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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第2章 そして時は来た
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0. 姉妹機


 宇宙から送り込まれた未知の技術、コアの製造技術と生物の合成技術。

 十年以上経った現在においても、人類は未だにこれらの技術を完全に使いこなせてはいない。

 決して進歩が無いわけでは無い、十年前の物に比べればガーディアンの戦士もリベリオンの怪人も格段に強くなっている。

 ガーディアンとリベリオン、世界を二分する正義と悪の戦いを通してこられの技術は日進月歩で成長していた。

 それは正義と悪の対立関係を意図的に引き起こしている黒幕たちが、望んだ通りの展開と言えただろう。

 しかしある目的のためにより強い力を求めている黒幕たちには、現状の進歩だけでは足りなかったのだ。


「…そして私達は生み出された。 生物の合成技術を応用して、ただただ強力な怪人を作り出すためだけに人為的に作られた存在。

 ナイン、私はその九番目の製造物」


 生物の合成技術を応用した怪人と呼ばれる兵器、この兵器の性能を高めることだけが彼女の存在意義である。

 まだセブンがリベリオンの開発主任として怪人の研究に明け暮れていた頃、ナインもまた同じように怪人の研究を行っていた。

 しかし当時のナインはセブンと違い、リベリオンと言う名の悪の組織には直接属していなかった。

 ナインは正義と悪の戦いに距離を置いている、言うなれば黒幕サイドの直属で怪人の研究を行っていたのだ。

 しかし与えられた個人用の研究室内で端末と向かい合うナイン、中学生くらいにしか見えない白髪の少女の姿は何処か気怠げである。

 誰に教えられる事も無く自ら調べ上げた自信の存在理由を口に出しながら、彼女の胸の中に蟠りのような感情が芽生えていた。


「…私は何のために生きているのか」


 それはつい先日まで、彼女が全く気にすることが無かった疑問であった。

 生まれた時から怪人の研究を行っている彼女には、その人生の全てが怪人に関する事柄で彩られている。

 ただ言われるがままに怪人の研究をしていた少女が抱いた初めての疑問、この疑問を解消するために彼女は危険を犯した自らの素性を探った。

 そして苦労して手にれた自らの真実は、残念ながら彼女の疑問に対する答えとはなりえなかった。

 自信が怪人を研究するために生み出された事は理解した、しかしだからと言って何も考えずにただ怪人を研究続けていいのか。

 自らの存在意義について悩むその姿は、見た目は中学生にしか見えない幼い少女には相応しい物に見えた。






 その素性や立場は一般人と全く異なりながらも、自らの存在意義について悩んでいたナイン。

 そんな彼女が何気なしに眺めていたとあるデータベースの情報は、彼女の細やかな悩みなどを吹き飛ばすほどの衝撃をもたらしたのだ。


「これは、新しい怪人の設計思想…? 凄い、こんな方法があったなんて…」


 黒幕サイドの存在であるナインに取って、リベリオンの情報など筒抜けも同然であった。

 リベリオンの最大機密である怪人についての技術情報も勿論、この時代のナインには見放題である。

 ある日、ナインが何気なくリベリオンの技術情報がまとめられたデータベースを調べていた時、彼女はその画期的な設計思想に出会った。

 それは怪人製造のためだけに人為的に頭脳を発達させた、作られた天才であるナインから見ても目を引く代物である。

 ナインは齧り付くようにディスプレイを睨みつけ、そこに映し出されるデータを読み解いていく。


「セブン、この名前はもしかして…」


 そしてナインがこの画期的な設計思想を生み出したリベリオンの研究者の名前を確認した時、彼女は直感的に理解した。

 これは自分と同類の仕事である、この時ナインは自分と同じ存在がこの世に存在することを初めて知ったのだ。

 それは考えてみれば当然の事であった、ナインなどと言う名を与えられた時点で少なくとも自分より前に八体の同類が居る可能性が有るだろう。

 自らの素性について調べた時にもう少し詳しく追っていれば、ナインは自分の姉妹機の存在についても解っていたかもしれない。


「…負けない、私は絶対にあなたより強い怪人を作って見せる!」


 それもまたナインがこれまでに抱いたことの無い感情であった。

 自分の同類が同じように怪人の研究を行い、自分では辿り着けなかった先へと進んでいる。

 その事実はナインの胸の内に熱い物をもたらし、今の彼女には先程までの気怠さなど綺麗さっぱりと消えていた。

 一方的に自信の姉妹機に対してライバル宣言をしたナインはこの後、精力的に怪人の研究に取り込んでいく事になる。






 セブンがリベリオンを脱走したと言う報せを聞いても、ナインは全く動揺しなかった。

 密かにセブンの動向を把握していたナインは、セブンがあくまで自信の研究のためにリベリオンを抜けた事を知っていたからだ。

 そして姉妹機の脱走劇から暫くして彼女の耳届いた欠番戦闘員の活躍が、ナインの期待に応える物であった。


「バトルスーツを纏う怪人、誰に教えられる事無くこれに気付くとは流石はセブン。

 だけど私の人工怪人はあなたの作品を凌駕するわ」


 ナインの怪人研究の集大成、これまで不可能とされてきた人工怪人の製造。

 それはセブンに負けまいと精力的に怪人の研究を行ってきた、ナインの努力の成果でもあった。

 既に性能テストとして数々の任務をこなしている人工怪人、後に白仮面と呼ばれるようになるそれがセブンの作品とぶつかるのも近いだろう。

 白仮面と欠番戦闘員の戦い、言うなればセブンとナインの代理戦争と言える。

 セブンの作品に自分の作品が勝利する姿を思い描くナインの姿は、無邪気な笑みを浮かべる年相応の少女にしか見えなかった。











 結果的に白仮面は欠番戦闘員に敗北した、ナインの作品はセブンの作品に負けたのだ。

 バトルスーツに関する技術力の不足から、肝心のスーツ製造をセブンに任せてしまったと言う悔いは確かにある。

 しかし白仮面の敗北を知った直後のナインはセブンを恨むことは無く、逆に次こそはセブンに勝とうと言う闘志すら湧いていた。

 今度はもっと強い怪人を作ってセブンに挑んでやろうと、ナインは白仮面が敗北した翌日から怪人の研究を再開していた。


「…セブンが怪人の研究を止めた!? そんな馬鹿な!!」


 そんなやる気に満ち溢れていたナインの元に、水を差すような情報が飛び込んでくる。

 何とセブンが怪人の研究から、彼女たちが生み出された存在理由とも言える物から手を引いたと言うのだ。

 最初、ナインはそんな馬鹿なことは有るかと、その報せを信じることは無かった。

 しかし白仮面と欠番戦闘員の決戦から時が経つにすれ、全く動きを見せないセブンの動向に彼女の焦燥が募っていく。

 そして意を決したナインは自らの目で真実を確かめるために、セブンの元に直接向かうことを決めたのだ。


「…何なの、あれは」


 セブン、自分と同じく怪人を研究するために生み出された人でなし。

 怪人を研究する事が存在意義である筈の少女は、ブレザータイプの制服を来ながらクラスメイトと並んで歩いていた。

 変装のためか髪を黒く染め、伊達メガネを掛けているセブンであるが、その容姿は同じ遺伝子情報を使っているナインと瓜二つである。

 一目で自らの姉妹機であると解ったその少女は、クラスメイトの少女の口から出て来る他愛のない話に耳を傾けていた。

 セブンから口を開くことは滅多に無く、クラスメイトの話を聞き流しているているにも見えた。

 しかしセブンはしっかりとクラスメイトの話を聞いており、目の動きや僅かな相槌によって随時反応をしている事が解る。

 恐らくセブンの無愛想さを理解しているのか、クラスメイトの方もセブンの態度に嫌な顔をする事無く話を続けていた。

 それは少し風変わりでは有る物の、何処にでも有る女子高校生通しの有り触れた風景であった。

 その風景の中にナインの同類である筈のセブンが、違和感なく入り込んでいることはナインに凄まじい衝撃を与えた。


「何であなたがそこ居るの。 あなたは私と同じじゃ無かったのか…」


 物陰に隠れながらセブンの女子高校生としての日常を垣間見たナイン、その口から自然と飛び出てきた疑問の声は僅かに震えていた。

 セブン、自分と同じく怪人研究のために生み出された存在。

 これまで一度も会った事も無かった姉妹機はであるが、セブンは自分と同様に怪人の研究だけが人生の全てである存在と思っていた。

 しかしナインの想像とは異なり、セブンは怪人の研究なんて物を放り出して普通の人間の真似事を始めていたのだ。

 その衝撃の事実はナインに対して激しい怒りと、一抹の寂しさを与える事になった。

 やがてナインは自らの感情を制御するため、セブンを自らの役割を放棄した失敗作と断じるようになった。

 失敗作を廃棄処分すると言う建前で行われた、セブンの命を賭けたナインのゲーム。

 様々な人間や怪人を舞い込んで行われたそれは、彼女の壮大な八つ当たりであったかもしれない。


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