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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第2章 そして時は来た
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14. 観戦者たち


 ガーディアン東日本基地無いの一角にある研究施設、通称三代ラボ。

 そこでは前回のリザド戦と同様に、白木たち経由で大和と二面怪人との戦いの映像が送られいた。

 画面越しに大和の戦いを見守るのは、セブン、黒羽、三代という何時ものメンバーである。

 セブンと三代と言う研究者たちは二面怪人と言う存在が興味深いのか、何処か目を輝かせながら画面に映るそれを凝視している。

 一方の黒羽は純粋に大和を心配しており、二面怪人と言う存在に対して危機感を抱いているようだ。


「三代さん、大和に勝ち目は有ると思いますか?」

「正直厳しいと思うわよ、本当にあの二面怪人がナインって子が言う通りのスペックを持っているのならね…」


 欠番戦闘員こと大和が白仮面を降し、最強の怪人であるリザドと互角に渡り合った秘密はデュアルコアに有るだろう。

 デュアルコア、全く同じ性質を持つ兄弟コアを使うことで、大和は二つのコアを同時に使用することを可能にしていた。

 二つのコアを同時に開放した時の力は絶大であり、それは戦闘員でしか無い貧弱な大和の性能を補うに余り有る代物である。

 しかし今回の相手はよりにもよって、大和と同じように二つのコアを同時に操つれると言うのだ。

 コアの力で優劣が付けられない場合、戦闘員でしか無い大和は完全な怪人である二面怪人との肉体的なスペック差に苦しめられることは間違い無いだろう。


「私があなた方の話を受けていれば…」

「否、あの場であなたが即答していても結果は変わらなかった。 絶対的に準備時間が足りない…」


 絶体絶命の危機に陥っている大和を前にした黒羽の胸の内には、激しい後悔の念が溢れていた。

 今後も戦いが続くであろう欠番戦闘員こと大和の性能を引き上げるために、セブンと三代が考案した強化プラン。

 以前にこの強化プランに協力を持ちかけられていた黒羽は、未だにその返事を保留した状態であった。

 もし強化プランを進めていたら現在の大和の不利を覆せていたのではと嘆く黒羽、しかしその思いをセブンは冷静に否定する。

 セブンたちが強化プランの内容をまとめ、黒羽にこの話を持ちかけたのはつい先日の事であった。

 例え黒羽があの場で即答していたとしても、実際に強化プランを実施する時間はセブンたちは無かったのである。


「二面怪人、ね…。 結構な代物を考えたようね、あなたたちのご同輩は…」

「…」

「さて、何の事だか解らないな…」


 二面怪人、人間と怪人を組み合わせることで、二つの顔と二つの性質を持つに至った全く未知の存在。

 それを自力で作り出したナインを褒め称えながら、三代は意味ありげな表情で自分の背後に居る同僚に視線を送った。

 そう、この三代ラボで大和たちの戦いを観戦していたのは、彼女たちだけでは無かったのだ。

 色部 四郎、ガーディアンの創設者である色部司令の親類とされている、三代と同じガーディアンのバトルスーツの研究者。

 まるで女性陣に遠慮するかのように距離を置いていた白衣姿の優男は、苦笑いを浮かべながら否定の言葉を口にした。


「現時点で最強と称される戦績を持つ欠番戦闘員を作り出したNo.7、その欠番戦闘員を上回る可能性を秘めた二面怪人を作り出したNo.9。

 それに比べてNo.4は酷い物よねー、やっていることは気持ち悪い魔法少女型のスーツ造りだもの」

「気持ち悪いとは何だ!? あれこそ至高の美だ、人類が至るべき極地なんだよ!!」


 この男がセブンやナインの同類であると推測している三代は、立て続けに四郎に対して挑発気味な言葉を投げかける。

 しかし当の四郎は自分が卑下された事は兎も角、彼の愛する魔法少女型スーツが貶された事が許せないらしく過剰な反応を示す。

 先程までの飄々した態度をかなぐり捨てて、熱く魔法少女愛を語りだした四郎の姿ははっきり言って狂人のそれである。

 それは三代たちの会話を横で聞いていた黒羽などが、まるで犯罪者を見るかのような視線を四郎に向ける程の気持ち悪さであった。










 三代ラボに居る三代たちと同じく、欠番戦闘員こと大和と二面怪人の戦いを観戦している者たちの姿がそこにあった。

 リベリオン首領、ガーディアン総帥と言う二大巨頭、そしてクィンビーと白仮面と言う異色のメンバーである。

 世界の真実を知るために白仮面の案内でこの場所に乗り込んだクィンビーは、自身を怪人へと改造した怨敵と言うべき者たちと並んでいる現状に苛ついていた。

 しかし人間であった頃の幼馴染の体を持つ元戦闘員の事も無視できず、今のところは大人しくしているようだ。

 それは白仮面、かつて丹羽 大和と呼ばれていた物の記憶を持つ人工怪人としても、現在の丹羽 大和である欠番戦闘員の事が気になるのだろう。


「ほう、どうやら理屈倒れでは無かったようだな」

「兄弟コアに頼らないコアの同時起動の可能性、これは今後の研究に注視せねば…」


 リベリオン首領はガーディアン総帥は、二つのコアを同時起動させる離れ技を行った二面怪人の性能にご満悦らしい。

 画面上でデュアルコアを持つ欠番戦闘員を圧倒し始めた二面怪人、それは彼らが求めていた新たな可能性と言えた。

 現時点での最強である欠番戦闘員を上回る新たな力、より強い力を求める正義と悪の二大巨頭に取って現在の状況は望み通りの展開といえる。


「あんたたちは何を考えているの? どうしてそこまで力を求める…」

「まあ待ちなさい、話は戦いが終わってから…」


 クィンビーには理解出来なかった、貪欲なまでに力を求める正義と悪の二大巨頭の姿を…。

 ガーディアンとリベリオンは宇宙から送り込まれた超技術をそれぞれ保有している、その他の勢力とは隔絶した戦力を保持している。

 既に彼らはこの星を支配するに十分な力を持っており、唯一敵となりうる組織も裏でトップ同士が手を取り合っている有様だ。

 どう考えてもこれ以上の力は不要であるにも関わらず、彼らはより強い力を求め続けていた。

 それは一体何故なのか。


「…あななたちは何に怯えているの?」

「っ!?」


 リベリオン首領はガーディアン総帥と直接顔を合わせ、二面怪人と言う新たな力に夢中になっているその姿からクィンビーは彼らの怯えと期待を読み取った。

 力を求めるという事は今の力では足りないと言うことで有り、それは今の力では太刀打ちできない何かが存在する事を意味している。

 今のままでは足りない、しかしこの力が有れば届くかもしれない。

 そんな思いを察したクィンビーが投げかけた言葉は、確かに正義と悪の二大巨頭を揺さぶったようだ。


「君は思った以上に優秀な子のようだね…」

「いいだろう、この戦いが終わったら本当に時間を作ってやろう」

「勝敗の決まった戦いなんて、見ていてもつまらないと思うけどね…。 まあいいわ、もう暫く付き合って上げるわ」

「勝敗が決まった戦いか。 確かに両者のスペック差は隔絶している、欠番戦闘員の伝説も此処で…」

「何を馬鹿なことを言っているの! 勝つのは大和、欠番戦闘員よ…。 あいつがあんな人形なんかに負ける筈無いじゃない」


 コアの数は互角となり、肉体的な性能で水をあけられているがある大和は、二面怪人に対して総合的な性能で大きな差が生まれていた。

 その性能差を表すように画面上では二つのコアの力を前回にした二面怪人が、確実に欠番戦闘員を追い詰めている。

 しかし現在の劣勢を前にしても尚、クィンビーは高らかに欠番戦闘員こと大和の勝利を予想して見せるのだった。

 


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