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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第2章 そして時は来た
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2. 蜂型怪人専用


 重ねて言うが此処は黒幕たちが運営する極秘施設である。

 こんな場所で派手な戦闘をしよう物なら、潜入中のクィンビーの存在に気付かれることは明白だろう。

 互いに頭に血が上りながらも場所を変える程度の思慮は残っていた両怪人たちは、極秘施設を離れて戦いの場に相応しい場所へと移動していた。

 念のため極秘施設から距離を取ったそこは、人の気配が全く感じられない木々が生い茂る森の中であった。

 此処であれば派手な戦闘をしても誰に迷惑が掛かることも無く、戦いに横やりが入ることは無いだろう。


「…まあ、この辺りでいいでしょうね。 ギタギタにしてやるわよ、大和」

「…図に乗るなよ、春菜」


 互いに剣呑な表情を浮かべるクィンビーと白仮面の姿は、まさに一触即発と言う形容が相応しいだろう。

 白仮面はその名前の由来となった白い仮面で顔を覆い、腰にはセブンの作品であるベルト型インストーラを巻いている。

 対するクィンビーは本来の姿である蜂型怪人の姿を見せており、何処から取り出したブレスレット型インストーラを腕に嵌めていた。


「「変身っ!!」」


 インストーラを起動させるために音声入力、白仮面とクィンビーの声が期せずして重なった。

 そして次の瞬間、各々のインストーラに嵌められたコアが光を放ち、両怪人の首から下を覆ったでは無いか。

 光は数秒と経たずに消え去り、そこにはバトルスーツを装着した両怪人の姿があった。






 白仮面のそれは顔を覆う白い仮面に合わせたような、白系統のスーツ型バトルスーツである。

 白い仮面に白いスーツに白い手袋に白いブーツ、ベルトに嵌められたコアだけは金色に輝いていた。

 一方のクィンビーもまたスーツ型のバトルスーツを纏っており、それは白仮面とは対象的な黒いスーツであった。

 しかし黒いスーツの上に身に付けているブレストアーマーやガントレットは、蜂型怪人である事を意識した黄色の斑模様がデザインされている。

 そして首から下のバトルスーツ展開が完了したクィンビーは、腰に折りたたまれて設置されていたフルフェイスマスクに手を伸ばしてそのまま被った。


「欠番戦闘員二号だったか…、そんなまがい物スーツで何が出来る?」

「はん、試して見る?」


 欠番戦闘員二号、それはかつてクィンビーが戯れに名乗った名前であった。

 蜂型怪人クィンビーであることを隠して行動するため、ガーディアンの技術者である三代に作られせた専用のバトルスーツ。

 欠番戦闘員の仲間であることをアピールするため、欠番戦闘員こと現在の丹羽 大和が使用する怪人専用バトルスーツのデザインを真似た物である。

 しかし見た目こそ欠番戦闘員と同系統のバトルスーツであるが、かつてクィンビーが着けていたそれは見掛け倒しの張りぼてでしか無かった。

 バトルスーツの心臓とも言えるコアに正式コアの力には到底及ばない簡易コアが使用されたそれは、実質的に装着者であるクィンビーに何の恩恵も与えない。

 当時クィンビーが欠番戦闘員二号と名乗った時に纏っていたバトルスーツは、自信が怪人であることを誤魔化すためだけの代物であったのだ。

 張りぼてのスーツを纏って虚勢を貼ろうとするクィンビーを嘲笑う白仮面であったが、対するクィンビーはあくまで強気な態度を崩さない。

 そしてクィンビーはそのまま、白仮面に向かって正面から向かって行った。


「はぁぁぁぁぁっ!!」

「お前の攻撃など俺には…、っ!? 何だ、この力は…」


 デュアルコアを全開にした欠番戦闘員には敗北した物の、逆を言えそれ以外の相手に負けたことが無い白仮面。

 こちらに向かってくるクィンビーに対して白仮面は、格の違いをみせてやろうとでも考えたのか真正面からクィンビーの攻撃を受け止めようとする。

 しかし白仮面の侮りは、クィンビーの先制攻撃である欠番戦闘員を思わせる豪快な右ストレートを受け止めた瞬間に吹き飛ばされることになった。

 それは白仮面が全く予想していなかった衝撃、まるでデュアルコアを全開にした欠番戦闘員の攻撃を受け止めた時のような感覚だった。

 全力を出すのが後一瞬遅れていれば、クィンビーの拳は防御を貫いて白仮面の顔面に命中していた事だろう。


「ほら、どんどん行くわよ!!」

「くぅっ…、舐めるな!!」

「おっと、危ない危ない!?」


 クリーンヒットこそ叶わなかったが、白仮面に自分の攻撃が通じることを理解したクィンビーはそのまま近距離での殴り合いを続ける。

 その姿と相まって欠番戦闘員と見紛うクィンビーの戦いぶり、それに対して白仮面は拳の弾幕をいなすことで精一杯であった。

 やがて業を煮やした白仮面は怒りの声をあげながら、バトルスーツに備わるコアの特殊能力を発動させた。

 コアのエネルギーの武器化、白仮面の意思によって虚空より現れたエネルギーの長剣は一直線にクィンビーへと向かっていく。

 しかし密かに白仮面の特殊能力を警戒していたらしいクィンビーは、現れたエネルギーの長剣に驚くこと無く冷静に距離を取って回避する。

 白い仮面と覆われた白仮面と、黒いフルフェイスマスクで覆われたクィンビー。

 互いに表情がわからない両者であるが、恐らくクィンビーと白仮面が今浮かべている顔は互いに正反対の物であろう。











 クィンビーとの距離を取った事で一息付けた白仮面は、クィンビーの変わりようについて考える時間を作る事ができた。

 蜂型怪人クィンビー、妃 春菜と言う少女を素体にして、蜂の要素を合成することで誕生したリベリオンの怪人。

 その真骨頂は戦闘用に調整された大蜂の使役能力と、蜂の特性を応用して作られた毒針弾などの中距離戦闘である筈だ。

 少なくとも白仮面の知るクィンビーは、バトルスーツを纏う今の自分相手に近接戦闘で互角以上の戦いを演じられるような性能を持っていない。

 しかし現実にクィンビーは白仮面相手に殴り勝つと言う、欠番戦闘員一号と同じような事をやってのけたのだ。

 姿形だけで無く戦闘スタイルまで似始めたクィンビーの姿を忌々しげに睨みつけていた白仮面は、次の瞬間にある事実に気付く。


「…腕のインストーラ、そこに嵌められたコアの光はまさか!?」

「あら、やっと気付いた? あんたも相変わらず察しが悪いわよねー、私が何時までのハッタリにしか使えないバトルスーツを使っていると思っているの」

「…改造したのか、そのスーツを真の意味でのバトルスーツに!?」


 白仮面が気付いた事、それはクィンビーの腕に嵌められたコアから溢れんばかりに放たれる光であった。

 それは簡易コアでは絶対に出せない力の波動であり、その事実は白仮面に対してある事実を告げていた。

 あのバトルスーツは一年前のは別物であり、恐らくあれがクィンビーの格段に上がった戦闘能力の理由である。

 そしてクィンビーは白仮面の推測を裏付けるように、自信満々の様子で腕に嵌めたインストーラを掲げて見せた。






 一年前の戦いでクィンビーのバトルスーツに簡易コアが使われた最大の理由は、クィンビー用の正式コアが用意できなかったからでは無い。

 例え正式コアを使おうとも、あの時のバトルスーツではクィンビーの性能の大幅な上昇は望めないことが解っていたからだ。

 怪人にバトルスーツを使わせると言う事は、口で言うのは簡単であるが実際にやろうとすると極めて難しい。

 何故ながら怪人は怪人として付与された独自の能力を持ち、バトルスーツはコアの個性を利用した独自の能力を持つ。

 何も考えずにただ怪人に対してバトルスーツを着せたら、互い能力を殺し合う悲惨な結果を生むことになるだろう。

 これを回避する方法は二つ有る、一つはバトルスーツの機能を阻害する個性や能力を持たない真っ白な怪人を用意する事である。

 これは怪人の出来損ないであり余分な能力を持たない戦闘員である現在の大和や、バトルスーツの使用の前提に製造された人工怪人である白仮面があたるだろう。

 しかしこの方法では既に製造されている、独自の能力を備えた怪人たちには適用できない。


「…だから私はもう一つの方法を取った。バトルスーツの方を蜂型怪人専用に改造し、私の個性を殺すこなく最大限に活かせるようにしたのよ」

「…それがこの一年間、お前が動かなかった理由か、春菜!? 自分専用のバトルスーツという武器を手に入れるために…」

「バトルスーツの改造自体は半年程度で終わったわよ、逆に言えば半年も掛かったけどね…」


 一年前の戦いで大和と白仮面の戦いを見ているだけしか出来なかった事を悔やんだのは、何もガーディアンたちだけでは無い。

 それは自信家であるクィンビーに取っても屈辱的な事であり、そんな気位の高い女王蜂様が何時までの戦力外のままで居る筈も無かった。

 リベリオンのガーディアンを操る黒幕たちを追うことを心に決めていたクィンビーは、三代やセブンの力を半ば強引に借りて専用のバトルスーツの開発をさせた。

 そして凡そ半年ほどの長い月日を経て、完成したのが今のクィンビーが纏う蜂型怪人専用バトルスーツである。

 それは新世代と呼ばれているリベリオンの怪人が使う粗悪なバトルスーツとは全くの別物であり、怪人の専門家であるセブンとバトルスーツの専門家である三代の合作とも言うべき代物であった。


「もうあんたにでかい顔はさせないわよ、大和!!」

「面白い! 此処からは本気で相手をしてやるよ、春菜!!」


 自信の性能を最大限に底上げしてくれる真の意味でのバトルスーツを手に入れたクィンビーは、白仮面や欠番戦闘員と同じ土俵に上がったと言える。

 直接矛を交えたことでその事実を実感した白仮面は、かつて幼馴染と戦うことに対する躊躇いを今度こそ捨て去った。

 心の奥底でクィンビーの身を案じていた白仮面であったが、目の前の相手にそんな気遣いをしている余裕は無いと実感したのだろう。

 クィンビーへの気遣いであったコア出力80%と言う手加減を止めて、その言葉通り出力100%解放の全力を出すことを決意する白仮面であった。




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