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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第6章 博士の夢
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14. 共同戦線


 記憶喪失である大和にとって主観的に初めて経験した夏休みは、激動の日々であったと言えるだろう。

 姫岸との出会いによって済し崩しに始まった、怪人調査研究部での部活動。

 突然のクィンビーとの再会、そして妃 春菜と言う蜂型怪人の過去との遭遇。

 黒羽と共に行った対白仮面用の人工筋肉の強化トレーニング、その成果を試すかのように行わたショッピングモールでの白仮面との再戦。

 終いにはセブンが白仮面に誘拐されてしまい、彼女の情報を探るために潜入したリベリオン関東支部での一件である。

 期間にして僅か一ヶ月と少しの間に、よくもまあこれだけの事件が起きた物だ。

 何時の間にか夏休みが終わっており、暦が9月に突入した事から大和は再び学校生活に戻っていた。

 セブンのことが気がかりではあるが、表向きはただの学生である大和が理由も無しに学校をサボるわけにもいかない。

 久々に学校の夏服に身を包んだ大和は母の霞に見送られながら、重い足取りで学校へと登校していった。


「よう、先輩。 久しぶりだな…。

 あの時はよくも俺たちを見捨てやがったな、愛香ちゃんと二人だけで逃げやがって…」

「…深谷っ!? いや、あの時は色々とあって…」


 そして自分の教室に入った大和はショッピングモール以来の再会である、クラスメイトの深谷とその友人たちと顔を合わせていた。

 深谷はショッピングモールで自分たちを見捨てた事を恨んでいるらしく、恨み言を漏らしながら大和に絡んできた。

 確かにあの時の大和はリベリオンの襲来を察知して、咄嗟に黒羽のみを連れてあの場から離脱していた。

 そしてその後は白仮面との再戦など色々な事があったため、深谷たちのことを今の今まですっかり忘れていたのだ。

 大和は慌てて言い訳に成らない言い訳を口に出しながら、深谷たちを誤魔化そうと試みていた。


「何処に行ったの? えぇ、海外、いいなー」

「模試の結果が微妙だったんだよなー」

「彼女と海に行ってさー」

「俺、志望校のレベルを落とそうと思うんだ」


 夏休み明け初日と言う事もあり、大和の周囲ではクラスメイト達が口々に休み中の思い出話を語っていた。

 やはり高校生の夏休み、レジャーなどで充実した余暇を過ごした者たちの自慢話が大和に耳にも入ってきた。

 しかし大和達は高校三年生と言う事も有り、既に将来を見据えて本腰を入れて受験勉強に精を出している者も少なくは無いようだ。

 正義の味方であるガーディアンは一般市民を怯えさせないと言う名目で、ガーディアンやリベリオンの詳しい情報を市民も耳に入れないようにしていた。

 そのため大和のクラスメイト達が白仮面と言う脅威を知る筈もなく、受験勉強に忙しい彼らがそのような事を気にする余裕は無いらしい。

 白仮面と言う脅威に脅かされているガーディアンやリベリオンの事など知る由もなく、ただの学生である彼らは平凡な日常を過ごしていた。










 何も知らない一般市民たちと違い、全てを知るガーディアンたちは平凡とは程遠い日常を送っていた。

 白仮面と言う圧倒的な脅威を前に、正義の精鋭たちは徐々に傷ついていた。

 このままではガーディアンの戦力が減る一方であり、白仮面を何とかしなければ正義の組織は何れは滅んでしまうだろう。

 しかし未だにガーディアンは白仮面に対する有効な対抗手段が見出すことが出来ず、悪戯に時間だけが過ぎていた。

 そんなある日の事である、ガーディアンの元にとある情報が飛び込んできたのは…。


「リベリオンの作戦情報? また欠番の旦那が流した情報が届いたのか?」

「いや、今回は組織の情報部が手に入れた物だ」

「うちの情報部が取ってきた情報!? ガセじゃ無いだろうなー」


 それは正義の組織の怨敵である、悪の組織リベリオンの新しい作戦情報であった。

 黄田がガーディアン上層部から伝えられたこの話を、ガーディアンの戦士である白木と先日復帰してきた土留に聞かせていた。

 ガーディアンの情報部がリベリオンの作戦情報が手に入れた事に対して、土留は疑わしげな表情を浮かべていた。

 今までガーディアンの情報部はリベリオンにしてやれる事が多く、実際にリベリオンの誤情報に引っ掛かった事が幾度もあったのだ

 これまでの実績を鑑みれば、土留がガーディアン情報部が手に入れた作戦情報の真偽を疑うのも仕方ないだろう。


「どうやらこの情報はリベリオンがわざと流した物らしい…」

「何だよ、やっぱりガセか…」

「いや、リベリオンは確実にこの情報通りに作戦を行うとの事だ。

 そしてこの作戦でリベリオンは、精鋭と呼べる怪人たちを揃えてきている」

「なんだよ、そんな情報が入ってきたら、俺たちもそれなりの戦力を出すだろう。

 そんなことになったら、リベリオンの作戦が成功する訳…」


 何と黄田が言うにはガーディアン情報部が入手した作戦情報は、リベリオンがわざと流した物であると言うのだ。

 しかもこの情報はガーディアンを罠に嵌めるための誤情報では無く、正真正銘本物の作戦情報であった。

 幾ら完璧な作戦を建てようとも、事前にその作戦が読まれていたら成功する筈が無い。

 一体、リベリオンはどのような目的があって、このような馬鹿な真似を行ったのだろうか。


「リベリオンが作戦行動を起こし、ガーディアンがそれを止めるために動く。

 そんな動きを見せれば、また戦場に白仮面が現れる…、まさか奴らの真の目的は!!」

「そういう事か、奴らの真の目的は俺達に戦力を出させる事…」

「ああ、どうやら上も今回の情報流出の真意をそう推測したようだぞ。

 リベリオンの作戦決行日は三日後、それが決戦の日になりそうだな…」


 通常であれば考えられないリベリオンの行動であるが、現在のガーディアンとリベリオンを取り巻く状況を考えれば見方は変わってくる。

 白仮面、ガーディアンとリベリオンの戦いに介入してくる謎の存在。

 その圧倒的な力を前にガーディアンの戦士やリベリオンの怪人は敵わず、次々にやられていった。

 リベリオンもガーディアンと同じように白仮面による被害を受けており、白仮面の対処は悪の組織の取っても急務である。

 そのためにリベリオンは一計を案じ、ガーディアンに対して作戦情報を流すような真似をしたのだ。

 ガーディアンならばこの作戦情報を元に、リベリオンを止めるため相応の戦力を出すはずである。

 リベリオンが精鋭と呼べる強力な怪人を出せば、それに対抗するためにガーディアンは質の高い戦士たちを投入するだろう。

 そしてガーディアンとリベリオンが動きを見せたら、その戦場には必ず白仮面が現れる筈だ。

 ガーディアンとリベリオンの精鋭が集められた戦場に…。


「よしっ、ガーディアンとリベリオンの精鋭が集まれば、流石に白仮面もイチコロだろう!

 あの野郎に今までの借りを万倍で返してやるぜ!!」

「事実上のリベリオンとガーディアンの共同戦線か…、まさかこんな日が来るとはな…」


 ガーディアンとリベリオンに取って、白仮面は共通の脅威である。

 もしガーディアンとリベリオンが矛を交える戦場に白仮面が姿を見せたら、両組織は互いの事を後回しにして白仮面の討伐を優先するだろう。

 組織としての体面を考慮して作戦情報の漏洩という湾曲な形を取ってはいるが、これはリベリオンからの対白仮面に向けた共闘の依頼であった。

 そしてガーディアンはリベリオンの案に乗り、これまた表向きはリベリオンの作戦を止める名目で戦力を出すようだ。

 正義と悪という垣根を超えた連合軍と白仮面との対決が間近に迫っていた。






 そして正義と悪のどちらにも属さないもう一つの戦力、欠番戦闘員と呼ばれる者たちもまた動いていた。

 大和と違って学校に通っていないクィンビーは、三代ラボに入り浸りながらある準備を行っているようだ。

 それは圧倒的な力を手に入れた白仮面に対抗するための対策の一つで有り、これを準備するために大和たちは今まで動きを見せなかったのである。


「決戦は三日後か、ちゃんと用意は出来るでしょうね?」

「ギリギリと言った所ね、専門外だから苦労したわよ…」

「ふふふ、見てなさい!

 今度こそギッタンギッタンにしてやるからね…」


 三代と言うガーディアンの人間が協力者である事から、リベリオンとガーディアンの共同戦線の話は大和達の耳にも入っていた。

 これは白仮面を打倒するための千載一遇の機会であり、セブン奪還と言う目的がある大和たちが動かない訳にはいかない。

 特に白仮面に対して色々と恨みがあるクィンビーは、怨敵と再戦を前に戦意を高めていた。



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