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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第1章 リベリオン
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2. 怪人

 セブン直下の戦闘員となった9711号は、日々彼女のパシリとして雑用に励んでいた。

 戦闘員なんて物を作り出す組織が労働基準法なんて守るはずも無く、毎日遅くまで働かさせる9711号だったが、改造手術のお陰か何時間働いても余り疲労を感じず意外に今の生活に馴染んでいた。


「我が組織は所謂、悪の秘密結社と言われる存在。 悪の秘密結社という言葉は解る?」

「キィ!!」


 基本的にセブンの指示で働いている9711号は、必然的にセブンのスケジュールに合わせた生活を強いられた。

 現在もセブンの昼の栄養補給にご同伴を預かり、彼女の部屋で一緒にカレーを食べていた。

 セブンは余り食事に拘りが無いらしく、普段からカレーやサンドイッチといった手軽に食べれる軽食ばかりを取っている。

 忙しい時などは味気の無い栄養ブロックで食事を済ませ、下手をしたら一食や二食は平気で抜く始末だ。

 もしかたら彼女のよく言えばスレンダーと言える細身の体系は、この食生活が原因なのかもしれない。


「そう、やはり有る程度の知識は残っているようね。 あなたに欠落しているのは自身の記憶だけ…、一体どうしたらそんな奇妙な状態になるのか…。

 やはり一度、脳を直接切り開いて調べるべきか?」

「キィ!?」


 セブンは仕事の合い間に9711号と会話をしながら彼の観察を続け、時には何かの器具で9711号の体の調査なども行っていた。

 最初に言ったとおりセブンは9711号を研究対象として見ているらしく、9711号は何時か自分が解剖されるのでは無いかと密かに戦々恐々していた。


「ああ、安心して。 今のところ、あなたの体を直接切り開くつもりは無い。

 あなたのように柔軟な思考を持つ部下は貴重、あなたに抜けられたらまた私が雑事に追われてしまう」


 9711号が現れるまでセブンは雑用を戦闘員に任せていたが、普通の戦闘員はプログラムされた画一した仕事しかこなせず、余り役に立たなかった。

 ならば戦闘員以外に仕事を任せればいいのだが、此処リベリオンの日本支部に居るのはセブンのような研究員、戦闘員、そして…。






「おう、セブン、邪魔をするぞ!!」

「…何度も言うとおり、無断で私の研究室に入らないで欲しい」


 突然、セブンの部屋の扉が開き、一人の怪人が姿を見せた。

 そう…、怪人である、悪の組織に戦闘員が居るのならば怪人が居ないわけが無いのだ。


「おや、食事中だったか。

 悪いな、俺は普通の人間と違って食事なんて面倒な真似には暫く縁が無くってな、少し配慮が足りなかったようだな。

 しかし人間は面倒だな、日に何回も無駄な行為をしなければ生きていけないなんて…」

「あなただって食事の必要はある。 今の組織の技術では補給なしに無限で活動できる怪人の製造は不可能」

「ふんっ、まあ栄養補給が不要と言ったのは言いすぎだったか。

 だが俺がひ弱な人間と違って、週に一回補給をするだけで人間を遙かに超えた力を出すことができるぞ」


 セブンの部屋に訪れた怪人、その姿は本人の言うとおり人間とかけ離れたものだった。

 全身を赤い鱗で覆った堅牢そうな体、頭部も人間と蜥蜴の顔を足して二で割ったような顔立ちだ。

 怪人は細長い爬虫類特有の舌をチロチロと出しながら、尊大な態度でセブンとの話を続けている。


「それで用件は何?」

「実はな、俺は今度の作戦に参加することになってな、一応俺の設計者であるお前に挨拶しておこうと思ってな」

「作戦? それはもしかしてガーディアンの支部を襲撃するという、あの無謀極まりない作戦のことを言っている?

 その作戦の参加は止めて置いたほうがいい、命を無駄にするだけ」


 セブンはこの組織の開発主任として、主により強力な怪人を生み出すための研究をしていた。

 蜥蜴怪人はセブンが企画した開発計画によって生まれた怪人らしく、ある意味セブンはこの怪人の生みの親なのだ。

 しかし蜥蜴怪人の態度からは、生みの親を敬うような様子は見て取れなかった。


「無謀か…。 俺のこの強靭な体を設計したデザイナーも所詮は人間か…。

 この人間を遙かに超えた俺が、ただの人間の集まりであるガーディアンに負けるはずが無いだろう!!」


 ガーディアン、悪の組織に対抗するために生み出された組織、簡単に言えば正義の味方と言うやつだ。

 彼らは俺たち戦闘員や怪人のように自身の体に改造を加えることなく、生身の体のまま俺たちと戦っていた。

 リベリオンとガーディアンは一進一退の攻防を繰り広げていた、何故、改造人間であるリベリオンに対してただの人間であるガーディアンが互角に渡り合えるのか。

 その秘密は彼らの使う兵器にある。


「ガーディアンが持つ兵器の力は我々の怪人の力に匹敵する。 一体、彼らに我々の怪人が何体倒されたか解っているの?」

「俺は他の失敗作とは格が違う!! なーに、奴らの武器など俺が一蹴してやるさ。

 喜べ、貴様は最強の怪人を生み出したデザイナーとして語り継がれていくだろうよ!!」


 あくまで己の力に絶対の自信を持つ蜥蜴怪人は、セブンの忠告に耳を貸そうとしない。

 セブンに対して大言を吐いた蜥蜴怪人は、そのまま高笑いを浮かべながら博士の部屋を去っていった。






「全く…、怪人が生身の人間を下に見る風潮はどうにかして欲しい。 私が設計した怪人でさえ、無改造の私の言葉なんて耳を貸さない。

 やはり私も改造手術を受けるべきか、しかし私の身体スペックでは下位の怪人にしかなれない。

 それに私の体を預けるに足る術者が居ないことも問題…」


 リベリオンという組織には雑事を一手に引き受け、時には鉄砲玉して戦闘に借り出される戦闘員、怪人を製造する研究員、そして組織の主戦力である怪人が居る。

 その中で基本的に怪人は人間を超えた力を持ったことによる弊害か、生身の人間や怪人になれなかった戦闘員を見下していた。

 怪人は戦闘員と違って高度な脳改造によって自意識を持ちながら組織に忠誠を誓っているが、別にセブンに忠誠を誓っているわけでは無い。

 怪人たちは生身の人間であるセブンの命令には耳を貸さないため、仕方なく彼女は融通の利かない戦闘員を使っていたのだ。


「…とりあえず仕事に戻る。 9711号、食器の片づけをお願い、終わったら例の資料をまとめておいて」

「ィイッ!!」


 セブンはテキパキと働いてくれる奇妙な戦闘員、9711号の存在に感謝しながら仕事を再開するのだった。

 そして数日後、9771号は意外な場所で蜥蜴怪人と再び遭遇することになる。






「くそっ!? この俺様がなんでこんな事に…」

「キィッ!?」


 尿意を催して組織の各所にある共用トイレに向かった9711号は、そこで有り得ない光景を目撃する。

 何と以前に見た蜥蜴怪人が愚痴を零しながら、粛々とトイレ掃除をしていたのだ。

 普通、組織内の清掃活動は下っ端である戦闘員の仕事である、本来なら怪人がやる筈の無い行為なのだ。

 驚いた9711号は後で筆談を用いてセブンから事情を尋ねた所、以下の事情を知ることになる。

 セブン曰く、先日あれほどの大言を吐いた蜥蜴怪人はガーディアンにあっさりと返り討ちにあったらしい。

 奇跡的に生還した蜥蜴怪人は任務失敗のペナルティとして第一線から外され、組織の掃除班に左遷させられてしまったのだ。


「…だが俺は諦めんぞ!? 次こそは人間など返り討ちにしてくれる!!」


 逆境の中でも戦意を失わない蜥蜴怪人は、ガーディアンへの復讐を胸に秘めながら掃除班の仕事に勤しむ。

 それから9711号はたまに蜥蜴怪人の姿を目撃するようになり、愚痴を零しながら掃除をするその光景を生暖かい視線で見守った。

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