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リミックスⅠ  作者: E..
16/19

会社

 その日の午後。

 授業も終わり、理美はそそくさと返ろうとした時だ。

「理美居る?」

「冬美也!」

 冬美也が迎えに来たので、そういえばloinで言うのを忘れていたのを思い出す。

 すぐに言ってから帰ろうと思っていた時、回りの声がする。

「またかよ」

「何甘えてんだか」

「きっしょ」

 流石にイラっとするので、どうしてやろうかとも思うもぐっと堪えた。

 多分、冬美也には聞こえていない。

 笑って誤魔化そう、そう思った時だ。

 ふと冬美也の脇からゼフォウも覗く。

「どったの? 一瞬顔色悪くなったけど悪口言われた? だーから言ったでしょ? まだ付き合ってない時にうろつくとこうなるって」

 最初、自分に向ける目は、いつの間にか冬美也に向けられており、なんとなく申し訳なかった。

 理美は気にしないように笑って断りを入れる。

「ううん、実は今日、颯太兄に会う約束があってこのまま帰る処なの」

 冬美也は理解した上で言う。

「なら、校門前まで送るよ」

「大丈夫」

「良いから」

 ゼフォウも笑いながら何故かココに残るとの事。

「なら俺しばらくここ居るわ」

 これは良くないとすぐに分かった。

「いや、本当に大丈夫だよ」

「オレらのせいもあるからオレが送るから」

「分かったよ、ありがとう」

 ここまで押されれば言う事を聞くしかない。

 無理せず笑った筈だ。

 でも、返って冬美也の顔を曇らせる。

 桜夜達に軽く挨拶をし、教室を出た。

「んじゃ、皆に聞きたい事聞こうかなぁ?」

 その時のゼフォウの顔を多分理美は一生見ないし、ここのクラスメイトだけで終わるだろう。


 廊下を無言、2人で歩く。

 なんて話せば良いんだろうか。

 理美は話そうと向くと冬美也も話そうとしたのだろう。

 お互い声が同時になった。

「ねぇ」

「なぁ」

 理美はすぐさま冬美也に譲るも、冬美也もまた理美に譲る。

「どうぞ」

「いや、理美から」

 こうなると話す予定すらない自分から話すのはやぶさかではと考えてしまう。

 だから今のありのままの気持ちを伝えた。

「……私ね、何度も繰り返すって言われた時よく分からなくて、でも段々理解して、少しショックもあったけど、納得するまで自分の人生を歩みたいって思っていて、それで」

 続きを考えつつ、話していたら冬美也がその話に割って入る。

「その中にオレは入っているのか理美?」

 勿論と声を上げようとした時だ。

 もう玄関口付近、そんなところからクラクションの音が鳴り響く。

 慌てて振り向きよく見れば誰かがガンを飛ばしている。

「お前らー、一体何してるんだー」

「颯太兄!」

 メガネを掛けていると言うのにこんな遠い場所から良く見えるなと冬美也が呟いてしまう程だ。

 車から降りて颯太がやって来た。

「全く、お前ら何してんだ?」

 冬美也が凄い真顔で返す。

「いえ、お義理兄さんのお陰で聞きそびれたんですが?」

 ここで今聞いても良かったが、面倒ごとにはなるだろう。

 颯太的には邪魔して運が良かったと言った風な言い方をする。

「おう、それは良かった。今回理美だけだから」

「そうなの、仕事だから」

「へぁ!? 今日が仕事の日!?」

 昨日聞いてはいたが、まさかのこんな時間に仕事だなんて驚きも隠せるはずもない。

 そして理美は止めも刺す。

「うん、これからもちょくちょくあると思うから」

「……お、オレも」

 言いたくはなるだろう。

 だが今回は本当に来てはいけない。

「ダメ、諦めろ。今回はかなり重要案件も含めた会議だから」

「一応先生にも話はしているから」

 バートンには前もっての話をしているので、放置された感がぐっさしと刺さる。

「ぬおおおぉぉ……オレはまだ信用がが」

「ち、違うよ、昨日は昨日で色々あって結局あの時手帳買う序でに言うつもりがねぇ後回しの後にさらに後回しになって今になりまして」

 そういえば言うつもりが、なんかゼフォウの話やジルの遭遇に、管理者達との飲み会に告白しようとしたが今度はメリュウに邪魔をされ、そして今に至るのだから無理もない。

「あー悔しい、めっちゃ悔しい! オレ1人になりたくない!」

 やはり昨日から変なのは理美だけではないようだ。

 こうも我儘言うなんてと思いながらも重要な会議、連れて行けるはずもなく。

「分かったから、でも今日はダメだから」

 理解はされど、断られた。

 泣き出してしまう冬美也に対し理美がそっと聞こうとすると冬美也は簡素的に説明をしようとしたが他の割り込みが入る。

「冬美也」

「うん、すまん理美が手帳探してたから聞いてなかったもんな、藤浦怖いんだ。また――」

「何迷惑行為していると思えば、どうぞ行ってください」

 バートンが冬美也の首根っこを掴んでくれた。

「バートン先生、すいません。迷惑かけて」

 颯太も謝罪する中、冬美也の顔が一気に嫌いな奴に捕まった猫のような顔で不服を申し立てしていた。

 それを見てか理美は言う。

「では行ってきます。冬美也」

「な、なに?」

「お土産何が良い?」

「あなた一体どこまで行く気なんです?」

 流石にバートンが突っ込んだ。


 颯太の運転で会社へと向かう中、理美は不安そうに言う。

「冬美也大丈夫かな?」

「何? お前らまだ付き合ってないの?」

「告白の邪魔したの誰ですか?」

「はいはいすいませんね。で、何が心配? あの時出会った女子の1人か?」

「それもそうなんだけど、バートン先生と冬美也仲悪いから」

「あぁ、それで」

「実はさ……」

 これは言っておかなければと思って口を開こうとするも喉が詰まる。

 やはりこればかりは勇気がいるのだ。

 急に雰囲気が変わって陰湿にいじめみたいな空気になったと言えば良いのか。

 それとも、意味の分からない悪口みたいな事を小言を言われたと言うべきか。

 必死に言葉選びを考えていると先に颯太が今回の話を切り出してしまう。

「理美、コラボ企画お前も考えて来たか?」

「はぅい!」

 驚いた理美から変な声が出てしまい、颯太は軽く謝るが今回非常に重々しいものであるので、下手な事が出来ず、理美の話は後回しとなってしまった。

「悪い、話し挟んで今日の会議はこっちの部門と飲食部門のコラボ企画に自動車企業のお偉いさんも聞きに来るからな、後で良いか?」

「う、うん……良いよ」

 やばい完全に悪手だ。

「なら、軽くで良いから書類に目を通してくれ」

 颯太はそう言って、書類と言うなのタブレットを渡す。

 渡されたタブレットのパスワードを解き、理美は中身を見た。

「……うわぁたかだかファイルと限定メニューだけだと思ってたのに、これもすんの?」

 簡単に見ていたのか、実際の案件と想像していた部分が狂ったようだ。

 颯太からすれば、それが当たり前だ。

「やるだろーそれからイラスト案件も会議に含まれるし、これ没る時は没るからな」

 恐ろしい言葉に理美もガタツク。

「ひぃ……メニューも?」

 せっかく大方決まったのを頓挫されたくはない。

「当たり前だろ? 次の週辺りにメニューの試食会するって話もあるからな」

 試食会も延びたら本当にやばいのだ。

「再来月だっけコレ、コラボ?」

 発表なければ所詮予定は未定だ。

「まだ予定であって発表じゃない。延びると面倒だぞぉ。今回はグループ会社の部門だからまだ楽だが、一応車種系統を許可が貰えたからではなく、お借りしていると言う形でもあるからな。ちゃんと見てもらわんと」

 タブレットを頭に押し当てながら理美は言う。

「うへぇ、何がしたいって言われて色々言ったらコレだもんーもっと楽な方言えば良かったー!」

 2年位前にいきなりどんなお仕事したいと晴菜に言われ、一度はやってみたかったモノを上げて言ったのは覚えている。

 勿論今一番したかったのも熱量込めて言ったのもあるのだが、なら三番目に上げたカフェ系統のお店をしてみましょうかと言い出した時、一体何をさせる気なのか、まぁ疑似体験の仕事アミューズメント施設があるのだからそっちにでも連れて行ってくれるだろうと勘違いした。

 そう勘違いなのだ。

 まさか本当に飲食業をいきなりやらされるなんて思いもせず、1から始める羽目になるとは……――。

 結果的には出来る人間をとにかく集める事と立地を考えてなんとかなっているし、本当は一店舗だけ回せれば良いと思っていたが、出来る人間を集めたのだからと父、友吉に促されていき、何店舗も持っている。

 一応名前も載っているが実際やってくれてる人間がいるので、実際自分はお飾りだと思ってはいるが、その人からも大事な会議等はきちんと自分で見聞きしてしっかり駄目だしもするようにと口酸っぱく言われているのだ。

 全てを知っている颯太は同情半分責任半分で言う。

「はいはい、もう着くぞ」

 嘉村グループ本社ビルへと到着した。

 ある階までエレベーターで昇り、使用中と書かれた会議室に入れば、既にスタンバっている部下達がおり、その10分後にはもう自動車会社の役員であるお偉いさんもやって来た。

 

 ――会議が始まって数時間後、ある程度話も纏まり、仰々しい空気が一転してようやく形が見えたのとよりよい時間であったと言った感じで終了した。

 営業部の人間やエンジニアまで集まってのコラボ企画、しかも絶対来なさそうなお偉いさんまで本当にいたのが一番空気を重くしていたのだが、お互い良いものが出来たと満足気で、今後はリモートに代わるようなので少し安堵するも、結局こっちに足を運ばなければならないので理美の変わらない。

 自動車会社の役員でもあるお偉いさんを見送った後、理美はどっと疲れを声だけでなく態度で示す。

「つ、疲れた……」

「はいお疲れ、時間大分押しちゃったし、どっかで飯食うか」

「うん、颯太兄の奢りで」

「はいよ、どこか開いている店探すからちょっと待ってろ」

 颯太がスマホを見て操作する中、ある人物がこちらにやって来た。

「丁度良い処に颯太社長、お願いあるんで良いですか?」

「悪い、妹帰す序でに飯一緒に食う約束をたった今したばっかりだ才斗さん」

 そこにいたのは才斗だ。

「やあお久しぶりですって言っても入学式からそんな経ってないからね」

「いえ、あまり挨拶出来ず、すいません」

 かなり固い挨拶に才斗も最初固まるも次第に笑いだす。

「……あはは、そんな固くならなくても良いよ。美空とも仲良くやれてるっぽいって母さんからも連絡あったし」

「そ、そうですか」

 堅苦しいままの理美に颯太も苦笑い。

 丁度そこへ、中沢琴がやって来た。

「社長、先程の会議の纏めた資料を……あら理美様もいらしてたのですね」

 前はボディーガード兼武術系統の教育係だったが、才が認められ、現在は第三秘書なって働いている。

 本社が主だが、基本こちらの飲食部門に携わってくれているので非常に助かっていた。

「今日会議だよ?」

 様子をジッと見た琴は、会議もそうだが一瞬何かを思い出し、理美を送ろうと提案する。

「そうでしたね、あっそうだ。今日私が送りましょうか?」

「だから俺が送るってば」

 和やかな雰囲気に包まれる中、エレベーターから誰かが降りて来た。

 それに気付いたのは、意外にも才斗だった。

「まだ居たのか? 派遣時間はとうに過ぎているぞ」

 才斗の温厚さが一切無い。

 誰だろうか、理美も皆もその派遣社員を見る。

「すいません、いやちょっと手こずってしまって」

 誤魔化し笑いに一瞬皺を寄せる才斗は深いため息を吐き、こんな事を呟く。

「……はぁ、1度人事部と話した方が良いな、求人掛けないと」

 人が足りないと言った感じだろうが、明らかに派遣社員を切りたがっている印象だ。

 琴は分野が違うのか、才斗に尋ねた。

「才斗さん、誰ですかこの方?」

「んっ? 山本明典(あけのり)、昔の小学校の後輩だ」

 その名前に聞き覚えがある。

 いじめてきた1人で、理美が怪我させた山本だ。

 まさかここで出会うなんて思いもしなかった。

 普通を装わなければ、そう理美が思う中、琴はなんとなく理美の様子に違和感を感じ自然と隠してあげつつ、才斗と話す。

「かなり陰険な態度ですね、詳細は聞きませんが」

「陰険って悪巧みとか悪い事なんて企てないよ」

「そうですか」

 態度的にどっちが上なんだろうか。

 ただ、山本がずっと苦笑いしたまま突っ立っているので、一応反応はしておいた方が良いだろう。

「あ、あの」

 この反応には、颯太がもうお腹空いているんだからと言う反応しか見えていなかった。

「ごめんなぁ、今飯食い行こうな?」

「あ、いや、その」

 流石に理美の反応に気が付いた才斗は山本に言う。

「山本、もう帰りなさい」

「嘉村社長に直談判したいんです!」

 やる気はある。

 才斗から見ればやかましいこの上ないと言うのが回りからも伝わった。

「……はぁ、何度も言ってるだろう。そういうのは採用試験があるんだ」

「でも、人材が」

 先の話を聞いていれば、よく分かるが欲しいのは上に立った後に任せられる人材であり、育てるにしても分野的に違う可能性もあってこそで、颯太が代わりにわって入り説明する。

「欲しいのは分かるんだけど、より重要な任を任せたい人物の後釜にはやっぱり相性の問題があるし、今忙しいからまた今度な、理美行こうか」

「うん」

 行こうと進むと琴が改めて言う。

「今回の会議についても話したいので、ご飯も私が持ちます」

「行く!」

 ノリが良いのか、どの道支払いは大人なのであまり気にしてはいない颯太は、一応仕事の上線と言う事で領収書を持って来るよう言った。

「領収書持って来いよー」

「ありがとうございます。さぁ行きましょう」

 だが1番の気掛かり、山本をここまで蔑ろにして良いのだろうか。

 言えるのはただ一つ、会いたくは無かったが挨拶位しておかないと失礼だ。

「一応あいさ――」

「良いの良いの、さぁ帰りなさい」

 才斗の笑顔が怖い。

 まるで接触だけは避けたい行動の様にしか見えなかった。


 そして琴と理美は車の中、食事が出来る場所へと向かう最中、理美が口を開けば琴も話したかった事を話す。

「あのさ、管理者についてな」

「その事で私も話したかったので、無理言ったまでです」

「ですよねー」

「一応一からも聞いてます。意外かも知れませんが、一と私は別の場所でアースと結び、ほぼ同期と言う間柄です」

「んっ? 幕末?」

「そうですね、あっちは確か17かそこそこでこちらは14か15辺りです」

「ほぼ同期って言ってたけども、琴さんはどんな関わりが?」

「私と一は浪士組、新撰組、新徴組になる前の組織におりましたので」

 ここで理美は頭をこんがらがした。

「???」

 琴も分かっていたのだろう、深いため息を吐きながらこう話す。

「そうですよねぇ、新撰組は語り部が居たので分かりやすいですが、新徴組はあまり存在を知られてませんでしたし最近ですから無理からぬことです」

「……何回も見て来てどうだった?」

「そうですねぇ、尊敬する兄と共に入れないのは正直とてつもなく辛いです」

 琴からすれば、兄と死の別れの後に待つ孤独が辛かったようだ。

 ただなんとなく兄はどういう人だったかと尋ねたら永遠に語られそうなのであまり反応しないでおいた。

「お、おぅ」

 話はその後なのだろう、一についても語り、自分自身がどういう経緯を辿ったかも軽く話す。

「でも、その先を見れるのは良いですね良い意味でも悪意味でも、私達が護ろうとした時代、日本を見守れる訳ですから、こう見えて一はずっと日本に尽力してるんですよ? 外務省勤務だそうです」

「すごっ!」

「私は他を見て行きたいので、仕事をしながら色々な国を見て来ました。意外と皆様弱くて弱くて、せめて兄より強ければ」

 やはり琴の兄について聞かなくて良かった。

「あはは……」

 それよりも琴は先程理美が自分の兄と出会った事が1番気掛かりだった。

「でも私より理美様は大丈夫ですか? 何度も繰り返すより忘却後の数十年も幼いままだった訳で、こちらでも知り合いが調べて来れたので分かっているのですが」

「うん、あの秘書が私のお兄ちゃん……大分おっさんになってて驚いた」

 この辺はもう管理者同士で共有されている為、理美はつい兄に対して悪態を吐くも、ほぼ無敵状態の兄に悪口を言うにはもうこれしかなかったのだが、琴は自分の兄を尊敬するタイプなので、ただ他人の兄妹関係なのでやんわりと言う。

「ダメですよ、あぁ見えて無敗王と呼ばれる柔道チャンピオンなんですから」

 理美は兄に対して対抗心とかは無く、自分のダメな所だけ見て言えば、琴からすればアースの愛されし者を使うべきと言われた。

「そうなんだけど、お兄ちゃんって凄い人あたり良いから皆に好かれてるけど、私ってほら鈍臭いしそのまま思った事を口にしちゃうしで、本当に人に嫌われる要素しかない」

「そう言う時こそのアースです。理美様には丁度全ての生物に愛されし者を持っているのですから、ほんのちょっぴりズルしても良いじゃないですか」

「うん、そうだね、琴さんの愛されし者ってなんだっけ?」

「私は金属に愛されし者、ほら冬美也様があの時体が治ったのは私の力の範囲内だったからなので」

「そっか、それで、ありがとう冬美也を治してくれて」

 理美は知らない、入院期間中、冬美也が地獄の猛特訓の末、現在普通に暮らせる事を……。

「いえいえ、そういえば兄で思い出したんですけど」

「いや、まだ心の準備が!」

 流石にここで兄の話を永遠聞かされたくない。

 琴はここで話ても語り切れる自信も無いので言いませんよと笑いながら呟き、話の内容は才斗についてだった。

「才斗さんについてです」

「お兄ちゃん?」

「あの人、派遣社員だけでなく掃除の方や警備の方にも分け隔てなく気さくに話す方だったので、山本様にああいう態度なのは少々気掛かりで、知ってますか?」

「昔、私をいじめてた1人です」

「あ……なるほど」

「でもお兄ちゃんも忘れてるし、山本も忘れてるしで関係性も殆ど消えてる筈だけど?」

 あるとすれば、小学校の先輩後輩なだけだ。

「あなたの実の兄、才斗さんについては知り合い、坂本が調べて来れました」

「便利屋か何かなのその人?」

「設定上では小説家です」

「えっ設定?」

「かなり苦労されていましたよ。経済的にも精神面でも真理様は。けれど、結局知り合いからの誘いで旅館の仲居として住み込みで働き、才斗さんを育てたとか、その女将の息子がコキ使って、女将の叔父に当たる人が柔道の師範してまして、見事にぶん投げでほぼ無償で柔道を学べたとか」

「凄い経歴過ぎてビビる……結局遅かれ早かれ引っ越してたのか」

「そうなりますね。元々女将と真理様は知り合いだったらしく、家もあちら持ちと言う形で、保存してくれて、現在は才斗さんが買い取って今もあるそうですよ」

「……でも戻れないよ、もう私は」

 何度も繰り返すよりも、忘却の方がもっとも恐れているのが目に見えて分かる。

 今は落ち着いただけで、現状トラウマのままだ。

 空気を一新する為、車を駐車場に止め、ある場所へと向かった。

「さて、適当に選んでしまいましたが、ここで良いでしょうか? 焼肉屋で」

「高級焼肉屋じゃないか!」

 こうして今日は焼肉屋で締め括ったのだった。

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