ハイエース
snsで知り合ったオカルトコミュニティの若者たちが廃病院へ向かう。
時間が、あったら読んでみてね
夏の夜、SNSのオカルトコミュニティで知り合った5人の男女が、廃病院でのオフ会の企画に参加した。彼らは、各自が自慢の怪談話や陰謀論などを語り合うために、ユカが用意したというハイエースに乗って廃病院へと向かっていた。
後部座席に乗り込んだメンバーが、車内に積まれたスコップやチェーンソーに気づき、「え、何これ?」と尋ねた。ユカはバックミラー越しに微笑みながら答える。
「あ、これ。ごめんね、こんなに色々乗ってて。植木屋のおじさんから借りてきたの」
車内では、初めて会うメンバーが自己紹介をしていた。後部座席に座っていたタケシが、運転席にいるユカに話しかける。
「ユカさん、初めまして。タケシです。よろしくお願いします」
ユカはバックミラー越しに微笑む。その長く美しい黒髪が、窓から差し込む街灯の光に照らされ、ゆらゆらと揺れる。タケシは、ふと口にした。
「なんか、ロングヘアーで貞子みたいっすね」
その瞬間、ユカの顔から笑顔が消え、一瞬だけ眉をひそめた。だが、すぐに表情を元に戻して、タケシの冗談に小さく笑った。他のメンバーは「やめなよー」と言いながらも、キャッキャと面白がって笑っている。
ハイエースの車内は、にぎやかな会話で満ちていた。廃病院へと続く薄暗い道を走りながら、メンバーたちはこれから向かう廃病院の噂話で盛り上がる。
「あの病院、マジでヤバいらしいですよ」とタケシが興奮気味に話す。「手術室から声が聞こえたとか、窓から女が覗いてたとか、オカルト界隈じゃ超有名っす」
ユカは静かにハンドルを握りながら、その話に耳を傾けていた。廃病院の噂話を聞くにつれて、彼女の表情は少しずつ冷たいものに変わっていく。
しばらくして、企画を立てた中心の女性が、これからの流れについて話し始めた。
「みんな、今日は来てくれてありがとう! ここから1時間くらいで着くから、企画についてもう一度説明するね。この廃病院、実は私たちで許可を取ったんだ。だから、好きな場所で自由に探検して大丈夫。各々のチャンネルとかでライブ配信してもOKだよ」
自慢そうに彼女は語った。
その言葉に、メンバーたちは歓声を上げた。それぞれが、配信で視聴者を引きつけるためのアイデアを語り始める。
「最後に、今日のメインイベント。みんなで集まって、一人ずつ自慢のオカルト話をしよう。それが終わったら、私の作った除霊グッズをプレゼントするわ、それを皆さん各自紹介してちょうだい!よろしくね。それで企画はおしまい」彼女はこの企画にかけているようだった。
廃病院への道中、メンバーの一人がユカに尋ねた。
「そういえば、ユカさんってオカルトコミュニティでみんなと繋がりがあるんですか?」
ユカはハンドルを握りながら、淡々と答える。
「ううん、あんまり。ただ、この企画が面白そうだったから申し込んでみたの。ハイエース出せるって書き込んでね」
「へー、そうなんですね!どんなオカルトがお好きなんですか?お化けとか、パラレルワールドとか、陰謀論とか、妖精とか?」
タケシが興味津々で問いかけると、ユカはバックミラー越しに、どこか冷めたような眼差しで彼を見た。
「あたしは主に、未解決の猟奇事件とか、そういうのに興味があるの」
ハイエースは廃病院の敷地内に到着した。エンジンが止まると、あたりは途端に不気味な静けさに包まれる。懐中電灯を手に、メンバーたちは車から降り、ぞろぞろと病院の入り口へと向かった。
懐中電灯の光が薄暗い廊下を照らす中、ユカがぽつりと話し始めた。
「ねえ、世の中には誰にも知られずに、殺人が行われているらしいよ」
その言葉に、他のメンバーは立ち止まる。タケシは少し怖がって、「やめてくださいよ、ユカさん」と冗談めかして言った。
ユカは彼らの反応を気にも留めず、淡々と言葉を続けた。
「見つからないのは、うまく処理しているから。警察も、見つからなければ事件になんかしないし」
その言葉に、誰もが「そんなこともあるだろうな」と納得したように頷く。企画を立てた女性が、その空気を和ませようと明るい声で言った。
「そういう報われない人たちが、幽霊になって出てくるんじゃないのかなー。私、そっち系だからさ、幽霊! いると思うよ」
懐中電灯の光が薄暗い廊下を照らす中、ユカは立ち止まり、さらに話を続けた。
「ねえ、人の体って、死んだあとどうなるか知ってる?」
ユカは、さっきよりも少し興奮した口調で話し始めた。その目は、闇に慣れていないせいか、奇妙な光を放っているように見えた。
その不穏な空気に、メンバーの一人が焦ったように口を挟む。
「そういう話はさ、今日の企画とちょっとズレちゃうからさ、また、あとにしようよ」
ユカはそのメンバーを睨んでいるようにみえた。
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次回は恐怖の展開になるよ




