。

 暗に白木のガス抜きに付き合ったと言う土留に、白木は正直驚きを隠せなかった。

 実際、先ほどまでの土留への怒りもあって全力を出し尽くした今の状況は、胸のつっかえが取れたようなスッキリした感じを覚えている。

 何時も自分に対して悪態ばかり付いていた筈の土留の以外な優しさに、白木は感謝の念を禁じえなかった。







「絶対、本気出してましたよね…。 あの土留って人…。

 そもそもこの模擬戦も、黒羽さんのアイディアで行った筈ですし…」

「ああ言う奴なんですよ、素直に自分の負けを認められないと言うか…」


 模擬戦を終えた白木たちを迎えるために観戦室から訓練室へと向かった大和たちの耳に、戦いを終えた戦士たちの会話が聞こえてきていた。

 土留の白々しい演技は人のいい白木には通じたようだが、外野で見ていた黒羽や大和にはバレバレだった。

 確かに土留は事前に黒羽のことを知っていたことも有り、白木が不安定な状態であることを一目で見抜いていた。

 しかし性格の悪い土留は白木を助けようと思う所か、逆に此処で止めを刺そうと考えてあのような態度を取ったのだ。

 その結果、憎き同期に敗北してしまったのだから、土留の自業自得と言う他は無いだろう。


「いいか、これで俺に勝ったと思うなよ!

 今回の模擬戦はお前のために手加減してやった結果なんだからな!!」


 自尊心の高い土留は、自分の挑発が切欠で行われたこの模擬戦の敗北が許せなかった。

 そのため土留は己のプライドを守るために、今回の勝敗は自分の実力では無いと強く強調するのだった。

 土留と言う男は何処まで自分本位な男であった、よくこれで正義の味方を名乗る組織に勤めているものである。






「…と、兎に角、白木さんが勝ちましたね!

 やっぱりガーディアンの人たちは凄いです、これならリベリオンも楽勝ですよ!!」

「ふふふ、期待していて下さい。

 近いうちに私たちはリベリオンを一掃して見せますよ!」


 大和は模擬戦の感想として、お世辞半分、本音半分の言葉を黒羽に送った。

 恐らく変身した自分が戦えば勝てると思うが、出来れば戦いたくな相手であると言うのが大和の正直な感想である。

 黒羽は大和のおべっかに悪い気がしなかったのか、彼女は自身有りげにガーディアンの勝利宣言を返した。

 この勝利宣言には誇張された部分もあるが、実は概ね事実に沿った話である。

 今まではガーディアンとリベリオンの戦力は拮抗しており、何時果てることの無い戦いが続いていた。

 しかし最近になってその戦力図は大きく変化したのだ、大和の運命を大きく揺さぶったリベリオンの基地侵攻作戦の成功によって…。

 大規模な拠点を失ったリベリオンは全盛期に比べて、明らかに勢いを弱めている。

 加えてリベリオンが戦力回復を図るために行った△△での大規模作戦も頓挫しており、リベリオンとガーディンの戦力さは広がる一方なのだ。

 ガーディアンの立場としては欠番戦闘員などと呼ばれる謎の第三勢力の存在が気にはなるが、現状のまま行けば遠くない将来にガーディアンが勝利する結果は見えていた。

 勿論、リベリオンこのままが動かなった場合の話になるが…。










 ガーディアン東日本基地の重要施設の一つ、武器倉庫の近くにガーディアンの制服を着た男が居た。

 リベリオンに唯一対抗できるガーディアンと言う組織は、その事実を盾に日本国内で超法規的な活動を黙認されている。

 この武器倉庫もその一つ、リベリオンに対抗するという名目で本来なら所持が許されていない危険物が大量に保管されていた。

 勿論、ガーディアンもその危険性を重要視しており、この施設は基地内で特に警備が厳重な場所である。

 しかしこの場に居る謎の男に取っては、あの程度の障害などは意味の無い物だった。


「くっくっく、後は此処だけか…」


 制服を着た男の体が突然ぶれ始め、一瞬の内に異形の怪人へと姿を変貌させた。

 緑色の皮膚に黄色のギョロ目が特徴的なカメレオンをベースにした新造怪人、ステレオンが偽装を解いたのだ。

 この怪人に課せられた使命はただ一つ、ガーディアン東日本基地の無効化である。

 今日のために隠密行動に特化して作られたステレオンは、ガーディアンの厳重な警備を難なく潜り抜けて基地内への浸入を果たしていた。


「さぁ、デカイ花火を上げてやろう!!」


 既にステレオンは誰に気付かれること無く、基地内の防衛機能の大半を無効かに成功していた。

 後は基地内を混乱させるために、派手に破壊工作をしてやればいい。

 武器倉庫に侵入したステレオンは倉庫内の爆発物を使い、何の躊躇いも無く基地内の各所を同時に爆発させた。

 まるで先のリベリオン基地の侵攻作戦をそのままなぞったような、リベリオンからの意趣返しとも言える行動である。

 こうしてガーディアンの驕りを吹き飛ばす爆発と共に、リベリオンによるガーディアン東日本基地侵攻作戦が開始された。










「そうです、そこを右に…」

「くっそぉぉっ、なんでこんな事に…」


 ガーディアン東日本基地侵攻作戦が始った瞬間、基地内は混乱の坩堝に落とされていた。

 基地内の重要施設が破壊されると同時に、防衛機能が無効かされた隙を付いてリベリオンの怪人たちが基地内に雪崩れ込んだのだ。

 訓練室でリベリオン侵攻の一方を受けた白木と土留は、模擬戦で疲労する体に鞭打って基地の防衛へと向かった。

 残った大和は黒羽の案内で、基地内に設置されているシェルターを目指していた。

 万が一に備えて基地内には非戦闘員が避難するための頑丈なシェルターが設置されており、今はまさにその万が一が起こっているのだ。


「すいません、重くないですか?」

「ぜ、全然平気ですよ!!」


 大和は首元で感じる黒羽の吐息や背中にあたる柔らかな感触に、こんな状況では場違いな気恥ずかしい感覚を覚えていた。

 杖無しでの歩行が難しい黒羽を助けるため、今の大和は半ば強引に黒羽を背負っている状況なのだ。

 戦闘員の力ならば女性一人を軽々と運ぶことが出来るため、大和は黒羽という荷物を持ちながら軽快なペースで基地内を移動していた。


「"…通信状態は良好か、大和?"」

「"は、博士!?"」

「"大和、あなたに頼みがある…"」


 そんな逃走中の折、大和の頭の中から突然セブンの声が響いてきた。

 大和に内臓されている通信機を通して、セブンが大和に対して連絡を試みたのだ。

 無事に大和との通信網を確保したセブンは、友人である元戦闘員にある頼みごとをするのだった。


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