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リミックスⅠ  作者: E..
2/6

出発

 それから一ヶ月と数週間、聖十字架学院の入寮する為、黒麟村を出発の日――。

 理美はあの怖い夢を見た。

 幼い頃、親から忘れられる夢は現実となった。

 ただそれだけじゃない、周りの人間全てから忘れられ、幼い理美にはかなり応え、誰も信じられなくなり絶望した。

「本当にやめてよ、こういうの……」

 自分の顔を鏡で見ると若干やつれた様な気がした。

 昔と違って毎日ではなく、一週間おきにあの悪夢を見る。

 いや、多分これから徐々に間隔が短くなるのではと恐怖すら覚えた。

 丁度そこへ、メイド長でもある絆がやって来た。

「理美様、起きる時間になりました。あら? もう起きてらしたのですね」

 なんかデジャブを感じて、気分が悪くなってきた。

「あのさ、絆は信じるか分からないけど――」

 内容を言いはせず、何度も同じ夢を見てしまうと相談した。


 朝食時、晴菜は先に準備等があるので食事を済ませていた為、理美1人で食事を取る事になり、コレは良いと絆が話し始めた。

「それは予知夢、これから起きると予知しているのでしょう」

「えっ? 予知夢ってなんかこう、超能力者が持っているアレの事?」

 理美にはさっぱりの事だったが、絆は色々知っていた。

「別に超能力者が持っていると言う訳でもありません。でも、理美様昔からそういうの良く予知してましたでしょうが? 覚えてませんか? 株が大暴落するの知ってか知らずか、売るよう促したり、ここの会社がコレから立ち上がると凄いことになるから株を買った方が良いとか」

「あぁ、あったねそういや、でもあれは、なんか見えたって言うか、なんと言うか」

 確かに夢以外でハッキリと映像の様に見える時があり、その通りに動くと本当になったり、危なそうな気がして回避したら、被害に遭わずに済んだりとかなり色々予知らしきモノをしていたのを改めて実感した。

 その為か、絆は忠告した。

「見えると読むは違います。理美様はやっぱり見えるタイプの様ですし、あまり人前でひけらかさないでください。こういうのは人を貶めたり、あなた自身をダメにします」

「気を付けます。でも、これ話す以外で回避したい時は回避しても」

「その回避方法にもよります。大なり小なりその回避で本来あった未来の代価をいつか支払う日が来ます。理美様は時折その代価を前に支払っていた事もあって、今までは無事だっただけだと私は思います」

「その前に代価支払ってたっけ?」

「あれはただ単に運が良かったと思えば良いです。ですが、予知夢を変えるとなるとそれ相応の代価がいるでしょうね」

 代価、その言葉を聞くとどのくらいの代償を支払ったり、代価分に見合う事をしないといけないのかと少々不安にも感じる。

 それにだ、予知と言うのは必ず当たる訳でも無いのに尾鰭背鰭が付き、余計な事を招く、理美はそう言うのを特に嫌ったし、実際知らない欲のある有権者もやって来てコレは予知でもなんでもなく絶対に当ててはいけないと直感し批判はされど、これ以上の干渉や追求は無くなったのをよく知っていた。

 絆が言っているのは本当に的を得ているし、子供でもある理美に分かりやすく伝えようとしてくれていた。

「分かったよ、予知夢に関しても、予知に関してもあまり公言しないように気を付けるよ」

「それなら良いのですが、何か危険な予知夢なら少々内容を言うのも大事ですよ。もしかしたら代価が軽くなる場合や、無かった事にも出来ますしね」

 食事と会話が終わる頃、晴菜が部屋に入ってきた。

「理美ちゃん、そろそろ朝食終わったら、一度翼園に顔を出してから行かない?」

「翼園か、そういやまだ今日出るって言ってなかったあはは……」

「こらこらこら」

 理美の痛恨のミスには晴菜と絆は苦笑いするしかなかった。


 車で約20分、小さな丘の上に木造建築の洋館があった。

 門の柱に養護施設、翼園と書かれた看板が掛けてあった。

 晴菜は調理担当の眞子とシスターのアリスに話してくるからと中に入り、理美はと言うと、神父のディダに話そうと思っていた。

 まさか、言うのを忘れた今日出発とはコレはコレで笑ってしまうだろう。

 園長でもあるマルスに声を掛けようと中に入ろうとした時だ。

 後ろから何者かに足蹴りが理美を襲う。

 理美は分かって笑った。

「にゃめるなよ! っと」

 バク転の要領で足蹴りを避け、そのまま踵落としに入るも、足首を掴まれ、投げ飛ばされた。

 投げ飛ばされた。

 すかさず体勢を整え、着地すると相手が殴る姿勢で襲ってきた。

 理美は左腕を龍の腕に変えて相手の拳を受け止めた。

 金色の短髪だが、中央から4つ髪留めで止められ、そこから伸びる腰くらい長い髪が揺れる。

 目を隠す形で丸い黒のサングラスを掛けた真っ黒な格好の背の高い男性が言った。

「まぁまぁじゃないかな? でもまだ、メリュウ君に頼ってちゃあ半人前だね」

「ディダ神父から襲っておいてその言い方ないじゃん!」

 理美のご立腹にも目も暮れず、ディダは言った。

「ところで何しに来たの? 今日晴菜さんと一緒に車で来るなんて珍しい」

 さすがにその問いには汗をかき、目を背けるしかなかった。

「今日、入寮日なので出発するために来ますた」

「えっ、えぇ?」

 ディダも戸惑った。

 窓から文鎮が飛んできてディダの頭に直撃した。

「……さすが、に、ドラゴンでも文鎮は痛いよ……アリス」

 清楚で髪がおかっぱだが今風の髪型をしたアリスがお怒りのご様子でこちらを見て言った。

「わざとあんたに当てたんだよ、朝から何襲ってんじゃい」

「す、すいません」

 ディダはこの状況から脱する事も出来ず、正座し、お叱りを受けるしかなかった。

 丁度朝の外回りから戻ってきた赤毛で髪は肩ぐらいだが、後ろ髪だけ髪留めから背中まで伸ばし、アリスよりもやや背はあるがまだ子供っぽさがあるマルスが意味の分からない状況を見て言った。

「ただいって何これ? 理美ちゃんこの状況は何?」

「話せばちょっとばかし長いんですが、ディダがねぇ」

「それ以上言っちゃダメ! マルスにまで怒られちゃう!」

 マルスもディダの言葉で状況を把握した。


 理美はアリス達にも今日の入寮式の説明をした。

「あんたも忘れんなし、さっき、絆さんから連絡あったわよ。そのせいでディダの奴、仕事サボってどっか行ったんだから」

「誠に申し訳ないとです」

マルスはしみじみと言った。

「暫くは会えなくなるのかぁ、しょっちゅうディダ神父と手合わせだっけ? 修行する為にほぼ毎日来てたのにね」

「勝つ為に、筋肉鍛えてみたり、武道を学んでみたり、条件反射や苦手克服の為に色々したんだけど、ディダがあの手この手と色々と……」

「分かる分かる、俺も結局一度も勝てた試しないもん」

 理美とマルスがお互いディダの動きに翻弄され過ぎてどうも勝てないヤキモキ感を共有した時だ。

 アリスがどこからかライフルを持ってきてテーブルに叩きつけて言った。

「だから狙撃すりゃあ良いのよ」

 それを見た理美は思った。

『殺す一択だよそれ』

「大丈夫、アイツこんなの軽い頭突きの痛さだけだから!」

「アリス、それ早く片付けて、銃刀法違反だから」

「言っておくけど、許可証持ってます」

「子供達に見られたら一発アウト!」

 誤って見られでもしたらイタズラ一択だ。

 徐々に喧嘩染みてきたマルスとアリスのやり取りを只々理美が見ていた時、扉が開き、ディダと晴菜が入ってきた。

「そろそろ行かないと時間間に合わなくなっちゃくわよ」

「もう? あっ本当だ」

 壁掛けの時計で時間を確認したら、昼食も考えるともう出ないと間に合わない。

「じゃぁ、ゴールデンウィークか夏休み頃には戻って来るから、ディダ、首洗って待っててね」

「なんで、殺害予告染みたこと言うの?」

 理美はただなんとなく口にしただけで特に意味はないが、ディダにはちょっと恐怖を覚えた。


 車に乗り込むと、割烹着と三角巾付けた眞子がやって来た。

「それじゃ、また遊びに来るんだよ」

「はーい、いってきます」

 ディダ達はもう挨拶が済んでいるのと、子供達の面倒もあるのでとそのまま園に残った。

 丁度、朝食時間も終わり、今なら挨拶が出来るとやって来たのだ。

 晴菜が挨拶序でに手伝っていたのも甲斐あってか、時間が出来たおかげでもある。

「では出発いたします」

 運転手が言うと車が動き出す。

「眞子さん、ありがとね。ディダ達にもよろしく伝えてね!」

「分かってるよ、気を付けて」

 言い終えた頃には車は出発、眞子は手を振って見送った。

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