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残照  作者: 財前隆一
第3部
2/3

第2幕~陽炎~

 最近のテレビのニュース番組のメインの話題。それはやはり2日後に迫った選挙であろう。僕はまだ未成年であるため、投票はできない。しかし、連日テレビで報道される選挙の動向にそれなりに関心はあった。僕のような若者は世間ではしばし「投票に行かない」「政治に無関心」など批判を受ける。しかし、僕が思うに政治が目に見える結果を出さなければ国民皆に関心を持ってもらうことは厳しいのでは、と思う。今回は参院選だからいいのだが、特に衆議院の解散総選挙の時期になると起こる選挙に勝つことだけが目的の新党結成などを見せられると「政治関心を持て」というのは到底無茶に思える。

そんな中で僕がその選挙の出口調査なるアルバイトに応募したのは一か月ほど前のことになる。学校の掲示板を眺めていて偶然見つけたのである。元々、ニュース番組などのでの政治関連の報道には関心があり、まだ未成年で投票できない中で選挙に関われるとあって早速電話で応募してみた。そして、その翌日には自宅に資料が届いた。そこには選挙本番の2日前に研修を受けることなどが書かれていた。その日は授業は半日で終わり、研修場所は学校から見て自宅のその向こうであった。要するに電車で学校→自宅→研修場所ということである。そこで一旦家に帰り、そこから出直すことにした。

研修は18時からであり、それに間に合わせるため16時41分発の電車に乗ることにした。駅のプラットホームに降りてみると電車はまだ来ていなかった。携帯の時計で時間を確認してみると16時37分となっていた。予定よりは家を出る時間が若干遅くなってしまったが、なんとか間に合ったようだ。ちょうど高校生などが帰宅の途につく時間帯であるため、背服姿の集団が多かった。その他にもお年寄りやサラリーマン風の男性の姿なども散見された。自宅に届いた資料には研修・本番はスーツで来るように書かれていた。しかし、僕はかっちりと上着まで着てきてしまっていた。はっきり言ってこの時期にこの格好は暑い。周りを見渡してみると皆クールビズや夏服であり、このような暑い恰好をしているのは僕1人だけのようである。その時、構内に電車の到着を告げるアナウンスが聞こえてきた。電車の中ならクーラーがきいていて涼しいはずである。

電車の最後尾の車両に乗り込むと四人掛けの席に座った。電車の中の横並びの席はあまり好きではないのだ。そこの席には誰も座っていなかった。座っていると窓から直射日光が入ってくるのが気になった。そこで窓のブラインドを降ろすことにした。ブラインドを降ろそうと手を伸ばしたとき、ふと一瞬その手が止まる。

-あれから一か月たつのか-

窓の向こうには普段は見慣れない景色が流れていく。あの人もあの後この景色を見ていたのだろうか。電車は次の駅に到着した。そこで乗客が何人も乗り込んできた。若干の懐かしさと一抹の寂しさを感じている僕のもとへ新たな乗客がやってきた。


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