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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第2部 第1章 新世代
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1. 新世代たち

 白仮面と言う圧倒的なイレギュラーの蹂躙によって、ガーディアンとリベリオンの戦力は一時期大きく削られていた。

 それは両組織の活動に多大な影響を及ぼす物であり、正義と悪の戦いは少し前まで事実上の休戦状態となった。

 降って湧いたような平和、しかし残念ながら平穏な時間は長く続かなかった。

 欠番戦闘員と白仮面の戦いから一年以上の月日が流れ、それは両組織の力を回復するには十分な時間になったのだ。

 雌伏の時を乗り越えた両組織は計ったようなタイミングで活動を再会、これまでと同様に正義と悪の戦いが繰り広げられるようになる。

 否、同じでは無い、両組織の戦いのレベルは以前と比べて最早別物と言っていいほど進化していた。

 この劇的な変化の要因はやはり、あの白仮面と言う名の劇薬であろう。

 ガーディアンの戦士やリベリオンの怪人を歯牙に掛けない程の実力を備えた白仮面の存在は、両組織に強い衝撃を与えたのだ。

 白仮面の存在は一種の起爆剤となり、正義と悪の両組織はより強力な戦力を得る方法を求めた。

 もしかしたらこの変化こそが、白仮面と言う存在を投入した人物の思惑だったかもしれない…。

 そして誕生したガーディアンとリベリオンの新たな力、"新世代"と呼ばれる者たちによる戦いが今まさに繰り広げられていた。






 戦いの切っ掛けをあえて事細かに語る必要は無いだろう。

 過程はどうあれ今この場所で、幾度目になるか解らない正義と悪の戦闘が行われているのだ。

 人気の無い町外れ、周囲に気にすること無く暴れることが出来る絶好のバトルフィールドで激しい戦闘音が鳴り響いていた。


「ふん、丁度いい。 俺の新しい力を試すには打ってつけの相手だな!!」

「舐めるなっ! ガーディアンの犬など、クワガー様の鋏で両断してくれる!!」


 ガーディアンの戦士が威勢の良い声をあげながら、目の前の醜悪な怪人に向かって行く。

 見るからに派手な金色のスーツで全身を覆い、腕に赤色の手甲、顔にはこれまた金色のフルフェイスのマスク。

 欠番戦闘員のそれとよく似たスーツ型のバトルスーツを纏う戦士は、これまた欠番戦闘員のように腕を振りかぶって正面からぶつかっていく。

 それに対する怪人は頭上に生やした巨大な鋏から見て、恐らくクワガタ辺りをベースにした存在なのだろう。

 迫りくるガーディアンの戦士に対して怪人は、体を前傾させて自慢の鋏で相手を迎え撃つ。

 怪人として強化された怪人の鋏は鉄塊さえも両断する程のパワーを誇る、のこのこと死地へと向かってくる馬鹿な獲物を前に怪人はほくそ笑んだ。


「ははは、そんな物か! ガーディアン!!」

「くっ…」


 先ほどの威勢のいい少年とは対象的に、リベリオンの怪人に防戦一方となっている戦士も居た。

 防御力より機動力を重視した、最低限の箇所のみ装甲に覆われている軽鎧型のバトルスーツ。

 清廉な白色の鎧を身に纏い、銃と剣が一体化したような奇妙な獲物を振るう戦士の美しい顔には苦悶の表情が浮かんでいる。

 その白い戦士と相対する怪人、否、怪人らしき存在は強気な声を漏らしながら白い戦士へ襲いかかる。

 何故目の前の相手を怪人と断言出来ないかと言えば、それは白い戦士と対峙する相手の見た目い理由があった。

 どういう訳かその怪人らしき存在は、中世のフルアーマーのような無骨な鉄塊を纏っていたのだ。


「うぉぉぉっ!!」

「ぁぁっ!?」


 全身全てを鎧で覆ったそれは、ガチャガチャと耳障りな金属音を奏でながら戦士に迫る。

 怪人は無造作に片腕を前に振るい、戦士は手に持った銃剣でそれを防ごうとする。

 しかし戦士の銃剣は怪人のパワーを捌ききれず、その余波だけで戦士は後方へと吹き飛ばされてしまう。


「ははははっ、無様だな!!」

「…油断したな! くらえっ!!」


 地面に叩きつけられる戦士の姿を前に、怪人は追撃の手を止めてその場で嘲笑う。

 金属の鎧で覆われているために相手がどのような表情をしているか解らないが、さぞや愉快そうな顔をしている事は明白だろう。

 敵の前で晒したその致命的な隙を突き、白い戦士は素早く体勢を立て直して先端に銃口を備えている奇妙な剣を構えた。

 白い戦士の腕に嵌められたインストーラ、その中央部に嵌められた赤いコアが激しい光を放ち始める。

 次の瞬間、銃口の先端に炎が燃え盛り、そこから発射された炎の弾丸が怪人に向かって放たれたのだ。


「ふんっ、こんな豆鉄砲!!」

「なっ…!? これが新世代の力なのか…」


 起死回生を狙った白い戦士の一撃、しかしそれは怪人に全く通用しなかった。

 怪人はまるでボール球を弾くかのように、炎の弾丸を容易く払い除けてしまう。

 自分の攻撃が目の前の怪人に全く通用しない、その事実に衝撃を受けた白い戦士の表情は凍りつく。

 幾ら人外の力を持つ怪人の膂力とは言え、この白い戦士はバトルスーツを纏ったガーディアンの戦士である。

 白い戦士の相手が普通の怪人であれば、此処まで翻弄されることは無かったであろう。

 しかし相手は残念ながら普通の怪人とはかけ離れた存在であり、白い戦士はこの化物の正体に心当たりがあった。

 白い戦士、白木は悔しげな声で独り言ちながら、忌々しげな目で怪人の身に纏う鎧の中央に嵌められた光り輝くコアの光を睨みつけた






 新世代、それは文字通り新世代のリベリオンの怪人とガーディアンの戦士を指す言葉であった。

 白仮面と言う脅威に完膚なきまでに敗北した両組織は、プライドを捨ててより強い力を求めた。

 そして手っ取り早く力を付けるために正義と悪の両組織は、禁断の果実に手を伸ばしたのだ。


「ふはははは、これがバトルスーツの力か。 意外に悪くないなぁ!!」


 リベリオンの怪人が身に付けている鎧、それはガーディアンの使うそれと同じバトルスーツであった。

 バトルスーツ、宇宙からの贈られた技術の一つ、コアの力を戦闘利用した超兵器である。

 本来、バトルスーツはガーディアンが怪人の力に対抗するために開発された物であった。

 基本的に人間を見下している怪人たちは、一昔前までは人間如きが使うバトルスーツなどと言う玩具を使おうとは思いもしなかっただろう。

 しかし白仮面、怪人たちが言う玩具を身に纏った謎の怪人によって痛い目に合わされた悪の組織はその認識を変えた。

 そして誕生したのは劣化白仮面と言うべき、バトルスーツを纏う怪人たちである。

 かつてセブンが提言したバトルスーツを纏う怪人たちが、期せずして此処に誕生したのだ。


「貴様、そのコアを何処で手に入れた!!」

「ふんっ、これまでにリベリオンが貴様らガーディアンを何匹倒したと思っている?

 貴様らの使っていたおもちゃなど、我が組織の倉庫に幾らでも転がっていたわ!!」


 バトルスーツ開発のノウハウが無いリベリオンが使うそれは、洗練された技術を持つガーディアンのそれと比べて酷く雑な作りをしていた。

 初期の白仮面が使っていた物にすら劣るそのバトルスーツは、恐らくコアの力を数割しか引き出すことが出来ないだろう。

 しかし当のガーディアンは生身の人間と言うハンデにより、コアの力を数割程度と言う人間が耐えうるレベルでしか使うことしか出来ていない。

 結果的にコアの出力さえ見れば劣悪なリベリオン製のそれは、ガーディアン製と同程度の物となっているのだ。

 そしてコアの力が互角であれば後はバトルスーツを纏う中身の性能が重要になり、ただの人間が怪人に勝てる筈も無い。

 白木がバトルスーツを纏う怪人に圧倒されるのは道理であった。






 バトルスーツを纏うリベリオンの新世代の怪人を前に、明らかに白木は追い詰められていた。

 白木の攻撃は新世代の怪人に全く通用せず、逆に相手の攻撃を一撃でも喰らうだけで白木は致命傷を受けることになるだろう。

 このままでは白木の敗北は明白であったが、それがこの場でのガーディアンの敗北とイコールになるかと言えばそうでは無い。

 新世代と呼ばれる存在はリベリオンだけで無く、ガーディアンの戦士の中にも存在している。

 白木に対して勝ち誇る怪人の前に、新世代のガーディアンの戦士である金色のスーツを纏う少年が現れたのだ。


「ふんっ、そんな旧世代を倒していい気になるなよ!! リベリオン!!」

「なっ、お前はクワガーと戦っていた…」

「クワガー…? ああ、あの虫野郎ならそこに居るぜ!!」


 白木と怪人との間に割って入った金色の戦士が指し示した先には、確かにあのクワガタ型の怪人の姿があった。

 しかし最早それをクワガタと呼んでいいか解らない。

 何故ならクワガタの象徴とも言える存在、怪人クワガー自慢の巨大な鋏が無残にもがれているのだ。

 機密保持機能が働いていない所を見るとクワガーはまだ死んでいないようだが、痙攣して虫けらのように地面に転がる姿を見れば戦闘不能である事は明白だろう。

 その傷口を見る限りクワガーの鋏は鋭利な刃物で両断されたので無く、力任せに引きちぎられたように見える。

 怪人の一部を引きちぎるなど、これまでの貧弱なガーディアンの戦士にはとても出来る真似では無い。

 そんな芸当を可能とした金色のバトルスーツを纏う戦士の正体を、新世代の怪人は自然と察する事が出来た。


「そうか…、貴様がガーディアンの戦闘員もどきだな。

 哀れな物だ、所詮ガーディアンはそんな貧相な改造しか施せないのだから…」

「はっ、流石にその貧相なバトルスーツには負けるよ…」


 ガーディアン側の新世代、その正体はリベリオンの生物の合成技術を利用して強化された元人間の事を指した。

 貧弱な体しか持たない普通の人間ではコアの全力に耐えることは出来ず、精々三割程度の力しか引き出すことが出来ない。

 逆を言えばコアの使い手が人間を超えた強靭な体、例えば怪人のような存在になればより多くのコアの力を引き出すことが可能だろう。

 ガーディアンはこれまでリベリオンの技術だと忌み嫌っていた人体の改造に手を染め、コアの出力に見合う体を持つ戦士を作り始めたのだ。

 しかしリベリオンの粗悪なバトルスーツと同様に、ガーディアンの人体への改造技術もまた拙い物である。

 リベリオン怪人が言う通り今のガーディアンが出来ることと言えば、リベリオンの戦闘員にさえ届かない出来損ないを作り出すことしか出来ないのだ。

 ただし出来損ないとは言えそれは通常の人間より頑強となり、より多くのコアの力を引き出せた。


「来いよ、生まれ変わった俺の力を思い知らせてやる!!」

「その傲慢な態度、すぐに後悔させてやろう!!」


 バトルスーツを纏ったリベリオンの怪人と、ただの人間であることを止めたガーディアンの戦士がぶつかり合う。

 新世代と呼ばれる者たちの戦いは、旧世代とレッテルを貼られてしまった白木には付いていけない物である。

 それはかつて白木が、欠番戦闘員と白仮面の戦いを見ていることしか出来なかった頃の無力な自分を思い返させる物だった。

 またもや戦いの外に追い出された白木は、悔しげな表情を浮かべながら新世代の戦いを見つめていた。

 


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