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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2章 欠番戦闘員
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5. 友達


 セブンの住居であるワンルームのアパート内で、シャツにジーパンと言う平凡な私服を纏った大和が、とある高校のブレザータイプの制服を着たセブンが向き合って座っていた。

 彼らの間に置かれたテーブルの上には、大和が途中で購入してきたペットボトルの飲み物やお菓子が置かれている。

 時々に菓子をつまみながら、大和は久しぶりにあったセブンとの雑談に興じていた。


「…で、どうですか、学校生活は?」

「時間の無駄。 出来ることなら、研究に集中したい」


 セブンは伊達や酔狂だけで制服を着ている訳ではなく、有ろうことか彼女はとある学校で高校1年生をやっているのだ。

 その高校は聞いた話では大和が通っている所よりは二段階ほどレベルが高い女子高らしく、以前に制服を着たセブンを見た大和の母が大層驚いていた。

 勿論、研究第一のセブンが自分から高校に通う筈がない、とある事情で彼女は強制的に高校生活を送らされているのだ。


「やっぱり慣れませんか…。

 一体どういう事情があって博士を学校に通わせているんですかね、その協力者という人は…」

「意図は不明。

 しかしこの条件を飲まなければ施設の利用を許可しないと言われれば、逆らうことは出来ない」


 セブンがリベリオン日本支部を脱出した目的は、最強の怪人を生み出すために必要不可欠と彼女が考えているバトルスーツの研究を行うためである。

 幾らリベリオン日本支部で開発主任を任されていたセブンの優秀な頭脳があっても、それなりの施設が無ければ研究は行うことが出来ない。

 そのためセブンはリベリオン日本支部を脱出した後に、バトルスーツの研究を行える施設を見付けなければならなかった。

 用意周到なセブンは脱出前から既にとある研究施設に目を付けていたらしく、現在はその施設で思う存分バトルスーツの研究を行っていた。

 しかしセブンに取って誤算だったのは、その研究施設の主が施設を貸す条件としてセブンに一つの要求を付けたことだった。

 他の研究施設にあての無いセブンはその要求を呑まざるを得ず、こうしてセブンは四月から大和と同じように高校へ通う羽目になってしまった。


「そもそも既に私は施設理由の代価として、怪人製造の研究で培ったデータの一部を提供している。

 後になって条件を追加するのはルール違反と言える」

「何か理由でもあるんですかね、博士に一般常識を身に着けさせようとしているとか?

 …そういえばいい加減、その研究施設とやらの場所を教えてくださいよ」

「その内、あたなを研究施設へ連れて行く用事ができる。 その時になったら解る」


 当初の話ではリベリオン開発主任をやっていた時に培った研究データを代価に、セブンは研究施設の理由を許可して貰っていたらしい。

 リベリオンの怪人製造技術は秘中の秘である、その情報はリベリオンの外の人間から見たら垂涎の的である。

 仮にもかつて自分が所属していた組織の情報をあっさり売るセブンを恩知らずと言う人間も居るかもしれないが、自身の研究を第一と考えるセブンは喜んでその謗りを受けて目的を果たそうとするだろう。

 兎も角、研究施設の利用の代価としては十分な物を提供したにも関わらず、突然になって新たな条件を追加した施設の主に対してセブンは憤りを隠せずにいた。

 大和はセブンの話でしかその施設の主を知らず、その施設の場所さえ教えられていないので適当な推測しか出来ないのだが、彼もセブンを学校に通わせた施設の主の意図は測りかねていた。






「まあ、事情はどうあれ博士も今では高校生ですからね、もう学校で友達とかは出来たんですか?」

「必要ない」

「…そう言うと思ってましたよ」


 自身のこともあるので余り言える立場では無いが、今の所セブンの高校生活は彼と同じように寂しい物であるようだ。

 あえて大和とセブンの違いをあげるなら、大和は友人の居ない状況に密かに不安を覚えているが、セブンは現状に不安を全く覚えていない所だろう。

 セブンとしてはあくまで研究施設の利用のために義務として通っている認識のため、現状も最低限にしか学校に通っていないらしい。

 セブンの優秀な頭脳にとっては高校レベルの授業などは時間の無駄と言い切れるし、学校には身体能力に自身の無い彼女としては鬼門となる体育の授業も存在している。

 留年は禁止されているので最低限の出席日数は確保するつもりのようだが、セブンは真面目に学生生活を送るつもりは無く、友達なども必要ないと考えていた。


「でもこれからも学校に通うんですから一人くらい友達を作った方がいいですよ。

 後三年間、ずっと一人で過ごすのはまずいんじゃ…」

「…そういうあなたの方はどうなの、大和?」

「い、今は居ませんよ。

 けど俺は戦闘員になる前には学校に友達が居たようですから、その内出来ますよ、きっと、多分…」


 確かに今の大和には学校で友達が一人も居ないが、母の話ではかつて学校に通っていた時には少なくない友達が居たらしい。

 残念ながら記憶喪失前に友達だった面々は既に高校を卒業しているが、少なくとも大和には友達が居たと言う過去があるのだ。

 過去の記録から勇気を貰って、大和は学校で友達を作ることを一応は諦めていなかった。

 最も大和の頭からはその友達を作った時の経験がすっぽり消えているので、過去と同じように友達を作るための行動を起こせずに現状を打破できていないのだが…。


「兎に角、博士も一人くらい友達を作るべきですよ。 早く友達が一人も居ない状況は脱した方がいいです」

「失礼な。 私にだって友達の一人くらいは居る」

「えっ、それはもしかしてクィ…」


 自分のことを棚にあげて発破を掛ける大和に、セブンは心外だと言った様子で自分に友達は居ると述べる。

 セブンの言う友達が誰を指すのか考えた大和は、すぐにあの蜂型の女怪人の姿を思い浮かべた。

 確かにあの怪人とセブンは友達と言っていい間柄だったろう、しかしもうあの怪人とセブンが一緒に居る光景は見ることは出来ない。

 大和はセブンの心情を察して表情を曇らせ、その友達と呼ぶ存在があの女怪人であるか確認しようとする。


「そう、あなた」

「…………えっ、俺ですか?

 俺と博士はどっちかと言うと、上司と部下じゃ…」

「既に私たちはリベリオンを抜けた。

 もう私は開発主任では無いし、あなたは開発主任付きの戦闘員ではない。

 なら、私たちの間柄は友達と呼べる関係なったと思うのだが、その認識は間違っている?」


 しかし大和の予想に反して、セブンはたった一人の友達として自分のことをあげてきた。

 セブンとしてはリベリオンを抜けた時点で彼女の大和の関係は、主従関係から別のものに変わったと思っていたらしい。

 

「はははっ! 俺と博士が友達ですか、それはいいですね!!」

「? 何がおかしい?」


 セブンには助けられた恩も有るし、記憶喪失後の大和の視点では彼と一番縁の深い人間でもある。

 例え上司と部下の関係では無くなっても大和はセブンとの縁を切るつもりは無く、それならば二人の関係は友達と言ってもいいかもしれない。

 セブンに取っては深い意味の無い言葉だったろうが、大和は彼女の言葉に救われた気がしていた。

 学校では半ば自業自得とは言え孤立した状態が続き、家に帰っても過去の大和が戻ってくることを望んでいる母しか居ない。

 今の大和という存在を誰も見てくれていない中で、セブンだけが今の自分を友達と呼んでくれたのだ。

 今日は大和によって喜ばしい日である、この日、記憶喪失後の彼の視点で始めての友達が出来た瞬間であった。

 額に手をあててオーバーに喜び続ける大和の姿を、セブンは首を傾げて不思議そうに見つめていた。











「…そういえば博士、今日は何で俺を呼んだんですか?」


 今日、大和はセブンに呼び出されて彼女の部屋に訪れていた。

 学校や自宅に居るよりは戦闘員時代の自分を知る彼女の部屋に居る方が個人的に気が楽なので、大和としては呼び出されたことに全く不満は感じていない。

 しかしセブンが世間話のために自分を呼んだとは考え難いので、彼女は何か大和の手が必要な用事があるのだろう。

 

「では本題に入る。 今日はあなたにお願いがあって此処に呼んだ」

「お願い…、ですか」

「バトルスーツの研究を次の段階に進めたい。 大和にはその手伝いをして欲しい」


 リベリオンに居た頃のセブンなら、お願いなんて言い方はせずに大和に対してやれと命令するだけだったろう。

 ここでお願いという形を取ることからも、セブンにとって大和は一方的に命令を下せる部下と言う立場で無くなったことへの証左と言える。

 セブンは大和に対して、単刀直入に自身の研究を手伝いを要請する。

 

「いいですよ、俺でよければ何でもやりますよ」

「助かる」


 セブンの願いに対して、大和もまた単刀直入に了承の返事を返した。

 自身を友人と呼んでくれたセブンを助けたいという気持ちと、かつて9711号と呼ばれていた頃にセブンの下で雑用をやっていた頃を思い出がこの即答を引き出したのだろう。

 大和は恐らくまたセブンの雑用でもやらされるだろうと早合点して、手伝いの内容をろくに確認せずに同意してしまったのだ。

 ここで大和が手伝いの内容を詳しく聞いていたら、彼の今後の人生は平穏なまま終わったに違いないだろう。

 しかし大和は自分から選んでしまったのだ、自身の今後の運命を大きく左右する選択を無自覚のまま…。

 


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