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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第1章 新世代
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13. 水と土と


 前門にはリベリオンの新世代たち、後門にはガーディアンの新世代たち。

 なし崩し的に始まった、ガーディアンとリベリオンの新世代と呼ばれる者たちとの戦い。

 欠番戦闘員こと大和を挟み込むように陣取るガーディアンの新世代三人、リベリオンの新世代三体。

 大和には逃げることは許されない、何故ならリベリオン怪人の足元にはセブンを救うためのの情報を持ったナインの怪人が居るのだから。

 この戦いでの勝利条件は相手を全滅させることでは無く、あの狐型怪人フォクスが所持している記憶媒体を手に入れる事にある。

 しかし先程目の前でフォクスを掻っ攫った鳥型怪人フェザーは、こちらの目的を重々承知していると言わんばかりに地面に転がるフォクスを踏みつけて見せた。


「さて、伝説の欠番戦闘員の力とやらを見せて貰おうかな…」

「シャハッハッハ、シャーク様の新たな力を見せてくれる」


 此処で両組織の新世代たちが一度に襲いかかったら、流石の欠番戦闘員も危なかっただろう。

 しかし新世代たちはその選択肢を取ること無く、まずは小手調べとばかりに一人の戦士と一体の怪人が前に歩み出てきた。

 この人数差、そして改造手術やバトルスーツと言う新たな力を手に入れた事による余裕が彼らにこの選択をさせたのだろう。

 ガーディアンの戦士は言うなれば魔法使い型と言うべき、土色のローブのようなバトルスーツを来た男である。

 これまたゲームの魔法使いのような杖型インストーラ、その先端にはコアが土色に怪しく輝いていた。

 リベリオンの怪人は青色のスーツ型バトルスーツに身を包んだ、鮫型怪人シャークであった。

 腕に嵌められたブレストレット型インストーラ、そこに嵌められたコアが水色の光を発している。

 まずはこの連中を倒さなければ道は開けない、覚悟を決めた大和は新世代たちに向かって挑みかかった。






 鮫型怪人シャーク、この怪人は自分が欠番戦闘員に必ず勝利できると確信していた。

 理由はこの怪人が纏うバトルスーツ、その水色のコアが持つ特殊能力にあった。


「シャハッハッハ、貴様のチンケな炎など、シャーク様の激流で全て掻き消してやるぞ」

「…」


 自分に接近してくる欠番戦闘員を前に、シャークはバトルスーツの特殊能力を発動させる。

 ブレストレット型インストーラに嵌められた水色のコアが光り輝き、次の瞬間にシャークの体に水流が纏わりついたでは無いか。

 水を操る力、それが鮫型怪人シャークが手に入れた新たな力であった。

 鮫と言う水中生物をベースに製造された鮫型怪人シャークに適したこの能力は、対欠番戦闘員戦においても大きな効果を発する。

 何故ならば水は火を消す、子供でも知っている簡単な理屈だ。

 シャークは自身の水を操る能力を、炎を操る欠番戦闘員に対抗するに最も相応しい能力と自負していた。


「邪魔ダ、凍ッテイロ!!」

「なっ!?」


 シャークは知らなかったのだ、大和が炎を操る能力が無くなり、代わりに凍気を操る能力を手に入れた事を…。

 欠番戦闘員が一年前のように炎を纏った拳を奮ってくると思っていたシャークは、その光景に驚きを露わにする。

 炎ならぬ凍気を纏った拳はシャークの水流の鎧に到達し、それをシャークの体ごと凍りつかせ初めたのだ。

 全身を凍らせてくれと言わんばかり水流を纏っていたシャークの体は、瞬く間に氷の塊へとなっていく。

 そして動きを封じられた鮫型シャークは、わけの分からない内に大和に殴り倒されてしまうのだった。






 手早くシャークを地面に沈めた大和は、念には念を入れてその腕に嵌っているブレストレット型インストーラに手を伸ばした。

 回収したインストーラをそのまま破壊し、シャークのバトルスーツを使用不能にしておく。

 そして返す刀に次の障害である、ガーディアンの戦士の方に向かう。

 仮にガーディアンの戦士がシャークと戦闘中に背後から攻撃を仕掛けていれば、流石の大和も危うかっただろう。

 しかし自信の現れかガーディアンの戦士は手を出すことは無く、こちらを見定めるかのように大和とシャークの戦闘を観戦していたようだ。


「流石は欠番戦闘員、リベリオンの新世代をあれ程鮮やかに倒すとは…」

「…」


 土色のローブを纏う新世代のガーディアンの戦士の茶木(ちゃき)は、面白い見世物を見たとばかりに顔に嫌な笑みを張り付かせていた。

 思えば一年前の戦いではガーディアンと共闘する事は有れど、直接矛を交えることは終ぞ無かった。

 素性不明の謎の存在ながらも欠番戦闘員は、ガーディアンと同じくリベリオンと敵対する姿勢を見せていた。

 一年前の正義の味方たちは、共にリベリオンと戦う実質的な協力者であった欠番戦闘員を敵に回すような愚かな行為を行わなかったのだ。

 しかし今目の前に居るガーディアンの新世代は、紫野の命と言う大義名分の元に明確な敵意を持って欠番戦闘員こと大和の前に立ちふさがっていた。


「しかしあなたの伝説も終わりだ。 これからは僕達新世代が新たな伝説を紡ぎ出す!!」


 新世代と言う新たなガーディアンの礎となった彼らは、自分たちの力を証明すると言う身勝手な理由で欠番戦闘員に襲いかかかる。

 そして事前に白木から警告を受けていた大和は、初のガーディアンとの戦闘で容赦をする気は全く無かった。

 茶木が足元に杖型インストーラを突き刺すのと、大和が地面に手を伸ばすのは同時であった。

 土を操作する特殊能力、それがこの茶木が纏うバトルスーツの力である。

 今回の戦いの場である廃墟が残された敷地、そこの舗装されていない土が丸出しの地面は茶木の能力には打ってつけの場所であった

 恐らく茶木は手始めに大和の足元の土を操作して、大和の足場を崩して動きを封じようとしたのだろう。

 杖型インストーラに嵌められた土色のコアが輝き始め、大和の足元の土を操ろうと試みた。


「…矢張リ、氷ハ操ツレナイヨウダナ!!」

「馬鹿な!?」


 しかし大和の足元は崩れることは無く、大和は何の障害も無くローブ型バトルスーツを来た戦士の前に到達する。

 茶木の能力が発動しなかった理由、それは先程まで大和が居た足元の地面に貼られている氷にあった。

 足場の土を崩される前に大和は凍気を操る能力で、自らの足元を凍りつかせていたのだ。

 確かに土を操るという茶木の能力の性質上、その対象物が土から氷に代わってしまうと能力が不発に終わってしまう。

 地面を凍りつかせると言う大和の行為は、確かに茶木の能力を防ぐ事から見れば最適な行動と言えた。


「そんな、お前がどうして僕の能力を…」

「寝テロ!!」


 自分の能力が防がれた事に余程驚いたのか、茶木は接近してくる大和を前に無防備を晒していた。

 しかし茶木が呆然とする理由も理解できる、何故なら先程の大和の行動は事前に茶木の能力を知ってでもいなければ到底真似出来ない行為だったからだ。

 種を明かせば大和は茶木の想像通り、事前に彼が持つ土を操る特殊能力を把握していた。

 情報源はファントム、この仕事熱心はサポートマシンは密かにガーディアンに所属する戦士たちのデータを収集していたのだ。

 その名の通り亡霊の如く何処にでも現れるファントムに取って、ガーディアンの戦士の情報を集める事は容易い事だった。

 茶木が意識を取り戻した時には既に大和の拳の射程範囲に入っており、この距離で近接戦闘特化型の欠番戦闘員に勝てる物はまず居ない。

 結局、茶木はそのまま大和に下顎を揺らされ、そのまま意識を失ってしまった。











 水を操作するコアを持つリベリオンの怪人シャーク、土を操るコアを持つガーディアンの戦士茶木。

 この一人の戦士と一体の怪人を同時に相手取る事になった大和は、結果的に言えば彼らを瞬殺した。

 恐らく彼らが大和の新たな能力に動揺する事無く、自身の持てるスペックを全て引き出していたら大和はもっと苦戦していただろう。

 しかしシャークは炎を防ぐために体に纏わせていた水流を、体ごと凍らされた事に動揺してしまった。

 しかし茶木は土を操ろうとする前に、地面を凍らされてしまった事に動揺してしまった。

 結果としてこの新世代たちはろくに実力も発揮する事無く、出落ちとばかりに倒されてしまったのだ。


「ちぃ、シャークめ!? 無様な姿を晒して…」

「ふん、此処からが本番だ。 もう容赦は…」


 茶木の杖型インストーラを破壊しながら、大和は周囲の気配が代わった事を察していた。

 仲間を瞬殺された事には流石に動揺したらしく、新世代たちが色めき立ち始める。

 あの様子では次からは先ほどのように戦力の小出しなどをせず、残りの戦士や怪人たちが一度に大和に襲いかかってくる可能性が高い。

 先程の戦いは能力の相性や事前情報によって圧勝できたが、次からはそう簡単にはいかないだろう。

 大和は仮面の下で苦虫を潰したような表情を浮かべながら、この苦境から逃れる術について頭を巡らしていた。



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