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リミックスⅠ  作者: E..
3/12

入寮

 東京のある区の1つ。

 私立聖十字架学院中等部の第二寮があった。

 理美は到着後、晴菜と荷物と共に自身が入る部屋を訪れる。

 正式な合格通知と寮の案内もあり、自分が入る寮と誰と入るかも分かっていた。

「階段以外にエレベーターがあるのは楽ね」

「でも、使えるの制限されてるじゃん」

 壁紙やエレベーター内には使える時間、注意事項が書かれていて、少しげんなりとなる理美にたいし、晴菜はこう言った。

「遊びでやられたら、困るじゃない? 毎日気兼ねなく使いたいならルールは守らないと」

 要は考え次第で、守れば自由に使えるとも捉える事も出来ると言う事だ。

「1番上の個室使いたいなぁ。あんまり人と関わるの苦手」

「2年生から別料金で使えるらしいけど、理美ちゃんが頑張れば考えてあげるわ」

「言ったなぁ絶対個室に入る」

「頑張れぇ」

 そんな会話をしている間に部屋に着いた。

 部屋に入ると、小さな玄関口に下駄箱、2人部屋で洋服用のクローゼット2つ、壁と窓際に机と椅子に棚、二段ベッド、更に有難い事に狭いながらも小さな洗面台付きのシャワー室も完備されていた。

「狭いけど、色々物は置けそうだし、持って来た荷物もちゃんと全部仕舞えそうで良かったわね」

「うん、まだ誰も居ないのかな?」

 そう言って部屋へ入ったが、若干人の気配を感じ、辺りを見渡し、二段ベットの上を見た時、金髪ショートの美空よりもパーマが若干キツめな褐色肌の少女がわっと飛び出して来た。

「やほー! 同じ部屋の姉崎桜夜だよ! よろぴく!」

 かなり明るい子が同じ寮室になるとは思っても見なかった。

「誰⁉︎」

「いや、だから君と同じ寮室になった姉崎桜夜、桜夜って呼んで」

「理美、嘉村理美。よろしく」

「あっ! もしかして美空が言ってた社長令嬢の理美ぴ? よろしくね!」

 まさかの美空の友人だった上に、異常なまでにギャルだ。

 呆気に取られて、もうなんて言えば良いのか混乱して、固まってしまう理美だったが、寮室から別の声が聞こえた。

「あきまへん、桜夜、同じ寮に入ることはなかよういうとりますやろ? それと、来てから決めるよう言うとりますやろ?」

 綺麗に長い茶髪を結い、透き通った白肌に似合う化粧に着物姿の女性がどうやら、桜夜の親の様だ。

「ごめんごめん、理美ぴはどうする? ベッド、上? 下?」

 既に居座られた上のベッドが良いと言う程、度胸が無いのと、下にもカーテンがあるので、何かする時あまり気にならないだろうと、理美は下のベッドにした。

「じゃあ、理美ぴ、窓側ねぇ」

「あぅえ!? 後、ぴは付けないで」

「リミリミ!」

『どうして文字数を増やす⁉︎』

 理美が桜夜のネーミングセンスに戸惑っている最中、無理矢理窓側の席に座らされた。

 窓から見える景色は、中庭だろう、木が何本か植えられ、その周りにベンチが設置されていた。

 意外と男子棟も見える。

 流石に全てが見える訳もなく、ただ向かい側に人がいる位は分かった。

 ふと、向かいの男子は先輩だろうか、周りと違って親と一緒ではなく、普段と変わりなく生活している様に見えた。

 しかも、よく見ると彼は銀色の髪だ。

 よく見ようとした時、桜夜が声を掛けてきた。

「何? なんか、気になるの見えたの?」

 驚いた理美は背筋が逆立った。

「い、いや、向かい側が男子棟で、先輩かなと?」

「どれどれ、おっ! 本読んでんのかな?」

 その言葉に、理美も頷き、再度よく見ようとした時、彼のいる奥から誰かが立って自分達に気付いた。

 黒髪で、前髪を残しハーフアップしてた男子がニコニコと笑って手を振っており、もしやとも思ったが、その前に本を読んでいた彼が気付き、何の騒ぎだと男子に問い掛けていた。

 だが、その答えを知る前に、理美の母、晴菜が声を掛けてきた。

「理美ちゃん、そろそろ時間来ちゃうから、早く整理整頓しないと」

「えっ? やばっ!」

 スマホの時計で確認すれば後1時間も無かった。

「あれま、ほんまや、桜夜、急ぎなはれ」

「はーい」

 桜夜はそう言って、荷物を片付けた。

 理美も持ってきた荷物を開けて今必要な物だけ取り出して中にしまった。


 そうして、集合時間、食堂では1年生達とその保護者達が集まり賑わっていた。

 何人か先生がいて、その内の1人が前に立って話し出す。

「入寮式を始めますので、静かにして下さいでは改めまして明日入学式ですが、皆様ご入学おめでとうございますではーー」

 薄いがそれなりにある寮のしおりを読みながら先生の話を聞く。

 寮の説明、この寮第2棟はC組、D組が主体であり、第1棟はA組、B組が主体となっており、勝手に第1棟と第2棟の行き来及び無断の出入りしないようにお願いします。

 男子棟と女子棟も共有スペース以外で入らないようお願いします。

 共有スペースは、2階の食堂と談話室のみ、ランドリー、大浴場も入らない様に、入浴中に異性が覗いた者は罰せられますので、絶対にやめて下さい。

 時刻表を見て下さい。どちらの寮も、起床6時、消灯22時、門限は18時、部活動は20時30分まで、大会まじかのみ21時30分まで 保護者経由の事情等ある場合のみ、23時まで戻る事。

 大浴場は下校時から21時50分まで。

 ランドリーも一緒、朝は原則禁止、前許したら登校から下校時まで入れっぱなしが多発した為。

 エレベーターも朝は混む為、下校時から21時50分まで、開けた状態で電源落とすからあがらないので遊ばない事。

 共有スペース、食堂は朝6時から開き、22時まで使用可能。但し、食堂は朝と部活動帰りで混むので早目に起きた人、早目に帰ってきた人は遅くならないで早く食事を取るように。

 土日祝は帰宅が可能だが、ちゃんと宿泊届けを出さないと、寮母さんに迷惑かかるので、今から1ヶ月までなら纏めて出して良い。

 ――その後はちょっとした注意事項等の話が終わり、続いては中等部の制服と運動着、教科書を配布するので、順番にと言われ、理美は後にしようとしたが、桜夜は言った。

「早めにもらっておこうよ。その方が楽だし」

「え〜、下手に順番待ちするなら、最後が楽なんだけど」

 それでも桜夜は食い下がる。

「でも、もう友達並んじゃってるし、今なら友達と一緒に並べるし紹介するよ!」

「いや、別にー!」

 後でで良いと言おうとしたが、その前に桜夜に引っ張られた。

 結局、友達事、美空が立っていて、桜夜が声を掛けた。

「やほー美空、同じ棟になったねぇ」

「おっ、桜夜、春休みぶり! ジュリア、ジュリア、桜夜来たよ」

 美空の前に立っていた肩くらいの長さの金髪、透き通る白肌にくりっとした目元に瞳は青の女の子が振り向いた。

「桜夜ちゃん、来ました。この子は?」

「うちのルームメイト!」

「うっそ、理美ちゃんだ、合格発表ぶりだね」

 美空にも気付かれ、理美の顔が引き攣った。

「そ、そうだね、お、お久しぶり」

「もう、どの寮かloinで送ってよ! そしたら、一緒の席に座ったのに!」

 現実はとても非情だと改めて理美は感じ、今にも泣きたくなったが、この状態で泣くのは回りが引くのは分かりきっていた。

 仕方がないので理美は笑って誤魔化した。

「いやぁ、まさか同じ寮だとは……」

 この言葉は不味かったかと内心思いつつ、とにかくクラスだけは一緒じゃない事だけを必死に祈った。

 いきなりジュリアが会話に入ってきた。

「理美さん、初めましてジュリア・アンジェ・テインソンと申します」

「はい、初めまして、嘉村理美です」

「実は先程、プリントを貰って見ましたら、私達なんと全員クラス一緒なのです」

 ジュリアのとてもときめいた声はきっと誰よりも明るく感じるだろうが、一気に理美を叩き落とすのには充分な威力だった。

 流石に顔すら引き攣る事も出来ず、只々固まるしかなかった理美。

 それでも、回りがとても感情が昂り、盛り上がっていた。

 理美のドン底に落ちた表情は、制服が入ったを渡す係になっていた先生すら引かせる程だっただろう。

 相手の少し手が震えてるのを理美は理解し、無理矢理正気を保とうと口元を笑わせるも目が笑っていなく、余計に引かせてしまった。

 本当にクラスが書いてあるのか確認すると、クラス表で書かれていた。

 ジュリアの言う通り、理美の前には美空の名前が書いてあり、桜夜とジュリアの名前もC組に入っていたのだった。

 そんな理美を尻目に美空と桜夜とジュリアは3人で楽しく和気藹々し、ドンドン貰って行った。

 後から来た子達から睨まれるも、ふくよかな男子が理美に声を掛ける。

「大丈夫? 具合悪そうだけど? 先生に声を掛けづらいなら、ぼくが代わりに声掛けようか?」

「ごめん、すぐに行きます!」

「無理に行かなくてもいいよ、こっちはぼくの制服まだ見つかってないから」

 確かに、ふくよかな男子の制服を調べている様だ。

「ううん、ありがとう、声を掛けてくれて」

 理美は優しくしてくれる男子とはちょっと無縁な気がしていたが、実際こう気さくに優しくしてくれると心が平常へと戻った気がした。

 先に行ってしまっていた桜夜が理美を置いて行ったのに気付いて戻ってきた。

「ごめーん、って広樹じゃん、よっ」

「桜夜、知り合いの子なら置いて行くなよ」

広樹は理美の為に言ってくれており、何だか申し訳なかったが、彼もまた桜夜達の友達のようで、勝手に息が詰まりそうになっていたが、それに気付かず2人は話した。

「悪かったって、アイツは?」

「後から行くって」

「そっか」

 丁度、係役の先生が来るように促す。

「次の方?」

「は、はい!」

 慌て理美は、教科書を貰いに行った。


 全ての行事が終え、保護者だけ食堂に残り今後の内容を話すので、新入生達は部屋へと戻って行った。

 部屋に戻った理美と桜夜は、すぐに荷物を机の上に置き、さっさと名前を記入し始める。

 理美はついまたあの男子棟を覗いた。

 だが、今誰も部屋には居なかった。

 また会えるだろうかと、そう思いながら教科書に名前を書き続けた。

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