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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第3章 死の天使
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12. 今できること


 時間を少し前に遡る。

 死の天使との決戦の直前、バトルスーツのインストーラの最終調整のためにセブンの元を訪れていた大和。

 内蔵型インストーラの調整も無事に完了した所、大和は少し前に思いついたある懸念についてセブンに尋ねていた。


「あ、そういえば博士、ちょっと聞きたいことが有るんですが?」

「何?」

「死の天使って連中は多分、誰かがこの星を滅ぼすために送り出した連中ですよね? それだったら俺たちが今度の戦いで死の天使を倒しても、死の天使を送り出した連中がまた同じことをするんじゃ…」


 一体どんな理由か検討も付かないが死の天使を送り出した連中には、この星を滅ぼすと言う明確な目的が存在していた。

 仮に大和を含めたこの星の者たちが死の天使を撃退した場合、それは連中の目的が達成されなかった事を意味する。

 そして目的を達成出来なかった連中が、そのまま大人しくこの星のことを諦めてくれるとは考え難い。

 最悪、すぐにでも死の天使の第二弾をこの星に向かって送り出すのでは無いだろうかと、大和は心配しているようだ。


「その可能性はある。 しかし次に死の天使と呼称される物が来るのは、少なく見積もっても数百年後になる」

「…へ?」

「全ては宇宙スケールの話、そもそも記憶媒体を送り出した者たちが滅んだのも、遥か昔の話になる」


 大和の懸念は決して的外れな物では無いが、セブンは自分たちの世代では死の天使のことをもう気にする必要は無いと説明する。

 "光年"とは距離を表す単位であり、宇宙のある地点から放たれた光が到達するまでに掛かる時間を持ってその距離を示す。

 一秒で地球を7周できる程の光の速さを持って、そこの到達するまでに年単位の時間を費やすほどの膨大な距離。

 宇宙と言う途轍もないスケールの話をするためには、それだけの尺度の単位が必要になってくるのだ。

 記憶媒体を送り出した彼らの文明が滅んだのは数百年ほど前の話であり、必然的に彼らがこの星を狙う死の天使の存在を発見したのもその時代になる。

 少なくとも数百年前には既にこの星に向かっていた死の天使、奴らが送り出した死の天使がこの星に辿り着くまでには少なくともそれだけの時間が必要と言う事だろう。


「何かスケールが大きい話ですね…」

「所詮、今の私達では目の前の脅威に対処するしか出来ない。 後はなるようになるだけ…」


 可能性などそれこそ無数にある。

 例えば数百年の間で死の天使を送り出した者たちの技術力が進歩し、SF物でよく見かける空間を超えるワープ的な技術を開発していたとしよう。

 そうなれば大和の言うとおりの未来が訪れてしまい、この星の滅亡は確定してしまうだろう。

 例えば数百年の間で死の天使の送り出した者たちに因果応報的な災難が訪れて、滅亡していたとしよう。

 そうなればこの星を狙う者は居なくなり、とりあえずはこの星の危機は去るだろう。

 しかし今のこの星の技術力では実際にそれを確かめる手段は無く、セブンの言う通り成り行きに任せるしか無いのだ。

 確定した脅威である死の天使を全力で倒す、それが今できる最善の選択であった。











 今出来ることをなす、そのために欠番戦闘員こと大和は死の天使の司令塔の元に向かっていた。

 ファントムのレーダーを見ずとも目的地に近づいている事は解る、何しろ道中で転がる尖兵の残骸の数が明らかに増えてきているからだ。

 司令塔は死の天使にとってのアキレス腱であり、それを最優先に守ろうとするのは理解できる。

 そして巣内からかき集めた尖兵たちを蹴散らしながら、大和の元自分と元幼馴染が先行しているのだろう。

 この調子では大和たちが辿り着いた頃には、見事に司令塔を撃破した女王蜂が高笑いしている姿を目撃する事になるかもしれない。

 自分の仕事が全て取られてしまう未来を想像した元戦闘員は、思わず覆面の下でに笑みを浮かべしまう。


「…あれはっ!?」

「"うわっ、蜂女がやられている!? 凄いコアの反応です、これまでの雑魚とは桁が違いますよ!!"」


 しかし尖兵の屍で舗装された長い通路を抜けた先で、大和は自身の予想が見事に外れたことを知る。

 ホール上となっているその部屋の壁際、そこに倒れている蜂型怪人と白仮面の姿を目撃したからだ。

 そして部屋の中央には、恐らくこの凶行の下手人と思われる見たことのない死の天使が仁王立ちしている。。

 西洋の騎士の如き装甲を全身に纏う死の天使、ガーディアンやリベリオンの精鋭たちの所にも現れたあの近衛兵がこの戦場にも出てきたようだ。






 それは大和たちがこの部屋に辿り着く数分前、クィンビーと白仮面の一行の前に唐突に姿を見せた。

 自分たちを待ち構えるように部屋の中央に立っていた近衛兵、これまで蹴散らしてきた尖兵たちと明らかに違う佇まいにクィンビーたちの警戒は否応なしに高まる。

 しかし此処で足を止めてられないと、先に動いたのは白仮面であった。

 白仮面の能力であるコアから出力されたエネルギーの武器化、それによって産み出された光の剣が軌跡を描く。

 並の怪人であれば一刀両断するであろう光の斬撃に対して、近衛兵はその腕に持っている棒状の物で対抗しようとする。

 穂先や刃どころか突起物一つ存在しない直径10センチも満たない細い棒切れ、恐らく"杖"と呼ぶのが一番妥当と思われるそれが白仮面の光の剣と衝突した。


「ββββββββ!!」

「くっ、硬い!?」


 視覚的には軽く両断されそうな頼りないその杖は、しかし傷一つすら付くこと無く白仮面の剣を見事に受け止めていた。

 既に白仮面のコアの出力は最大であり、白仮面は己が出せる全力を光の剣に集中させている。

 その全力を持ってしても、尖兵と比較にならない程の力を持つこの近衛兵を押し切る事が出来ないようだ。


「…その隙貰った!!」

「βββっ!?」


 しかし白仮面の全力は、近衛兵の意識を自身に引きつける事は出来た。

 それ故に近衛兵は女王蜂の放った姿なき巨大蜂の奇襲に、近衛兵は寸前まで気付くことは叶わなかったようだ。

 ファントムのそれと同じステルス能力を付与されたクィンビーの巨大蜂たちが、その毒針を突き出しながら近衛兵の背後から襲いかかる。

 そして巨大蜂の毒針が近衛兵に…、届くことは無かった。


「はっ、何よれ!?」

「障壁っ!? 違う、これは同じ…」

「βββββββββっ!!」


 クィンビーの巨大蜂は見えない何かに阻まれ、その毒針を近衛兵に届かせることは出来なかった。

 逆にその何かによって近衛兵が居る位置から吹き飛ばされていく巨大蜂の光景に、白仮面は直感的に相手が何をしたのか悟る。

 そして次の瞬間、近衛兵の体から放たれた圧力を受ける事よってその想像が正しかったことを知った。

 コアのエネルギーをそのまま衝撃波として放出する能力、かつて白仮面自身が使っていたそれと同質の力をこの近衛兵は持っているのだ。

 その単純明快な能力はコアのエネルギーが強力である程に威力を増し、そしてデュアルコアと同等の出力を持つと言う近衛兵が放つそれが強力な訳が無い。


「きゃぁぁぁっ!?」

「この力は…」


 近衛兵の体から放たれたエネルギー波に飲まれた白仮面とクィンビーは、その圧力に抗うことが出来ずに吹き飛ばされてしまう。

 この星のコアを上回る出力を持つ近衛兵の力にクィンビーたちは、別の戦場に居るガーディアンとリベリオンの精鋭たちと同様に翻弄されていた。











 近衛兵の相手をクィンビーに任せて、先に進む案も無くは無いがリスクは高い。

 部屋の中央に陣取る近衛兵の脇を抜ける必要があり、どんな能力を持っているか解らない相手に隙を見せる事になる。

 目の前の障害を取り除かなければ先は行けない、ゲームで言う中ボス戦と言う訳だ。


「くっ…、舐めるんじゃ無いわよ!!」

「この程度で…」


 壁際に倒れていたクィンビーたちは無傷とは言い難い状況であるが、まだまだ戦闘不能では無いらしい。

 立ち上がろうとする怪人たちの姿を確認した大和は、バイクから降りて近衛兵の前へと向かっていく。

 その隣には大和の後ろに乗っていたガーディアンの制服を纏う女性が続き、両者は近衛兵の前に並び立つ。


「やりますよ…」

「ああ、最初で最後の共闘だ」

「「…変身っ!!」」


 そして二人のインストーラが起動し、その体は光に包まれた。


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