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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第5章 正義と悪
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27. 開放

 ショッピングモールの駐車場には、おっとり刀で駆けつけたガーディアンと警察の車両で埋め尽くされていた。

 待機命令を無視して現場に駆けつけた白木たちの情報により、リベリオンの襲撃を知った正義の味方たちが漸く重い腰を上げたのだ。

 しかしショッピングモールには既にリベリオンの影は残っておらず、居るのは既に悪の組織から開放された人間たちだけである。

 遅まきながら現れたガーディアンたちに対しての、ショッピングモールで捉えられていた人間たちからの視線は冷たかった。

 人々は口々にガーディアンの無能を罵り、自分たちの危機を救わなかった事への不満をぶつけた。

 今回の件でガーディアンは何の役にも立たなかったのだ、ショッピングモールの客達の反応も当然であろう。

 正義の味方たちは居心地の悪い思いをしながら、警察の人間と共にショッピングモールでの現場検証を行っていた。


「…で、結局活躍したのは欠番の旦那だけか。 働き者だねー、あの人も…」

「しかし肝心の捉えられた人間を載せた車両を取り逃したのは、欠番の失敗だったな。

 まあその失敗のお陰で、ぎりぎりの所で俺たちの面目を保てた訳だが…」


 ある意味で今回の件の功労者である土留と黄田は、現場検証の様子を遠目で眺めながら雑談にふけっていた。

 純粋な戦闘要員である彼らには、最早この場で役に立てることは何も無いのだ。

 客達の情報からこの場所にまたしても、あの欠番戦闘員が現れた事実がガーディアンたちの元に知らされていた。

 欠番戦闘員は少なくとも一体の怪人と交戦して撃破、客達の一部を会話を交わした後に姿を消したと言う。

 そもそも今回のリベリオンの作戦情報を伝えたのは欠番戦闘員であり、情報源である本人が現場に現れても何ら不思議な事は無い。

 そして客達の証言によると欠番戦闘員の登場から少し経った後、リベリオンの怪人たちはショッピングモールから姿を消したらしい。

 撤退直前に怪人たちが混乱した様子も有ったらしく、欠番戦闘員がリベリオンの撤退を促した要因となった可能性が高い。

 肝心の素体を運ぶ車両を逃がした物の、何もしなかった正義の味方に比べたら欠番戦闘員は今回の一件では大活躍したと言えるだろう。

 ガーディアンの到着を察知したのか、欠番戦闘員は何時ものようにショッピングモールから姿を晦ましていた。

 正義の味方を自称するガーディアン以上に、正義の味方振りを見せた欠番戦闘員。

 この事実が世間に知られることは無いだろうが、少なくともガーディアン内に置けるあの謎の人物の評価は益々上がる筈である。






 土留たちと離れた白木は一人、ショッピングモール内を彷徨い歩いていた。

 そもそも白木が命令を無視してこの場所を訪れた理由は、かつての相棒を救出するためである。

 先ほどの輸送車の中には黒羽の姿は見えなかった、それならば彼女はまだこのショッピングモールの中に居るに違いない。

 黒羽の無事を自分の目で確かめたい白木は、リベリオンに拘束されていた人間たちの様子を見て回っているのである。

 既にバトルスーツをインストーラに格納し、ガーディアンの制服姿になった白木は辺りを見回しながらゆったりとした速度で歩き続ける。

 白木としては今すぐにでも駆け出したい気分であったが、此処でガーディアンの人間が焦った態度を取ったら周囲に不安を与えるかもしれない。

 あくまで落ち着いた態度を見せようとする白木であったが、表情までは焦りを隠しきれていなかった。


「…白木! どうした、そんなに慌てた顔をして…」

「黒羽!? それに丹羽さん…」

「お久しぶりです、白木さん」


 ショッピングモール内を歩いていた白木に対して、一人の少女が後ろから声を掛けた。

 その声に聞き覚えのあった白木は即座に振り向き、自分に話しかけてきた少女の姿を捉える。

 そこには白木が心底無事を確認したかったかつての相棒、黒羽が元気そうな様子を見せているでは無いか。

 黒羽はセブンから聞いていた通り、かつて白木が一度だけ有ったことがある大和という名の少年と共に居た。

 足の悪い黒羽は大和に背負われた状態になっており、大和の背中に居る黒羽は見た所怪我一つ負っていない様子だった。


「良かった、無事だったんだね、黒羽!!」

「ああ、彼が助けてくれてな…。 間一髪の所でリベリオンの手から逃れて、二人でトイレの中に隠れていたんだよ」

「ありがとうございます、丹羽さん! 黒羽を助けてやってくれて…」

「いや…、気にしないで下さい」


 どうやら黒羽は大和の機転によって、リベリオン襲撃という窮地を乗り切ったらしい。

 自分の代わりに黒羽を救ってくれた大和に対して、白木は深々と頭を下げて心からの礼を述べた。











 礼を終えて頭を上げた白木は、改めて黒羽と大和の様子を確認していた。

 先ほど見た通り黒羽には怪我一つ無く、彼女の着ているワンピースは少し皺になっている物の汚された様子は無かった。

 大和の方も見た所衣服に汚れは無く、女性とは言え人間一人を抱えた状態で平気そうな顔をしている所を見ると、特に体に異常は無いのだろう。

 改めて二人の無事な姿を見て一旦は安堵した白木であったが、すぐに白木は大和の有る奇妙な点に気付いて怪訝な表情を見せた。

 普通、誰かを背負おうと思ったら、背負う側の人間は両手を使って背負われる側の人間の体を支える物だろう。

 しかし未だに黒羽を背負った状態の大和は、どういう訳か左腕だけで彼女の体を支えているのだ。

 右腕の方は黒羽の体を支えることは無く、ぶらぶらと下に垂らしていた。

 そしてよくよく見れば大和の表情には些かの陰りが見え、元気溌剌とはとても言えない状態であった。


「…どうしましたか、丹羽さん。 少し顔色が悪いですよ? それにその右腕は…」

「い、いや…、少し緊張しちゃって…。 まさかこんな事になるとは思わなかったんで…。

 右腕は単に疲れたんで休ませているだけですよ、ははは…」


 大和が疲れた顔をしているのは無理の無い事である、何故ならば彼はつい先ほどまで戦闘による疲労によって気絶していたのだから。

 欠番戦闘員として白仮面との戦いを終えた大和は、ファントムにもたれ掛かった状態で一時だけ意識を失っていた。

 そしてガーディアンの来訪を察知したファントムによって起こされて、疲れた体に鞭打って黒羽と合流したのだ。

 右腕も当然のように単に休ませている訳では無く、白仮面との戦いで行った無茶の反動によって使い物にならなくなっていた。

 戦闘員としての力がある大和に取っては、黒羽の体を支えるのには左腕一本有れば問題は無い。

 しかし端から見たら片腕だけで黒羽を背負っている姿には違和感しか無く、白木にもその不自然さに気づかれてしまったようだ。


「大丈夫ですか、ガーディアンの医療班に見て貰った方が…」

「…私の方は大丈夫だ。 あなたはもう休んでくれ。

 白木、お前の口利きで、丹羽さんを家に帰してやってくれて無いか。 事情聴取は私が代わりに受けるから…」

「黒羽…、でも…。 解りました、すぐに手配します」

「助かります…、今日は本当に疲れて…」


 捉えられていた人間のケアのために、ガーディアンの医療班が既にこの場所に到着している。

 大和の様子がおかしい事に気付いた白木は純粋に心配して、医療班の人間に診てもらう事を勧めた。

 しかし大和の事情をある程度把握している黒羽は、その提案を遮るように大和の早期帰宅を白木に依頼する。

 本来なら捉えられた人間たちに対して、警察やガーディアンの人間による事情聴取を受けることになっていた。

 黒羽はガーディアンの人間である白木の口利きによって、それを免除して欲しいと言うのだ。

 白木は黒羽の提案に始めは難色を示した様子であったが、すぐにその考えを翻した。

 大和は白木に取って、黒羽を救ってくれた大事な恩人でもある。

 その礼代わりにこの程度の融通は問題無いと判断した白木は、黒羽の提案に従って大和を家に返すことを決めたようだ。

 大和は漸く体を休められる事に安堵したらしく、気が抜けたような声で黒羽と白木に対して礼を述べた。


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