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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第3章 三代ラボ
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5. 白木の思い

 軽鎧タイプのバトルスーツを身に纏った白木は、機動力と言う優位性を活かして果敢に土留へと仕掛ける。

 バトルスーツによって強化されたスピードは凄まじく、白木は縦横無尽に訓練場を駆け抜けた。

 一方の土留は全身を厚い装甲で固めた重鎧タイプのバトルスーツの特色を活かし、その場を微動だにしないまま白木の刃を全て捌きっていた。

 白木はまるで城砦のような土留の防御を崩すことが出来ず、苛立ちを打ち消すように闇雲に両の刃を振るい続けた。


「どうした、優等生! やっぱり保護者が居なければ、何も出来ないのか!!」

「舐めるな!!」


 東日本ガーディアン基地の訓練場で若きガーディアンの戦士、白木と土留が激しく矛を交えている。

 ガーディアンの誇るバトルスーツを使用した模擬戦の迫力は、一言で表すなら壮絶なものになっていた

 普通の人間ならば分厚い特殊ガラスで遮られた観戦室越しでも、その光景に畏怖の感情を持つに違いないだろう。

 しかし大和は残念ながら普通の人間では無い、とある元悪の科学者のお陰で色々と修羅場を潜らされた元戦闘員なのである。

 大和はある種の職業病かのように、冷静な目で両者の力量を分析していた。


「…このままだと、白木さんが負けそうですね。 何処か動きがぎこちない」

「ほぅ…」


 白木の熱の篭った攻撃は、残念ながら土留相手に空回り続けている。

 土留の防御が上手いと言う要素もあるが、一番の原因は白木の拙い動きにあるだろう。

 大和は以前に白木の使用しているバトルスーツのかつての持ち主、黒羽の戦いぶりを直に見ている。

 その時の記憶と比較してみると、白木の動きは黒羽のそれとは明らかに劣っているのだ。

 白木は以前は遠距離攻撃を主体としてたスーツを使用していた、それを大和に奪われたので代わりに再起不能になった黒羽の物を使うようになったのは解る。

 しかし、いきなり遠距離型から近距離型のそれに切り替えるのは無理があったのか、白木はまだ今のバトルスーツに習熟出来ていないようなのだ。






「…肝が据わってますね、今日始めてバトルスーツの模擬戦を観戦したんですよね?

 普通はバトルスーツの動きに圧倒されて、勝敗にまでは意識が及ばないんですが…」

「へっ…?」


 一般的にバトルスーツという存在はガーディアンの象徴的な存在である。

 バトルスーツはまさに正義の味方が身に纏う変身アイテムであり、その手の物が好きな子供から大人に取っては垂涎の代物なのだ。

 しかしガーディアンに取って、バトルスーツの技術を秘中の秘である。

 普通の市民にはバトルスーツの情報が降りる事は殆ど無く、偶に広報活動のために僅かな露出がある程度なのだ。

 そのため大和たちの目の前で行われているバトルスーツを使用した模擬戦は、ガーディアンのファンに取っては金を払ってでも見たい貴重な物なのである。

 わざわざガーディアン基地の見学に来た大和は、白木から見たら少なからずガーディアンという組織に思い入れのある人間と思われても仕方ない。

 それ故に白木は土留とやり取りに巻き込んでしまった大和に対して、その侘びとしてこの観戦室へと特別に招いたのだ。

 だが、大和は白木の予想に反して、余りバトルスーツの模擬戦に心を動かしている様子が無い。

 黒羽は普段から基地の回りで目にする観光客のように興奮する素振りも見せず、落ち着いた様子で模擬戦を見詰める大和に違和感を覚えたらしい。


「いや、そんなこと無いですよ!? こんな凄い物を見せて貰って興奮しないわけ無いですって!!

 ガーディアンは凄いなー、ガンバレー、白木さん!!」

「……」

「や、やっぱりあんな風に戦うから、ガーディアンの人はよく怪我とかするんですか?

 黒羽さんの体も…」


 黒羽の言葉で我に返った大和は、慌ててわざとらしい反応を見せ始めた。

 しかし取って付けたような行動は逆効果らしく、黒羽は疑わしい者を見るかのような視線を大和に向ける。

 兎も角、今の話の流れは危険と考えた大和は、無理やり話を帰るために自分から別の地雷原に突っ込んでしまう。

 会った時から気になっていた、杖に頼って歩く黒羽の体について尋ねてしまったのだ。


「ああ、これですか…。 やはり、気になりますか?」

「あっ、すいません、無神経なことを聞いてしまって…」

「いえ、別に大丈夫です。

 そうですね、丹羽さんの予想通りこれはリベリオンとの戦闘が原因でやってしまったんです。

 少し無茶をしてしまいまして…」

「無茶…、ですか…。」


 流石に見ず知らずの人間に詳細を話す気は無いのか、黒羽は言葉を濁しながらそっと杖に手を触れる

 しかし大和は、黒羽の体がそうなった詳細な原因について心当たりがあった。

 リミッター解除、恐らく彼女は先のクィンビーとの戦いでの後遺症に苦しんでいるに違いない。

 セブンから何度も聞かされた事だが、普通の人間に取ってバトルスーツのリミッター解除は自殺行為と言ってもいい。

 よくて再起不能、運が悪ければショック死した例も過去の記録に有るらしいのだ。

 大和は美しい顔を曇らせている黒羽の様子を見て、間接的な原因を作った元戦闘員としての罪悪感を覚えていた。











 大和と黒羽が話している間にも訓練室での戦いは進行しており、戦況は明らかに土留の方に傾いていた。

 幾ら時間を掛けても、白木は土留の鉄壁の防御を崩すことが出来なかった。

 逆に土留の方は白木の攻撃に慣れてきたのか、合い間にカウンターの拳を放るようになってしまう。

 白木は攻撃するたびに土留から反撃を喰らい、訓練場の床へと無様に倒れてしまった。


「ははははっ、そんな物か、優等生!!」

「くぅっ!?」


 土留は地面に倒れ臥す白木の姿を見て、胸の溜飲が下がる思いだった。

 白木と土留、この二人はほぼ同じ時期にガーティアンの戦士としてスカウトされた云わば同期である。

 目立ちたがりの性格である土留は、自分がガーディアンの戦士と言う特別な存在になったことを心から喜んだ。

 そんな土留が自分以上に目立つ同期、ガーディアンの看板としての地位を築いてる白木の存在を快く思う筈が無い。

 土留は事あるごとに白木に突っかってきたが、今までは白木が出来た人間であったこともあって二人の正面衝突は無かった。

 しかし今日、土留は今の白木に取っての禁句と言える黒羽の話題を出したことで、初めて怨敵を思う存分に倒せる機会を得たのだ。

 土留は白木に対して勝ち誇った笑みを見せる、しかし絶対絶命の状況の中で白木はまだ諦めていなかった…






「…凄いですね、白木さん」

「白木はね、私の体がこうなってしまったことを気にしているんです。

 それで私の分まで頑張ろうと、あんなに必死になって…」


 既に戦況の差は歴然となり、白木は半ばやられにでも行くかのように土留へ無謀な突撃を繰り返して返り討ちにあった。

 しかし白木は折れること無く、何度でも何度でも土留へと向かっていく。

 その様は鬼気迫るものがあり、最初に感じた白木の爽やかなイメージとは似つかわしくない泥臭い戦いだった。

 例え模擬戦であろうと黒羽のバトルスーツを纏っている白木は、決して負ける訳にいかないのだ。

 命懸けで自分を救おうとする黒羽を見ているしか出来なかった過去の自分、それと決別するために白木は此処で倒れることは出来ない。

 幾ら倒されても白木は不屈の闘士で蘇るその姿は、まさに人々が思い描く正義の味方そのものであった。


「し、しつこいぞ、優等生!?」

「まだまだぁぁぁぁっ!!」


 正直に言って戦闘力だけ見ればバトルスーツを着た大和ならば、白木と土留が二人掛りで来ても勝てる自信はあった。

 しかし実際に戦ったら自分は負けるかもしれない、それだけの迫力を白木は大和に見せ付けていた。

 黒羽のために戦うと言う強い気持ち、リベリオンの怪人には無いそれが白木にここまでの力を持たせたのだろう。


「うぉぉぉぉっ!!」

「しまっ!?」


 やがて白木の気迫が硬い城門を打ち破り、一歩反応が遅かった土留は初めて彼の刃をまともに受けてしまう。

 この隙を逃したら勝機は無い、白木は勢いのまま最後の力を振り絞って両の剣で連戟を放つ。

 その連続攻撃は大和の目から見ても、かつての黒羽のものと同等のレベルのものだった。

 そして既に白木から一撃を貰って体制が崩れている土留には、それを耐え切ることは不可能である。

 こうして最後の最後で一瞬だけ黒羽の領域まで達した白木の粘り勝ちと言う形で、訓練室での模擬戦は幕を閉じるのだった。


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