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レイと魔法と奇妙な日常  作者: 沖田 了
第1章 はじまり
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第五話 仮面の男

 イサカ村はもうこの世のどこにも存在していない。

 イサカ村の周りにあった山々も、七割とほどが消し飛んでいる。

 さっきまでレイが授業を受けていた学校もないし、当然赤サソリも跡形もなく消えてしまっている。


 「マリアさん。」


 レイがそう呟いたのは悲しみのあまり名前を呼んだから、ではない。

 爆発で何もかもなくなったはずの土地に、見慣れた赤毛の女性がたっていたからだ。


 いや、マリアのほかにもう一人立っている者がいる。

 レイの位置からはよく見えないが、レイと同じようなコートを着てフードを被っている。

 二人の間は約五メートル。


 マリアがフードに向かって何かを叫んでいる。

 するとフードは右手に持っていた杖を振り上げた。

 そして、マリアに避ける暇を与えず、魔法を繰り出した。

 さっきまでマリアが立っていた地面がはじけ飛んだ。だが、そこにマリアの姿はなかった。


 すると、フードの後ろから声が聞こえた。


「レイちゃん、あんた無事だったの。」


 レイに抱えられたマリアが、驚いたように言った。

 レイがマリアを抱きかかえフードの後ろに立っていた。


「レイちゃんって言うなよ。

 それから、助けてもらったんだからお礼の一つでも言ってくれよ。」


 レイの目つきが変わっていた。

 口調も雰囲気もさっきまでの怯えていた時とはまるで違う。


「ほう、なかなかのメイルだな少年よ。

 それなら都会でも通用するぞ。」


 そう言ったのは、マリアと対峙していたフードだった。

 声からして男だろう。

 山の上からは見えなかったがこの男仮面をしている。大きな目が一つ象られた仮面をしている。


「誉めてくれるのは良いんだけどさ、あんたは誰なんだ。

 そんな仮面した奴この村にはいないぞ。見た感じ魔法使いだってことは分かるけどな。」


 レイは杖を仮面の男に向け、睨みながら言った。

 そして、マリアを地面に下ろした。

 マリアは困惑したようにレイを見上げている。


「少年よ、なんでも相手に答えを求めるのは良くない。

 少し考えてみれば分かるだろ。

 突然の大爆発、どこらかともなく現れた仮面の魔法使い。この二つをあわせて考えると。」


 仮面の男はそこでいったん言葉を切りもったいぶるように言った。


「つまり、私がこの大爆発の犯人だってことなんだよ。」


 仮面の下の男の顔がどういう表情を作っているのか、見ることはできない。

 レイの顔は怒りに歪んでいた。


「そうか、お前が僕の村を消し飛ばしたんだな。」


 レイの声はギリギリ絞り出したかのように、か細い。


「ああそうだ、これは私がやった。

 お前の故郷を消し去ったのはこの私だ。

 だったらどうする少年よ。」


 男はレイを挑発するように尋ねた。


「別になんにもしねぇよ、なんにも。

 だから覚悟しろ、もう俺は容赦しねぇからな。」


 レイは、そう叫ぶと仮面の男に向かって走り出した。


「勇気だけは認めよう。

 だが、正面から走ってくるなど殺してくれと言っているようなものだぞ少年よ。」


 そう言うと仮面の男はゆっくりと杖を上げダクト(攻撃魔法)を放った。

 だが、またもや仮面の男の魔法は地面をはじけ飛ばした。


「ダクト」


 今度はレイがダクトを放った。

 メイルで仮面の後ろに回り込んでいたのだ。

 レイの杖から白い光が放たれる。仮面の男を頭をねらっている。

 仮面の男はその姿が見えているかのごとく、簡単にその光を避けた。


「全く、人の背中に回り込むのが好きだな少年よ。

 だが、甘い。」


 そう言うと同時に仮面の男がレイに向かってダクトを放った。

 メイルとダクトを連続で使ったレイは、その素早い攻撃をかわすことができず、モロに魔法をくらった。


 レイは体中から血を吹き出し倒れた。

 ズタズタに裂けたコートの隙間から真っ赤な血が見える。

 顔にも、右頬に一つ大きな傷が刻まれている。

 膝をつき前のめりに倒れこんでしまった。


「弱いな、少年。そんな力ではなにも守れんぞ。」


 仮面の男はレイの前に立ち、見下ろしたままこう言った。

 レイはもう声が出せないのか、血走った目で睨みつけるだけだ。歯を思い切り噛みしめ唸るよな声をあげている。


「悔しいか、悔しいのやなら強くなることだな。と言っても、その体ではもう生きることは難しいだろうがな。」


 惨めに這いつくばったレイを、あざ笑うかのように仮面の男は言った。そして、右足でレイを蹴り飛ばした。

 レイはうめき声を上げ10メールも飛ばされた。


「軽いな、こんなに簡単に飛ばされるとは、これだから最近の魔法使いは。」


 仮面の男は、嘆くように、大袈裟に頭を抱えた。

 レイにゆっくりと近づきながら、さらに話し続けた。


「魔法が使えるからと己の力を過信し、魔法に頼りすぎるのは良くないと教わらなかったか。

 魔法に頼りきった魔法使いほど脆い者はいない。私はそう教えたはずだがな。」


 そう言うと、男は仮面をゆっくりと外した。


「そんな、なんで。

 なんであんたが。」


 レイはその顔を見て絶句したように叫んだ。


「なんで、か。

 その答えをお前に教える義理はない。

 残念だが、お前にはここで死んでもらう。私の崇高なる目的はお前などには理解できない。」


 そう言うともう一度、杖をあげた。


「ダクト」


 男の杖から魔法が放たれた。



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