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次の日、由希の母親から電話がきた。家に
来てほしいといったおばさんの声は掠れて、
ハリもまったく無かった。外に出ると、秋だ
というのに妙に風が冷たくて、痛くて、私の
心をどんどん冷やしていくようだった。吐く
息が白い。見上げると、重くどんよりとした
灰色の雲が我が物顔で空を覆い尽くしていた。
青色の傘を持ち、いつもより少し早足で由希
の家へと向かった。
インターホンを押すと、おばさんはすぐに
ドアを開けた。ひどく青ざめた顔は今すぐに
でも倒れてしまいそうな印象を受けた。通さ
れたのはリビングで、テーブルをはさんで向
かい合って座った。