6/12
6
20字改行
家に帰ると、母が私の喪服を出していた。
最後に着たのは二年くらい前か。体に当てて
みると、大分小さいようだった。そう言うと
母が次に出したのは、母の喪服だった。少し
背の低い母のそれは私にも着ることができ、
明日はこれを着て行くことになった。自室に
戻り、部屋着に着替えてからベッドに寝転が
った。おばさんから貰った袋は机の上に、落
ちないように置いた。さっき見た限りではカ
メラやフイルムに目立つキズはなく、ちゃん
と使えるらしい。どうしようと、どうすれば
いいのかと思った。私は明日由希のお葬式に
行く。由希を見送り、由希とお別れをする。
ただそれだけ。それだけのことしか、私には
出来ない。由希のために何かしたいという気
持ちは強く強く心の中心にあるのに、何をす
るか、何が出来るのかが分からなかった。式
が始まるのは明日午後四時。今からだと一日
分すら無い。何をする?何が出来る?何がし
たい?分からない。