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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第1章 リベリオン
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3. ガーディアン

 ノックを試みたのだが暫く待っても反応が返ってこないため、仕方なく戦闘員は無断で扉を開いて部屋の中に入ることにした。

 その部屋の中には10人ほどの白衣を着た人間が見るからに高価そうな機械を弄ったり、PCへ一心不乱に何かを打ち込んでいた。

 白衣の集団は全員30台から40台くらいの男性ばかりで、全員が青白い表情をした不健康そうな見た目であった。

 

「…ん、なんだ、戦闘員。

 ここはお前のような奴が入っていい場所じゃ無いぞ」


 暫くして漸く白衣の男たちの一人が部屋に入ってきた戦闘員に気付き、戦闘員の勝手な入室を咎めた。


「イィィ…」

「ん、これはあの女の…」


 覆面に9711とナンバリングがされた戦闘員は、恐る恐る手に持っていた長方形の箱を差し出す。

 白衣の男は目の前に差し出された物に心当たりがあったのか、何やら嫌そうな顔をしてそれを睨みつけた。

 戦闘員と白衣の男のやり取りに気付いた他の面々も、作業を止めて二人のやり取りを見ているようだ。


「ちっ、ほら、確かに受け取ったぞ!

 用が済んだらさっさと帰れよ!!」


 やがて引っ手繰るように戦闘員が差し出した物を受け取り、白衣の男はそのまま戦闘員を部屋から追い出そうとする。

 乱暴に背を押されて、戦闘員はこけそうになりながら慌てて部屋から退出していった。






 9711号はセブンから頼まれたお使い、ある資料を他の研究室に運ぶ仕事を無事終えて帰路に付いていた。

 セブンは組織内で有る程度高い地位に居るらしく、他の研究者たちとは離れて一人で仕事をしている。

 しかし他の研究者とのやり取りが全く無い訳で無いため、その時々に情報共有などを行っていた。

 その一環として9711号は初めてセブン以外の研究者たちが働くスペースに行ったのだが、どうにも9711号の存在は余り他の研究者たちから歓迎されなかったようだ。

 内心で研究者たちの態度に不満を思いつつ、戦闘員に愛想よくする人間などは居ないと自己完結した9711号はセブンの研究室に戻るためリベリオン日本支部の通路を歩いていた。


「ちょっと、そこの戦闘員!!」

「ィ?」


 セブンの部屋へ戻る道すがら、9711号は後ろから突然呼び止められる。

 驚いた9971号が振り向くと、そこには他の戦闘員たちを後ろに引き連れた女怪人が立っているでは無いか。

 全身が黄色と黒の斑模様が浮かび、背中に羽らしきものが折り畳まれ、その瞳には昆虫特有の複眼が備わっている。

 恐らく蜂をベースにしたと思われる女怪人は、苛立たしげに9711号の方へ詰め寄ってきた。


「何、勝手に持ち場を離れているのよ!

 これから重要な作戦があるのよ、ちゃんと整列していなさい!!」

「ィィッ!?」


 明らかに苛立っている風の女怪人は9711号に、他の戦闘員たちが居る場所に戻るように命じる。

 どうやら女怪人は9711号のことを、作戦とやらのために連れて来た戦闘員たちの一部と思っているらしい。

 戦闘員は統一された黒ずくめの服装に覆面という、見分けがつき難い格好をしている。

 一応、区別が付くよう覆面にナンバリングされているが、戦闘員を消耗品としか思っていない怪人がわざわざ番号を覚えている訳も無いのだろう。


「イィィ! ィィィッ!!」


 誤解を解こうにも声を奪われている戦闘員に事情を説明する術も無く、残念ながらセブンとの筆談用のノートも今は持ち合わせていない

 9711号は最後の手段として、必死に身振り手振りで自分は作戦に参加する戦闘員では無いとアピールした。


「何変な踊りをしているのよ、遊んでないで早く来なさい!!

 それとも…、今ここで死にたいの?」


 奮闘空しく女怪人に9711号の意図は全く通じず、業を煮やした女怪人はおもむろに手を上に掲げる。

 すると女怪人の手の周りに数匹の蜂が飛び始めた、それもただの蜂ではない、通常の物と比べて優に10倍くらいの大きさがある巨大な蜂だ。

 恐らくこれが女怪人の能力なのだろう、もし此処で9711号が逆らったら女怪人は躊躇うことなく9711号に蜂をけしかけるに違いない。

 役に立たないなら簡単に処分される、戦闘員はその程度の価値しか無いのだ。


「イィィッ…」

「よーし、行くわよ!

 今日こそガーディアンの連中に一泡吹かせてやるわ!!」


 これ以上の抵抗は意味が無いと察した9711号は観念して、悲観の表情を覆面で隠しながら他の戦闘員たちの後ろまで移動した。

 9711号が合流したことに満足したらしい女怪人は、戦闘員たちの前で気合を入れた。







 リベリオン日本支部の玄関と言うべき場所には、様々な種類の車両が置かれていた。

 普通の一般車やバイク、大型の車両だけなら他でも見られる光景だろうが、その中に戦車なんて物が混ざっている所が悪の組織たる所以だろう。

 そこに意気揚々といった足取りで移動用の車両に乗り込む女怪人、統一された足取りでそれに続く戦闘員たち、そして最後に憂鬱そうな足取りでノロノロと車両に乗り込み戦闘員の姿があった。

 勿論、最後の戦闘員の額に書かれた番号が9711であることは言うまでもない。

 こうして9711号は期せずして初めてのお使いならぬ、初めての戦闘に無理やり駆り出されることになった。











 それは突然の出来事だった。

 女怪人と戦闘員を作戦地点まで輸送する車両が、その道中でいきなり凄まじい衝撃と共に道路に横転してしまったのだ。

 もし輸送車に乗っていたのが人間だったら、下手すれば死人が出るくらいの事故だっただろう。

 しかしそこはリベリオンが誇る怪人に戦闘員、この程度では脱落者が出るはずも無い。

 女怪人が車両の壁をぶち抜き、彼らはそこから横に倒れた車両から無事に脱出を果たす。

 だが、これは彼らに訪れる災難のほんの始まりに過ぎなかった。


「なっ!? 退避ぃぃぃっ!!」


 車両から脱出した女怪人の目に入った物、それは彼女たちの方に迫る巨大な火球だった。

 女怪人の命令に従って戦闘員たちは慌てて横転する車両の側から離れ、次の瞬間に車両へ火球が命中して凄まじい衝突音を響かせる。

 燃え上がる車両を前に呆然とする女怪人たち、その前に彼らは悠々と現れた。


「…ほぅ、全員生き残ったか。 これで何割か削れたら後が楽だったんだがな」

「あんたたちは…。 ふんっ、リベリオンを舐めないでよ!!」


 現れた集団の中でリーダー格と思わしき女の口ぶりは、先ほどの攻撃は自分たちが行ったことを宣言していた。

 明確な敵対者の存在に女怪人は剣呑な雰囲気を醸し出し、呼応するように巨大蜂が彼女の周囲を飛び始めた。

 これがリベリオンの宿敵、ガーディアンと呼ばれる正義の組織と9711号との初めての接触となった。






「死ねぇぇぇぇっ!!」

「その程度ぉぉぉっ!!」


 正義の組織と悪の組織に属する両者が交わった結果、その場に起こりうる事態はただ一つだけである。

 女怪人は幾つもの巨大蜂を前方に居る敵に飛ばす、巨大蜂は様々な軌跡を描いて敵に向かっていた。

 敵…、ガーディアンの女戦士は目の前に迫る巨大蜂から避けるためにジグザグに動きならが前進する、その動きは明らかに人間離れをしていた。

 ガーディアンの女戦士は高校生くらいの若い少女だった、長い艶やかな黒い髪を後ろで縛っており、戦闘の動きに合わせて舞う髪の軌跡は美しかった。

 何故、あのような少女が怪人と互角に戦っているのか、それは彼女が見に付けている装備にあるのだろう。

 女戦士は彼女の整った体系がよく解るボディスーツの上に、四肢と胸部、股部を水色の鎧のようなものを見に纏っている。


「はぁぁぁっ!!」

「ちぃっ!!」


 そして女戦士の両手には剣が握られており、彼女はその剣で気合ともに避け切れなかった巨大蜂を叩き切っていた。

 女怪人は女戦士に近づかれるのが嫌なのか次々に巨大蜂を飛ばすが、女戦士には余り効果が無く彼女の接近を許してしまう。

 巨大蜂を潜り抜けて女怪人の目の前まで接近した女戦士は、その勢いのまま上段に構えた剣を振り下ろそうとする。

 だが女戦士は何かに気付いたのか剣の動きを止め、即座に後方へ跳躍して女怪人の前から離れた。

 次の瞬間、先ほどまで女戦士が居た場所の地面から巨大蜂が飛び出してきた、後コンマ1秒判断が遅かったら女戦士は巨大蜂の餌食になっていただろう。


「ふんっ、よく避けたわね。

 ガーディアンの犬の癖にやるじゃない」

「リベリオンの小細工など私には効かない!!」


 悪の女怪人と正義の女戦士の戦いはまだまだ終わる様子は無かった。







「イィィィィッ!!」

「うぉぉぉっ!!」


 女怪人が連れて来た戦闘員たちが奇声とともに襲い掛かる、それに対するガーディアンの戦士は野太い声とともに応戦した。

 戦闘員と戦うガーディアン側の人間は、女戦士と同じような装備を見につけており、その恩恵で人間を超えた力を持つ戦闘員たちと渡り合っていた。

 しかしその装備は、女戦士の装備と比べたら些か身を守る装甲が少なく安っぽいように見える。

 戦闘員と同程度の力が出せていない事から、恐らくそれはリベリオン側の戦闘員にあたる雑兵ようの簡易装備なのだろう。

 女怪人と女戦士の戦いと比べたらレベルが落ちるかもしれないが、此処でも血で血を洗う戦いが繰り広げられていた。






 一進一退の攻防を繰り広げるリベリオンとガーディアンたち、その中で9711号は一人死んだ振りをしながら戦闘をやり過ごしていた。

 自我を失っていた頃ならともかく、今の9711号には自分の命を捨てて戦う勇気は無い。

 そのためガーディアン側からの奇襲を受けたことで始まったこの戦闘の開始時に、9711号は速攻で死んだ振りという情けない行動に出たのだ。

 この戦場の中で誰も戦闘中に倒れた戦闘員に注意を払うものは居なく、今のところ9711号は一応の安全を手に入れていた。






「貴様の蜂など全て凍り付けにしてやる」

「私の可愛い僕たちが、あんたなんかにやられる訳ないでしょう!!」


 女戦士の装備は氷を生み出すの能力を持つらしく、両の剣を地面に突き刺すとともに氷の槍が地面から生えて女怪人を襲う。

 咄嗟に女怪人は背中の羽を羽ばたかせて迫る氷の槍を回避し、そのままお返しに腕から毒針を飛ばす。

 そんな両者の激しい戦いを遠目で見ながら、9711号はこの戦場から生き残る手段が無いか必死で考えていた。

 相変わらず死んだ振りをしながら…。




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