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由希は写真の好きな子だった。撮られるの
でなく、撮るのが。出掛ける時は必ずと言っ
ていい程常にデジカメを持っていた。何気な
い風景から人まで沢山撮っては私に見せてく
れていた。前に一度、私が由希を撮りたいと
言った時があった。その時由希は笑った。
「恥ずかしいよ。」
「理湖は機械オンチだから壊しちゃうかも。」
そう言って笑った。私も妙に納得しちゃった
から、そうだね、と言ってうなずいてしまっ
た。その時の私の顔を由希は撮っていて、印
刷されたそれを後で見た時、私達は二人で大
笑いをした。笑いすぎて、涙が出て、お腹が
痛くなって。そんな時間は楽しくて好きで、
そして懐かしい。由希と一緒だったもう戻れ
ない日々が、懐かしい。由希との日々は長い
ようで、でも全然足りなかった。もう一度、
一言でもいいから話したい・・・。そんな思いで
心の中はパンクしてしまいそうだった。