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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2章 欠番戦闘員
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0. 宇宙からの贈り物


 9711号がまだリベリオン日本支部で戦闘員をしていた時、同じようにまだ開発主任をしていたセブンにある質問を投げかけていた。

 怪人やバトルスーツと言う常識の埒外と評していい存在は一体どのようにして生み出されたのか、と以前から思っていた疑問を…。

 記憶喪失の癖に世間の一般常識は頭に残っている9711号は不思議に思っていたのだ、己が認識している人類の文明レベルでは怪人やバトルスーツなんて物はとても作ることは出来ない筈であると。

 この星の技術では人間に蜂やら犬やらの能力を付与して怪人を製造することなど不可能であり、装備一つで自由自在に氷柱を作り出せるバトルスーツも作り出すことは出来ない。

 しかし実際に9711号の周りには、その有り得ない筈の存在がわんさかと居るのだ。

 先日、ようやくまともに会話できるようになった9711号は、この機会にこの疑問を解消しておこうと考えた。

 そこで9711号は、とんでもない事実を耳にすることになる。


「…宇宙からの贈り物ですか? えっ、本当に?」

「本当。 ガーディアンのバトルスーツととリベリオンの怪人の製造技術は、十数年前に宇宙から飛来した人工物から由来している」


 セブン曰く、ガーディアンとリベリオンの技術の元は宇宙から来たらしい。

 その話が本当ならば、この星の文明では考えられないレベルの産物である怪人やバトルスーツなんて物が存在してもおかしくは無いだろう。

 しかし幾らセブンの言葉とは言え、いきなり宇宙からの贈り物なんて嘘くさい話を聞かされても、9711号はその話をすぐ信じることは出来なかった。

 半信半疑な様子の9711号は、担がれている可能性が頭に過ぎってしまいセブンに疑いの目を向ける。

 9711号の疑いの目に気が付いたのか、セブンは宇宙からの贈り物について詳細な説明を試みた。











「…十数年前、この星に宇宙からの飛来物があった、飛来物は大気圏の摩擦でも燃え尽きずに原型を留めたまま地上に落ちた。

 その飛来物は明らかに知性を持った存在によって作られた人工物であったため、調査チームが結成されて人工物の解析が始まった」

「知性体…、宇宙人ってことですか?」

「当時の人間はそう考えた、そのためこの調査は極秘に行われた」


 9711号たちが住む星に落ちてきた人工物はその存在だけでなく、原型を留めてこの星に落ちてきたと言う事実が人類以外の知性体の存在を予見させた。

 人工物が偶然にこの星に落ちてくる確立はそれこそ天文学的なのだ、広大に広がる宇宙を漂っていた人工物が偶然この星に落ちたということは考え難い。

 しかも人工物は地表の大半を覆う海の上で無く、狙い済ましたかのように地上の無人地域に落着したのだ。

 これらの事実を偶然が重なったものと考えなかった当時の首脳たちは、人工物を宇宙人が人類にあてたメッセージなのだと認識した。


「人工物を調査した結果、その内部に私たち人類が使う記録媒体と同じ役割を持つ物が封入されていることが解った。

 記録媒体は二種類存在しており、すぐにその記録媒体の解析作業が開始された」


 宇宙から飛来した記録媒体が人類の規格と一致している訳も無く、記録媒体の内容を読み取ることは難航した。

 それは人類の感覚で言うならば、USBメモリからパソコンを作ると言うような無茶な話なのである。

 その無茶を実現させるため、世界中の頭脳が密かに集められて調査・研究が進められた。


「そして時が経ち、調査チームに居た一人の科学者が記録媒体の部分的な読み出しに成功した。

 その記録媒体には、多種の生物を合成してより新たな生物を生み出すための技術が記録されていた」

「それって…」

「そう。 この技術によって、後に怪人と呼ばれる者が誕生することになった」


 この生物の合成技術が有効活用されていれば、世界に素晴らしい利益を促す筈だった。

 しかし実際にはこの技術は世界に脅威と破壊を与えることになった、一人の科学者の行動によって…。







「記録媒体の読み出しに成功した科学者は、すぐにその技術を自身の体に試した。

 そして生み出された最初の怪人の手によって、生物の合成技術の記録を持つ記録媒体が強奪されてしまう」


 世界の首脳たちが密かに注目していたこの調査には、各国に属するその筋のエキスパートたちの監視下に置かれていた。

 普通なら科学者の暴走は彼らの手によって止められる筈だったのだが、現実はそうはならなかった。

 不可能を可能にした要因はやはり怪人としての力である、宇宙からの技術を背景にした最初の怪人に人類の力は太刀打ちできなかったのだ。

 最初の怪人は仲間の科学者たちをほぼ皆殺しにして記録媒体を奪い、己を止めようとする障害を全て払い除けてそのまま姿を消した。


「記録媒体を奪った科学者はやがて、ある組織を結成した」

「それが…、リベリオンなんですね」

「リベリオンは怪人の製造を初め、その力を背景に世界へ宣戦布告をした」


 記録媒体から読み取った生物の合成技術に魅入られた科学者は、リベリオンと言う名の組織を結成して世界征服を目論んだ。

 一体、その科学者は何を持って世界征服などと言う世迷言を実行しようとしたのか、その心境を窺うことは難しい。

 人類の技術力とは隔絶した宇宙レベルの技術の産物である怪人は、その圧倒的な力で瞬く間に世界を席巻しようとしていた。

 人類の力ではどう足掻いても太刀打ちできなかったであろう、人類の力だけなら…。


「残った一つの記録媒体を持って、後にリベリオン首領となる科学者の手から運よく逃れたもう一人の科学者が居た。

 その科学者はリベリオンの誕生を予期し、それに対抗するために残った唯一の記録媒体に記録されている技術の読み取りを試みた。

 やがて科学者は記録媒体から全く新しいエネルギー源、後にコアと呼ばれるようになる物のの製造方法を読み取ることに成功する。

 そしてそのコアの力を利用したバトルスーツの力を持って、リベリオンに対抗する組織を結成した」

「ガーディアンの誕生ですか…」


 コアから供給される人類にとっては未知の力を使ったバトルスーツは、リベリオンの怪人たちと互角に戦うことが出来た。

 リベリオンの怪人とガーディアンのバトルスーツと言う人類の技術から外れた宇宙技術の力は、他を隔絶するものだった。

 こうしてリベリオンとガーディアン以外の勢力は蚊帳の外に置かれ、実質二つ組織の戦いが世界の命運を左右する状況になったのだ。






「…そんなことがあったんですか」

「一般社会ではこれらの情報は秘匿されているので、知らなくても当然。

 ただしリベリオンやガーディアンに所属する者なら、誰でも知っている話でもあるが…」

「宇宙人も呆れているかもしれませんね、折角送った技術を使って戦いに明け暮れていることを知ったら…」


 記録された生物の合成技術がこの星の生物にも適応できることから、宇宙人たちが人類に近い構造をした生物であるとは考えられる。

 記録媒体の内容を人類が理解できることから、この記録媒体を作り出した存在と人類は何らかの方法で意思疎通も可能であることも推測できた。

 しかし宇宙人が何故このような技術をこの星に送ったかは未だに解っていないのだ。

 セブン曰く、解析が完了した二つの記録媒体にはそれぞれの技術的な情報しか記録されておらず、宇宙人の意思を示す内容は全く存在しなかったらしい。












「おひっさー、暇だから遊びに来たわよー」

「…無駄話が過ぎた、そろそろ仕事に戻る」

「キィィッ!!」

「ちょっと、無視しないでよ!!」


 セブンと9711号の会話は我が物顔で研究室に入ってきたクィンビーの登場よって、否応も無くて打ち切られた。

 さり気なく発声機のスイッチを切りつつ、セブンと9711号はそれぞれの仕事に戻った。

 9711号は宇宙からの贈り物の一つ、生物の合成技術によって強化された肉体を駆使してファントムのテスト走行をするために研究室を後にする。

 セブンは宇宙からの贈り物の一つ、未知のエネルギー源の製造技術によって生み出されたバトルスーツのコアの研究を再開する。

 宇宙からの贈り物は結果的に世界に混乱を齎した、人類が今後どのような展開を迎えるかは誰にも解らないだろう。


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