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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第3章 死の天使
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20. 3つめのコア


 ガーディアンたちより一足早く司令塔候補を撃破したリベリオン、しかしその代償にリベリオン側の戦力は首領を除いて全滅してしまった。

 死の天使と言う敵中で一人残されたリベリオン首領が取るべき行動を普通に考えれば、巣からの撤退か他戦力との合流が妥当な所だろう。

 しかしこの状況でリベリオンの長たる怪人は、普通とは言い難い狂気じみた行動に出たのだ。

 元々研究者であった首領はあの近衛兵を製造する施設が、尖兵たちを製造していたあの生産工場には無い事を見抜いていた。

 あの近衛兵は他の場所で製造された物が司令塔候補の防衛のために派遣されたのであり、そして近衛兵は天井から伝わる管を伝ってやってきた。

 それならば管を逆に辿れば近衛兵の製造工場に辿り着けるのでは無いか、その無茶な思いつきを躊躇いなく実行した結果が唐突なリベリオン首領の登場であった。


「ふむ、あの特殊な死の天使が巣の中枢部で製造されているだろうと言う予想は当たったか…」

「な、何故あんたが此処に…」

「…どうやら余り形勢は良くないようだな、それだけ司令塔の力が強大と言うことか」


 ダメージを負った様子の無い司令塔の姿、そして戦闘不能に近い状態の黒羽を庇う大和の姿が語らずともこの場の状況を物語っていた。

 この星の最大戦力である欠番戦闘員を持ってしても歯が立たない死の天使の司令塔、その絶望的な状況にリベリオン首領は全く動揺した様子を見せない。


「いいだろう、連中は私が引きつける。 お前たちはNo.7の用意したあれを用意するがいい」

「っ!? 博士の切り札のことを知っているのか?」


 リベリオン首領はセブンの用意した切り札の事を把握しているようで、大和たちにその札を見せるように言う。

 自分たち以外知る筈も無い切り札の秘密を知るリベリオン首領に驚く大和、どうやら自分たちの動きは想像以上に黒幕たちに知られていたらしい。


「大和…」

「やろう、今はあいつを信じるしか無い…」


 自らの宣言通りに死の天使の元へ歩み寄るリベリオン首領、その姿に大和はあの怪人のことを信用することにした。

 これまでの経緯からリベリオン首領の至上目的が死の天使の排除に有り、そのためにあらゆる手段を取ってきた。

 その至上目的のために否応無く戦闘員にされた大和としては複雑な気持ちであるが、逆を言えばこの状況でこの怪人が自分たちを裏切るようなことをする筈は無い事も理解していた。

 リベリオン首領と言う予期せぬ援軍のお陰で、いよいよ大和が最後の札を切る瞬間が訪れたようだ。











 コアにはそれぞれ固有の性質の能力を持ち、それ故にコアの性質に合った使用者で無ければその力を使いこなすことは出来ない。

 ほぼ同質の性質を持つデュアルコアと言う奇跡の産物でも無ければ、個々の使用者が使用できるコアはただ一つである。

 このコアの制限を乗り越えて複数のコアの力を利用するため、番号付きの作られた天才たちは異なるアプローチで取り組んだ。

 No.4は複数のコアの使用者を集め、それぞれのコアの出力を一つにまとめることで規格外の一撃を産み出した。

 No.9は個々の使用者の性質を一つの体にまとめて、異なる性質を同時に持つ存在を作り出すことでコアの同時使用を実現した。

 それに対してNo.7はデュアルコアと言う例外を所有していたこともあり、他の番号付きと異なりコアの同時使用に対する試みを行ってこなかったようだ。


「大和、後は頼んだぞ…」

「任せてください」


 そんなNo.7がデュアルコアを超える必要があると感じるようになった切っ掛け、それは番戦闘員こと大和が事実上の敗北を喫した恐竜型怪人との戦いであった。

 デュアルコアでは届かない敵が現れる可能性を危険視したセブンはこの時より、他の番号付きと同様にコアの同時使用に対する試みを始める。

 そしてNo.7が辿り着いた他の番号付きとは全く異なる解答、それが死の天使戦で大和に用意された最後の切り札であった。

 死の天使たちの相手をリベリオン首領に任せて、大和は黒羽から彼女の使っていたコアを受け取る。

 そして黒羽のコア、最強の怪人であるリザドが使っていたそれを内蔵型インストーラに嵌め込んだ。

 既にインストーラに嵌められた二つのコアの間に新たなコアが加わり、大和の腹部に3つのコアが並べられた。


「"リモートアクセスプログラム起動、コアと黒羽 愛香の遠隔同調を確認"」

「うぉぉぉぉぉっ!? 力が…、溢れて…」


 コアの遠隔発動、それがNo.7が至ったコアの同時使用を実現する抜け道であった。

 使用者で無ければコアの力を発揮することが出来ないのであれば、その使用者にコアの力を引き出して貰えばいい。

 コアに対して本来の使用者が使用していると誤認させ、本来の使用者では無い者が擬似的にコアの力を引き出す。

 まさにこの時、本来の使用者として調整された黒羽の存在を誤認した第三のコアが、欠番戦闘員こと大和に新たな力を与えていた。

 デュアルコアに加わり新たに追加された黒羽のコア、トリプルコアという誰も成したことの無い未知の領域。

 腹部の内蔵型インストーラのコアが爛々と輝き、大和は今まで感じたことのない力の本流をその身に受けるのだった。






 コアの遠隔発動の技術はまだ問題が多く、一番の課題は遠隔発動が可能な距離の短さであろう。

 現状の技術では本来の使用者が10メートル以内に居なければコアは遠隔発動出来ず、それ故に本来の使用者はコアを失った無防備な状態で戦場に立ち続けなければならない。

 そして本来の使用者が倒れてしまえば当然のようにコアが使用者を誤認することは無くなり、コアの遠隔発動と言う切り札は使えなくなってしまう。

 この制限あったために大和たちは無理にでも近衛兵を先に排除し、無防備な黒羽を庇いながら司令塔との一体一の状況を作り出すしか無かった。


「ββββっ!?」

「はぁはぁ、どれだけ強くなっているんだよ、俺は…」


 しかし無謀義な黒羽と言う明確な枷を代償にして、大和が新たに手にれたトリプルコア手に入れた力は凄まじい物であった。

 リベリオン首領との戦闘中に横槍を入れた奇襲であった事を差し引いても、大和はこれまであれ程対処に苦労した近衛兵を容易く倒すことが出来たのだ。

 トリプルコアの出力によって大和の両腕の蒼い炎は腕全体を覆うほどに広がり、その熱は強靭な近衛兵の装甲をも焼き溶かす程の出力を持っているようだ。


「…体は持ちそうか?」

「リザドのコアの効果でどうにか…。 それよりあんたの方は大丈夫なのかよ」

「ふふふ…。 リベリオン首領と偉そうにしていたが、所詮は私は怪人のプロトタイプでしか無いと言うことだ…」


 時間を稼いでくれた恩返しとばかりに近衛兵を軽く倒し、大和はリベリオン首領を庇うように司令塔の前へと立つ。

 トリプルコア、3つのコアの強力な出力は絶えず大和の体に負荷を掛けており、それは戦闘員如きではとても許容できない物であった。

 黒羽のコア、かつてリザドが使っていた身体機能の活性化能力を常時発動させて、その負荷を緩和させ続けなければ大和は立っていることも儘ならない筈だ。

 大和は自分のために司令塔と近衛兵の相手をしてくれたリベリオン首領、立っているのがやっとな程にボロボロになったその姿に思わず気を使ってしまう。

 彼らから送られてきた生物の合成技術を利用して、この星で初めて製造された怪人であるリベリオン首領。

 10年前に製造された骨董品が近年に作られた最新の怪人を性能的に上回っている筈も無く、リベリオン首領の怪人としての性能をは決して高水準の物では無い。

 今の黒羽にすら満たない劣悪な性能で司令塔と近衛兵戦うなど無謀という他無く、未だに生きているのが奇跡と言えるくらいであろう。


「欠番戦闘員、お前がこの星の最後の希望だ。 この星の未来はお前に託すぞ」

「言われなくても解ってる。 さっさとこいつを片付けて、俺はただの浪人生に戻らして貰うよ!!」


 欠番戦闘員こと大和に激励の言葉を残し、リベリオン首領はその場に崩れ落ちる。

 この星を救うために全てを投げ打ちトリプルコアと言う切り札を発動するための時間を稼いだ怪人が、元戦闘員でしか無い男に全てを託したのだ。

 自身の体の仇と言うべき怪人に言われるまでも無く、死の天使を此処で絶対倒さなければならないことは理解していた。

 受験勉強が進んでいないことに悩むだけの呑気な浪人生に戻るため、トリプルコアと言う最後の切り札を場に出した大和は死の天使の主へと戦いを挑む。



完結まで後三話!残りは明日中に投下予定です!!

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