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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第3章 死の天使
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10. 司令塔


 この星に死の天使の襲来を伝えた、彼らから送り込まれた記憶媒体。

 そこには彼らの文明を滅ぼした死の天使の脅威、そしてその対処法が記されていた。

 彼らは自分たちの生き残りを賭けて死の天使に決死の抵抗をしながら、死の天使たちのことを分析していた。

 そして彼らは死の天使の打倒法に辿り着いたのだ、残念ながら既にそれを実現する戦力が無い程に追い詰められた時に…。

 自分たちの滅びを受け入れた彼らはこの情報を見ず知らずの星に託した、自分たちと二の舞いになるなと言う善意と死の天使たちへの異種返しの思いを込めて…。


「死の天使、奴らは明確な上下関係が存在する。 全てを指揮する司令塔と、それの手足となって働く雑兵。

 そして司令塔を倒すことが出来れば、その配下となる雑兵たちは活動停止となる」

「些か出来すぎた話では有るが、我々はこの情報を信じるしか無い。」


 死の天使たちの行動原子は、この星で言う蟻の生体によく似ていた。

 頂点となる女王蜂にあたる司令塔、その手足となって働く働き蜂と同等の存在である雑兵。

 そして死の天使たちには、蜂を思わせるもう一つの能力を持っていた。


「我々が生き残るためには、奴らがこの星に降り立った瞬間に時間を与える事無く始末するしか無い。

 女王蜂の巣立ちを許すしたら、全てが終わってしまうだろう」

「そのための戦力は揃えた、明日の戦いで勝負は決まる」


 奴らは増殖する、その星の文明を喰らい尽くす程に。

 そして奴らは効率よく数を増やすために、蜂で言う所の巣立ちを行うのだ。

 死の天使の新たな女王蜂ならぬ司令塔が巣立ちを行い、奴らの戦力を生み出すための新たな巣を作り出す。

 巣の数だけ奴らの司令塔は存在し、その全ての司令塔を倒さなければ奴ら決して滅びない。


「後始末は任せたぞ、色部」

「解っています、それが私の最後の仕事ですから。 あなたもただ無駄死にだけはしないで下さい。 私達のような大悪人が、意味もなく死ぬわけにはいきませんから…」

「分かっている、せめて奴らを道連れにくらいはしてみせるさ」


 彼らからの記憶媒体によってかろうじて死の天使と対抗する手段を手に入れたこの星の貧弱な戦力では、精々巣を一つ潰すだけで精一杯だろう。

 この星に送り込まれる死の天使たちの最初の巣、そこからの巣立ちを許してしまったらこの星に未来は無いのだ。

 世界中を巻き込んだ詐術でこの星の戦力を整えた大悪人たちは、決戦前夜に最後の言葉を交わし合っていた。

 己の体を改造した最初の怪人は戦場へと立ち、貧弱な人間でしか無い人間はそれを見送る。

 最早生きて会うことは無い事を予感しながらも、既に覚悟を決めている大悪人たちは平然とその事実を受け止めていた。











 欠番戦闘員たちに続き、死の天使たちの巣へと潜入したガーディアンとリベリオンの連合軍。

 ファントムに詰まれていた物と同じレーダー、コアの波長を感知する装置を片手に巣の中を進んでいく。

 コアの反応が一番強い地点、恐らくこの巣の司令塔が居るであろう場所にでは無い。

 正義と悪の連合軍はあえて死の天使たちの司令塔を目指すこと無く、それに次いで一際高い反応を見せる地点へと進んでいた。


「この巣の司令塔は後回しだ、まずはこいつらの拡散を防ぐ。

 悪いが司令塔は欠番戦闘員たちに任せるしか無い」

「そのために俺たちは巣立ちの準備をしている、こいつらの次の司令塔を先に潰す」


 この星を未来を手に入れるための必須の勝利条件は、死の天使たちの拡散を防ぐことである。

 奴らの巣一つから生産される尖兵たちだけで、この場に集められたガーディアンとリベリオンの大半は足止めされたのだ。

 万が一、奴らの巣が複数に増えてしまったら、最早この星の戦力では手に負えられないレベルの脅威になってしまう。

 奴らの巣立ちを防ぐ、それがまだ外で戦っている他の戦士・怪人たちの支援を受けて突入した者たちの使命だった。


「ふっ、分岐点か。 ガーディアン共、我々の仕事を増やしてくれるなよ!!」

「お前らこそ、返り討ちに遭うんじゃねぇぞ!!」


 巣の中を進んでいくリベリオンとガーディアンたちは、とある分岐点で二手に分かれることになった。

 決して仲違いした訳では無い、連合軍の獲物である次の司令塔を思わしき反応が離れた二点に存在したからである。

 奴らの巣立ちを防ぐためには一刻も早く次の司令塔を潰す必要があり、一体ずつ倒している時間など無い。

 それ故に連合軍は戦力を分けるという選択をしなければならず、ガーディアンとリベリオンで戦力が分けられるのは自然な事であった。

 互いに憎まれ口を叩きながらもう一方の道へと進んでいくリベリオンの怪人たち、それを確認した正義の味方たちも先へと進んでいった。


「@@@@@っ!?」

「足を止めるな、さっさと仕事を終わらせる」

「おっ、何時もにましてやる気だねぇ、灰谷隊長は」

「お前は何時も通りだな…」


 ガーディアン側の突入班を指揮する灰谷に率いられた正義の軍団は、絶え間なく襲いかかる尖兵たちを排除しながら奥へと進んでいく。

 先頭を行く灰谷の手に持つ光の剣、武器型インストーラが軌跡を描くたびに尖兵たちは異様な断末魔をあげて倒れる。

 一足先にラスボスの元へ向かった恩人の息子の元へと駆けつけるため、一刻も早くこの仕事を終わらせなければならない。

 灰谷は内心で大和の身を案じながら、修羅の如き行相で血路を切り開いていった。






 尖兵たちの亡骸で埋め尽くされた通路を抜けて、ガーディアンの戦士たちは一際広い部屋へと辿り着く。

 そこは学校の体育館程度の広さがあり、戦士たちはその部屋の異様さに一瞬圧倒されてしまった。

 部屋の中には天井から吊るされた太い管が幾本も垂らされ、その管の周辺を歩き回る見たことの無い死の天使の姿があった。

 それはつい先程まで戦士たちが戦っていた尖兵たちと同じく顔も無く、色も同じように黒一色に染められている。

 しかし尖兵たちとの最大の違いは、それには腕らしきものが六本も生えていたのだ。

 足を含めれば八本の手足があるそれは、忙しく六本の腕を動かしながら天井から生えた管を弄っている。


「あれは…、此処を管理しているのか?」

「この部屋の設備を整備する整備兵って奴だな。 作業しやすいように腕を沢山生やして効率化か、単純だなー、おい」

「そして此処は奴らの生産工場と言う所か…」


 言うなればそこは生産工場だった、死の天使たちの巣の最大の役割とも言える自己増殖の機能を担う場所。

 天井から垂らされた管が脈打ち、次の瞬間にそこから奴らの赤子が産み出されていく。

 その赤子は生まれた時から戦うための力を持っており、生後すぐに己の足で立ち上がる事が出来た。

 そして顔の無い黒い赤子は司令塔の命に忠実に従い、尖兵としての役割を果すために自らの足で外敵に向かって行く。


「うわっ、気持ち悪ぃぃ!! どんどん出てくるぞ!!」

「目標の反応はどうだ!?」

「この部屋の一番奥、あの立方体の中から発せられています。 しかも反応がどんどん強くなって…」


 この星を滅ぶすためのやって来た死の天使、その尖兵たちがこの部屋に現れた闖入者を見逃すはずは無い。

 生産工場で量産されたばかりの尖兵の一部は、当然のようにガーディアンたちにも向かってくる。

 しかし彼らは此処で引くわけには行かない、何故なら此処には目標である次の司令塔が居るからだ。


「まずは第一目標の撃破を優先する。 白木と土留は俺に着いて来い、他の者たちは俺たちの道を作れ!!」

「「了解!!」」


 例えどんな状況であろうとも、覚悟を決めた正義の味方たちは揺るがない。

 奴らの生産工場から絶え間なく産み出される尖兵の軍団を前に、ガーディアンの精鋭たちは臆する事無く前進した。



あけましておめでとうございます、とりあえず新年一発目の投下です。

出来れば1月中に完結まで持っていきたいので、今月は少し更新スピードを上げていこうと思います。


では

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