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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第3章 死の天使
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1. 準備期間


 日本の某所に秘密裏に存在する秘密施設、世界制服を企む悪の組織リベリオンの秘密基地。

 その悪の巣窟に集うの異形の者たち、異なる生物の要素を組み合わせる事によって人間を超えた性能を手に入れた怪人と呼ばれる存在。

 基地内の怪人たちは皆多かれ少なかれ興奮状態にあり、来るべき決戦に対して戦意を高揚させていた。


「はははは、この星は俺たち怪人の物って事を教えてやるぜ!!」

「ガーディアン共から奪ったコアのストックがまだ有るだろう。 早急に新世代への改造を急がせろ!!」


 この熱狂の切っ掛けは数日前に行われた、リベリオン首領直々の激が端を発っしていた。

 普段は滅多に姿を見せないリベリオン首領が画面越しとは言え、全てのリベリオン怪人たちの前に姿を現した一大事。

 これは只事では無いと直感した怪人たちの予想は当たり、リベリオンの首領の口からとんでもない話が飛び出すことになる。

 死の天使たち、この星を滅ぼそうとする未知の侵略者、その存在を知った怪人たちが抱いた感情は恐怖ではなく怒りであった。

 自分たちがそう遠くない内にこの星の支配者になる存在であると信じて疑わない怪人たちに取って、死の天使たちは自分たちの領分を冒す敵でしか無いのだ。

 怪人たちは死の天使の存在を明確に敵と定め、忙しく死の天使に対する備えを始めていた。


「ふん、首領の崇高な考えを理解できない者たちを助ける事になるのは癪だが、我々の庭を荒らし回る者と放置する訳にはいかないな」

「ガーディアンの連中の始末は後回しだ、まずは死の天使とやらを」


 リベリオン首領は語った、自分は10年以上から死の天使の襲来を予期していたと。

 そして愚かな人間たちでは死の天使たちに到底太刀打ち出来ず、この星は滅んでしまうだろうと…。

 これを回避するためにリベリオン首領は悪の巣窟リベリオンを立ち上げ、世界を征服しようと企んだ。

 全てはこの星を死の天使の魔の手から救うため、愚かな人間たちに変わって我々怪人によって管理された世界を築き上げる。

 怪人たちが主導になって死の天使たちに対抗するのが、この星を救う唯一の手段であるとリベリオン首領は考えたのだ。

 リベリオン怪人たちは首領の崇高な意思に感銘を受け、人間を超えた存在として生み出された自分たちの存在意義を理解した怪人たちのやる気と熱意は天井知らずに上がっていた。


「ふぅ、単純な連中たちで良かったです。 これでどうにか此方側の準備は整いますよ、首領…」


 熱狂の渦に包み込まれているリベリオンの渦中で、一人冷めた目をしている怪人の姿がそこにあった。

 頭から幾本の触手を垂らしている海月をベースに作り出された怪人、海月型怪人キロス。

 幹部怪人としてリベリオン首領の近くに居るキロスは、首領の話が全て真実で無い事は理解していた。

 しかし建前はどうであり、リベリオン首領がリベリオンの戦力を全て死の天使にぶつけたいと思っていることは確かである。

 キロスは自分の生みの親であるリベリオン首領の思惑通りに事が進んでいることに、満足気に微笑むのだった。











 時同じく、正義の組織ガーディアンにおいても悪の組織と似たような光景が広がっていた。

 ガーディアン総帥である色部が語ったこの星に迫る前代未聞の危機、その演説はガーディアンたちに衝撃を与えた。

 この星を滅ぼそうとする侵略が居るとなれば、仮にも正義の味方を名乗るガーディアンが動かない訳は無い。

 ガーディアンの戦士もまた、死の天使たちの襲来に備えて忙しく動いていた。

 宇宙より来る侵略者に立ち向かう、これもまた正義の味方としてはお約束のシチュエーションである。

 言うなれば正義バカと言うべき人材が揃うガーディアンのメンバーは、この熱狂に酔いしれているようでもあった。


「宇宙からの侵略者、ね…。 やっぱり俺たちの戦いは茶番だったんだな…」

「死の天使に対抗するための強力な戦力を作り出す、それが真の目的か…。 理屈は解るが、それだけのためにどれだけの犠牲…」


 しかし加熱するガーディアン東日本基地の中で、その熱狂を白けた目で見ている者も居た。

 白木(しらき)土留(どどめ)、欠番戦闘員との関わりを通して正義と悪の対立構造の裏を知っていた彼らは、死の天使の存在を知ることで全てを察しったのだ。

 ガーディアンの戦士として今日まで命を賭けてきた死闘は、死の天使との決戦を見据えた調整のための練習試合でしか無かった。

 そのためにどれだけの無辜の人間たちが、何も知らないガーディアンの戦士たちが命を落としただろうか。


「…もう馬鹿らしくて嫌になるぜ、いっそ正義の味方なんて辞めてやるか…。 お前はこれからどうする気だ、優等生?」

「戦うさ、理由はどうであれこの星を守るのが僕達ガーディアンの役目だ。 そして全てが終わったら、色部司令に真実を公開して貰う!!」


 この星の未来を守るために必要な事であった、そう言えば聞こえはいいだろう。

 しかし実際に犠牲になった者やその家族の前で、そんな戯言が通じるとでも思うか。

 正義と悪の戦いと言う茶番に巻き込まれて人生を狂わされた者たちのためにも、この事実を闇に葬らせる訳にはいかない。

 大半のガーディアンの戦士たちが死の天使たちとの戦いを前に覚悟を決める中、白木だけはこの戦いの後のことに対して決意を固めていた。

 その姿は真の意味での正義の味方のようであり、この青臭い決意を前に留目は何時もの憎まれ口を叩くことが出来なかった。











 白木がある決意を固めている時、彼のかつての相棒であった女性もまた一つの決断をしていた。

 三代ラボ、東日本ガーディアン基地の一角にある三代(みしろ)の研究施設、そこで二人の女性が向かい合っている。

 一方は長い黒髪に強い意思を感じさせる瞳が印象的な美しい女性が、片腕に持った杖で自身の体を支えていた。

 一方は黒髪を短くまとめている眼鏡を掛けた小柄の少女で、研究施設に相応しい白衣を身にまとっていた。

 杖を持つ女性、黒羽(くろは) 愛香(あいか)は目の前に立つ白衣の少女、セブンに対して決然とした口調で己の意思を表明する。


「八重くん、以前に受けた君の提案を受け入れよう。 大和のために私を改造してくれ」

「…本当にいいの?」

「覚悟は出来ている、事は大和だけでは無くこの星の未来が掛かった一大事だからな…」


 それは以前にセブンが黒羽に対して持ちかけた、欠番戦闘員こと大和の強化プランに協力の了承であった。

 死の天使の存在が明かされる以前より、セブンは大和が今後も戦いに巻き込まれるであろうことを半ば確信していた。

 白仮面、リザド、二面怪人、これらと互角に渡り合い、現在も生き残っている欠番戦闘員はこの星で最強と呼ぶに相応しい存在である。

 セブンは大和を生き残らせるための手段として、三代と共にある強化プランを考案した。

 そしてこの強化プランには大和と共に戦場にたつ者が必要であり、元ガーディアンの戦士である黒羽にその白羽の矢が立ったのだ。

「まあ状況が状況だからね…。 死の天使、宇宙から襲来する侵略者、もしくは破壊者か…。

 まさかこんなとんでもない真実が隠されているとは思わなかったわよ…」

「そのために私たちは作り出された、死の天使に対抗しうる兵器を作り出すために…」


 全ては死の天使に対抗するために、最強の怪人を作り出すことを義務付けられて誕生したセブン。

 自身の生み出された意味を理解したセブンは僅かに動揺しているのか、普段と比べて言葉尻に何処か力が無い。


「解った、すぐに施術の準備を行う。 もう一刻の猶予も残されていない」

「私も手伝うから、安心しなさい」

「…よろしくお願いします」


 しかしその僅かな動揺は一瞬で掻き消え、次の瞬間には何時もの感情を感じさせないセブンに戻っていた。

 欠番戦闘員こと大和の強化プラン、それを成すには黒羽を戦闘に耐えうる体に改造する必要がある。

 死の天使たちの決戦前に黒羽を間に合わせるためには、すぐにでも施術を行う必要があるだろう。

 やると決めたら一直線とばかりに、セブンと三代は慌ただしく施術の準備を始めるのだった。











 黒羽が自身の体を改造する事を決意した時と同じく、元戦闘員である丹羽(にわ) 大和(やまと)もまた決断を迫られていた。

 死の天使、宇宙からこの星にやってくる破壊者の存在。

 これまでガーディアンだのリベリオンだの正義だの悪だの言っていた戦いが、死の天使との決戦に備えた前哨戦でしか無いと言うのだ。

 世間で欠番戦闘員と呼ばれている存在である自分もまた、恐らくその決戦に参加せざるを得ないだろう。


「世界を守るためねー、何かスケールが大きい話になったな…」


 先の二面怪人戦のダメージがようやく回復して動き回れるようになった大和は、何となしに街をうろついていた。

 大和の頭の中には例の死の天使とやらの事で一杯になっており、この星の危機という途方もない事態を受け止め切れられていないようだ。


「…大和くん、少しいいかな?」

「あなたは…、確か灰谷(はいや)さん…」


 そんな時、悩む大和の前にガーディアン最強の戦士である自称ロートルの男が現れた。

 灰谷(はいや)、かつて警察官であった大和の父の部下であり、大和の父に命を助けられた男。

 その恩を返すためにこの男は、先の二面怪人戦で大和を救うためにリベリオンの怪人たちと大立ち回りをしてくれた。

 何かを決意したかのような厳しい顔付きであられた灰谷、一体どのような目的で大和の前に姿を見せたのだろうか。



先週の連休中に後一回は更新しようと書きましたが、色々あって更新出来ませんでした…。

すいません…。

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